このブログでも何度か述べているように、出来高急増の銘柄は色々な面で魅力的です。
場合によってはそこから大反発するケースもあり、日々どのような銘柄が出来高急増するか見ている方も多いでしょう。
しかし、中には市場の仕組みによって一時的にそうなっている場合もあり注意が必要です。そのひとつの例として挙げられるのが「安定操作取引期間」と呼ばれるものですね。
この記事では
- 安定操作取引期間とは何か
- なぜ出来高急増となるのか
- 安定操作取引期間の銘柄を調べる方法
などについて書きました。触れる機会もなくあまり馴染みがないという方も多いと思いますが、知識として頭の片隅にでも置いておきましょう。
安定操作取引期間とは
結論から述べますと、安定操作取引期間とは「株式等の売出しをよりやりやすくするために主幹事証券会社等が当該銘柄について一定期間に行う市場売買やその期間」のことです。
例えば株の世界には「公募売出し」といって、既に上場している会社の株式を不特定多数に取得してもらうケースがありますよね。
企業側の意図としては「事業を大きくするための資金調達」という面がありますが、いかんせん投資家側としては発行済み株式数が増えてしまうので「1株あたりの価値が下がってしまう」というデメリットがあります。
そこで売出し時には数%ほどのディスカウント価格で提供し、少しでも買ってくれる投資家を増やそうとするわけです。ただ、既に保有していて買い増しする気もないという人にとっては
- 公募売出しでも株式価値が希薄化する
- 公募売出しで安く手に入れた投資家が利益確定してくる
というダブルパンチになりますので、「それならば先に売ってしまおう」となります。
するとどうなるかというと株価がPO発表直後から下がり始め、場合によってはディスカウント価格を割り込む可能性も出てきてしまうわけです。ただ、それではPOが成立しませんしそもそも誰にもメリットがない状況になってしまいますよね。
そこで登場するのが「安定操作取引期間」という考え方で、要するにディスカウント価格を割り込まないように主幹事証券会社が介入しても良いですよということです。具体的には買い支えを行い、POが正常に成立するよう働きかけます。
このことからチャート上では当該期間のどこかしらのタイミングで出来高急増となり、安定操作取引の形跡が見受けられるでしょう。
安定操作取引期間の具体例
では上記の流れを実際のPO例で見てみます。今回ご紹介するのは2020年8月28日に発表されたソフトバンクの公募売出しです。
まず適時開示によってソフトバンク側から市場にPOが公表されました。
ちなみにPOの概要を示す目論見書には・・・
このように安定操作取引についての記載もありますね。
これを受けて株価は・・・
このように下がり始め、やがて売出し価格決定期間である9月14日~16日が訪れて1204.5円に決定されます。
ただし、その後は・・・
このように出来高急増となり、おそらくこの部分で目論見書に書かれた安定操作取引によって主幹事証券会社からの介入があったと推測されるという流れです。
安定操作取引期間後の株価傾向
ここまで安定操作取引期間について述べてきましたが、気になるのはこれが株価にとって良いものなのかどうかということですよね。
主幹事からの買い支えと聞くと良いものに感じますが、一般的には安定操作取引期間後の株価は軟調になりやすいと考えられています。
ちなみに今回例として挙げているソフトバンクの場合、
- 親会社からの売り出しも控えている
- その影響をなるべく抑えるための自社株買い
もPOと同時に発表されている状況でした。
こういったことを加味すると需給状況の変化や株式価値の希薄化が懸念されるので、株価推移としては「しばらく上がりづらい可能性」を想起されやすいと思います。
ソフトバンクの場合は少し特殊ではあるものの、こういった株式本来の価値がどうなるかを考えると安定操作取引期間が数日あってもあまり関係ないのかなと感じてしまいますね。
安定操作取引期間の銘柄を探す方法
ではこういった安定操作取引期間にある銘柄を探す・・・というか避けるためにはどうすれば良いのでしょうか。
方法はいくつかあって、まずPO予定の銘柄を随時知っておくことが挙げられます。
PO予定の銘柄は公表されたあと、証券会社HPや個別銘柄ページなどで事前閲覧が可能になるのでそこを定期的にチェックしておけば良いでしょう。
例えば取扱銘柄が多いSBI証券の場合・・・
このようにログイン後、
- ページ上部メニューの「国内株式」を押す
- メニュー下のカテゴリーから「IPO・PO」を押す
- ページ下部のPO銘柄一覧を見る
とやれば確認可能です。
違う方法が良いという場合、松井証券が提供している「安定操作取引銘柄」の情報を見るのも良いですね。
やり方は簡単で、松井証券の公式HPにログインしたあと
- 上部メニューから「情報検索」を押す
- 「QUIK情報」を押す
- 左側メニューから「銘柄移動一覧」を押す
- 「安定操作」を押す
とやれば安定操作取引の疑いがある銘柄が一覧表示されます。
上記のどちらも嫌だという場合には、JPXの公式HPでも閲覧可能です。
というのも安定操作取引は株価を一定水準に釘付けする行為のため、見方を変えれば相場操縦ともなりかねません。こういった理由から安定操作をする場合にはJPXに安定操作届出書というものを提出する義務があるようです。
当該銘柄を確認するのは非常に簡単で、「JPX 安定操作取引」とネット検索すればJPXに安定操作届出書を提出した企業がヒットします。
頻度は少ないですが出来高急増タイミングと安定操作取引期間が重複していることもありますので、心配であれば上記のような方法で適宜チェックしておくと良いでしょう。
また、安定操作取引の前には株価下落があるので、下落要因を必ずチェックして売買するという癖づけをすることも有効ですね。
まとめ
今回は安定操作取引期間についてご紹介しました。安定操作取引とはPOなどが成立するように主幹事が働きかけを行うことであり、チャート上では出来高急増として形跡が残ります。
短期的には株価の下支えとなりますが、長い目で見れば株式本来の価値が変化するかどうかに依存するでしょう。
安定操作取引期間は簡単に調べられる情報ですので、心配であれば定期的にチェックをしておくと安心ですね。