銀行株の上昇理由が知りたいという方に向けてまとめてみました。この記事を書いている時期も銀行株が上昇を続けていて、その理由を知りたいと考える方も多いことでしょう。
銀行株がこれだけ上がると買いたいと考える人も増えそうですが、なぜ上がるのかがわからないと手を出しづらい気持ちがありますよね。
この記事では銀行株の基本的な考え方をなるべくわかりやすく伝えつつ、株価上昇の理由を述べますので今後の参考にしてみて下さい。
銀行株の上昇理由
株の世界というのは最終的に業績が意識されます。小型株に材料が出て大きく急騰するのも、その銘柄に関係なさそうなニュースで反応するのも全て「ということは業績が大きく伸びるのではないか」という考え方が根本にあるわけです。
業績が伸びるということは1株あたりの価値が上がるということですから、保有していれば自分の資産価値が上がります。株価の性質としてそういった「1株価値の向上に先だって動くという特徴(株価の先見性)」があり、短期勢はこれを利用して儲けます。
したがって長期であっても短期であっても全ては業績向上という名目で株を保有すると言えるでしょう。これは銀行株であっても同じことであり、銀行株の上昇理由を知りたければ「どのような状況になれば収益が上がるのか」を考えなければなりません。
銀行株の収益とは
銀行株は「お金を貸すことで得られる利息」で儲けを出します。貸し付ける相手は住宅や車などのローンもありますが、やはり金額的に中小企業へお金を貸すことも大事でしょう。
景気が良くなってこれから事業を大きくしていくぞという雰囲気が広がっていけば貸し付ける相手も増えるでしょうし、その金額も大きくなると思います。したがってそういった景気拡大局面では他の株式と同様に将来的な期待感が出てくるはずです。
一方、銀行株に限定した現象として考えた場合は金利上昇も忘れてはなりません。貸し付けたお金から生じる利息が上昇すれば収益も増えるので銀行株が買われる可能性は高いですね。
ではこの利上げはどういった状況で起こるのでしょうか。例えば景気拡大局面では物価上昇が生じます。この先の経済を消費者や会社がどう捉えているかが物価に反映され、物価が上がれば商品の値上げや賃金の上昇も起きやすいわけです。
値上げされた商品が上昇した賃金によって買われれば企業の業績も上がり景気は上向きやすく、こういった物価上昇と金利の流れは有名なフィッシャー方程式が深く関係しています。
- フィッシャー方程式:実質金利=名目金利-期待インフレ率
上記の期待インフレ率が将来的な物価を表すもので、名目金利は中央銀行が利上げなどで調整する金利ですね。フィッシャー方程式はこれらの差分が実質的な金利として経済に影響すると述べています。
例えば期待インフレ率の上昇は
- 消費者物価指数(CPI)
- 卸売物価指数(PPI)
など足下の物価上昇が続くと連動する傾向にあり、それが続くと景気過熱が生じないよう名目金利の上昇(利上げ)が議論されるわけです。
銀行株は名目金利の上昇局面(FRBなど中央銀行の利上げ局面)で株価が反応しやすく、先回りしたければ
- 物価上昇が全然止まらないような時期を狙って買う
- その後に出る利上げニュースで含み益を伸ばす
といった戦略が良さそうです。
ちなみに利上げ時期にその他業種の株価は下がるかもしれませんが、「利上げは景気拡大に沿って行われる」という背景から最終的には利上げと株価上昇は共存できるとも言われています。
ただし景気拡大がまだ明るくないのに資源価格が社会的な要因で上昇すると「生活は苦しいのに物価が上がる状況(いわゆるスタグフレーション)」が起きてしまいますので、このような時期は株式市場の雰囲気が悪くなるかもしれません。
地方銀行株の業績改善
ここまで銀行株の上昇理由として金利が大きく、そういった利上げ局面に着目することを述べてきました。しかし、これらは主に米国で貸し付けをしているメガバンクにとって好都合なことです。というのも一般的に利上げというのは米国債長期金利を指していて、国内で事業を営む地銀株にはあまり関係のないことでもあります。
では地銀株の業績が上昇する局面としてはどんなものがあるのでしょうか。パッと思い浮かぶのは
- 与信費用の減少
- 投資信託の手数料上昇と株式売却益
- 新たな収益源の獲得
などですね。
まず与信費用についてですが、これは貸付先の企業が倒産した場合に備えた費用のこと。銀行もそうならないような企業を選別して貸し付けているはずですが、なかなか全ての企業が倒産せず完済できるとは限りません。
そういった将来的に回収不可能になった際の「貸倒引当金」や損失計上のための「債権償却」などが与信費用に含まれます。ただ、なんらかの理由で企業倒産が減少した場合はこの与信費用を削ることが可能です。
新型コロナ窩では企業倒産が増えると身構えられましたが、結局は政府や民間から無利子無担保融資という手厚い支援で歴史的な水準まで倒産件数が抑えられました。
地銀株にとってはこの与信費用の減少が業績改善に貢献してくれたことは言うまでもなく、昨今の株価上昇要因のひとつと考えられるでしょう。懸念点として「今後、支援が無くなったときに倒産件数がどの程度増えていくか」というものがありますが・・・とりあえずは業績改善につながる要素というわけです。
次に投資信託の手数料上昇について。投資家にとって投資信託は「自ら証券会社を通して買付けるもの」ですが、
- 高齢者
- あまり詳しくないけど投資で儲けたい
といった客層は銀行を窓口に買うことも多いでしょう。アベノミクス、トランプ相場、新型コロナ後の金余り相場などを経て株式市場が大きく持ち上がる様子はニュースにもなっていました。そういった流れを受けて銀行サイドから顧客に投信購入を働きかける場面も増え、素直に銀行から投資信託を購入する人も増えたようです。
銀行を窓口にしてもらえれば手数料や管理コストで収益を得られますので、昨今の投資ブームは地銀にとっても良い流れでした。ちなみに株価が上がれば銀行に株式売却益も発生するので二度おいしいです。
最後に新たな収益源の確保について。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、2021年には改正銀行法が制定されました。大きな焦点となったのは
- 銀行法等改正:銀行が行える業務を広げる
- 資金交付制度:経営統合や合併の費用を国が一部負担する
の二つ。前者は地方銀行に中小企業のDX支援や人材派遣を促す目的があり、後者は地銀再編を進めたいという国の意図が読み取れましたよね。
現段階では改正銀行法の制定によって株価が上がったかは定かではありませんが、今後の流れとして
- 新事業による安定的な収益源の確保
- 地域貢献を進めより必要とされる銀行になる
といった施策を行った地銀とそうでない地銀の差は開いていくでしょう。改正銀行法を良いきっかけとしてうまく活用できた銀行株は株価上昇理由となるはずです。
まとめ
今回は銀行株の上昇理由をまとめました。やはり大きな要因としては金利上昇が代表的ですが、これは米国で貸し付け業務を行っているメガバンクとの関係性が深いでしょう。地銀株は国内事業が主ですので、中小企業の倒産と与信費用が減ることや投信購入の手数料などが大きな要因ではないでしょうか。
ただし将来的に中小企業の倒産が増えればコスト増につながりますので、改正銀行法によって新たな収益源を築いていくことも求められます。この課題を積極的にクリアできた地銀は今後も収益拡大する可能性があり長期保有の対象としやすいと考えます。
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