株の雲抜けとは大きく株価が伸びる銘柄の初期段階で必ず起こる現象です。つまり雲抜けをした銘柄を把握すればその中から未来のスター銘柄を発掘できる可能性があるとも言えます。しかし初心者さんにとってはそもそも雲や雲抜けとはいったいなんの話なのかわからないでしょう。
そこでこの記事では
- 株の世界で雲と言えば何を指すのか
- 雲抜けとはどのような状況で注意点はどんな所か
- 雲抜け銘柄の探し方
- 雲を活用した色々な手法
などをなるべくわかりやすく述べました。雲は一目均衡表と呼ばれるテクニカル指標の一部分なのですが、正直申し上げて一目均衡表は本当に奥が深くて難しいと思います。
私も一目均衡表について勉強したことがありますが、結果的に挫折してしまいました。しかし、その中でどれかひとつだけでも取り入れたい・・・と考えて選んだものが「株価の雲抜け」という概念です。
この記事で述べる内容は他のテクニカル指標にも精通する部分がありますし、一部分を抜き取った割には中々使えるものだと考えています。個人的な見解も入っていますが、なるべくわかりやすく伝えていくのでぜひご参考ください。
一目均衡表と雲
株の世界で雲と言ったら一目均衡表の雲を指すことが多いです。というかそれしか浮かばない(雲なだけに)というくらい株の世界で雲と言ったら一目均衡表が思い浮かびます(雲なだけに)。
ではこの一目均衡表とはどんなものなのでしょうか。一目均衡表はかつて都新聞の商況部長として活躍した細田悟一氏が1936年に一目山人というペンネームで発表したテクニカル指標です。海外勢にもファンが多いほど信頼性が高く、熟知できれば値動きの神髄を極められるとも言われる日本を代表するテクニカル指標ですね。
テクニカル分析の世界ではトレンド系の指標として扱われることが多く、売りと買いのパワーバランスを独特の線や表現で判断する点が特徴となっています。値動き判断は
- 時間論
- 波動論
- 値幅観測論
といった3つの基本概念で構成されていて、中でも時間概念を取り入れているテクニカル指標として確固たる地位を築いているでしょう。ちなみに、熟知している投資家はこの時間論によって「およそ何日前後で次の高値をつける」というように詳細な日数で未来の値動きを考えるようです。
そんな一目均衡表は
- 転換線(赤):短期線の役割で「過去9日間の高値と安値の平均値」
- 基準線(緑):中期線の役割で「過去26日間(約1ヶ月間)の高値と安値の平均値」
- 先行スパン1(ピンク):短~中期的なトレンドの役割で、転換線と基準線の平均値を26日先に記入
- 先行スパン2(水色):長期的なトレンドの役割で、過去52日間の安値と高値の平均値を26日先に記入
- 遅行スパンもしくは遅行線(黄):当日終値を26日前に並行移動して動向を比較(現在値より高いか低いか)
といったパーツで構成され、このうちの先行スパン1および2で囲まれた白スペースを「雲」と呼んでいます。一般的に一目均衡表の買い(売り)シグナルとして有名なものは
- 転換線が基準線を上抜け(下抜け)
- 遅行スパンがローソク足を上抜け(下抜け)
- ローソク足が雲を上抜け(下抜け)
の3つです。また、これらすべてが揃う状況を「三役好転(三役逆転)」と呼び特に強い(弱い)トレンドと考えるので覚えておきましょう。
株の雲抜けとは
一目均衡表の導入部分に関して説明が終わったので、いよいよ雲について述べていきましょう。
先ほど述べたように一目均衡表には先行スパン1および2で囲まれたスペースがありこの部分を雲と呼んでいます。この雲の基本的な役割は「株価の支持帯や抵抗帯として働く」というものです。例えば・・・
株価が上昇トレンドかつ現在価格のすぐ下に雲が走行している場合は株価の下支え役として機能しますし、逆に下降トレンドであれば抵抗帯として働くといった具合ですね。
しかし一目均衡表の雲において重要な要素はこれだけではありません。例えば
- 雲の厚み:抵抗帯や支持帯の強さ
- 雲が伸びていく方向性:トレンド方向
- 雲のねじれ:短期~中期のトレンドと長期のトレンドが逆転(トレンド転換)
といった要素は値動き変化を考える上で大事なもので、これらを総合的に加味すると抵抗帯や支持帯の視覚化以外にも「値動きの流れや強弱感が把握できる」という大きなメリットが出てきます。
仮に弱々しい下降トレンドであれば雲は
- 比較的厚い状態で
- 株価のすぐ上に位置しながら下方向に進む
- 先行スパン1が下で先行スパン2が上
となることが予想されますが、ここからトレンド転換すると・・・
- 比較的強い値動きで厚い雲を上抜ける(赤枠部分)
- 初期段階では雲下に戻る可能性も高いが、値動きが強まると雲はやがて上向きに変わる(青枠部分)
- ねじれが加わり先行スパン2が下で先行スパン1が上に変化(黄枠部分)
となることも多いわけです。要するにトレンドの強弱感や方向感によって雲の状況は徐々に変化していき、この過程で生じる現象が「株価の雲抜け」と言えるでしょう。
トレンド転換の象徴ではあるが最速シグナルではない
株価の雲抜けはトレンド転換の中で起こるものだと述べましたが、意識しておかなければならない点はあります。それは「三役好転の中では最も遅い売買シグナルになりやすい」という点で、先ほどのチャートを見ても
- まず転換点が基準線を上抜く
- その次か同時くらいに遅行線が株価を上抜く(最新チャートでは遅行線は26日前に表示されることに注意)
- 値動きが強まった最後に株価が雲抜けする
という流れが読み取れますね。すなわち株価が雲抜けしてから売買するという投資行動は「初動を掴む」という目的においては遅めなのかもしれません。
もちろん雲抜け後に上昇トレンドが定着して安定感が出るという流れは確かにあるので、トレンド中腹部の順張りという意味では問題はないでしょう。ただ「相場全体の底値圏は雲抜けより少し前にあることが多い」という点は知っておきたいところです。
雲抜けの段階と注意点
ところで雲抜け直前および直後の株価チャートを見たときに「より厚い雲を抜けるほど上昇力が強い」と判断できますが、ここでもいくつか注意点や懸念点があります。それは
- 厚い雲を抜けることにエネルギーを使い果たすパターンもある
- どちらの先行スパンで抵抗を受けるのか判断が難しい
- 厚い雲を抜けきった時にはかなり相場が進んでいる可能性あり
といったことです。
まず一つ目の値動きエネルギーについてから説明しましょう。例えば今までずっと超えられなかった節目価格を超えるためにはそれなりに買い注文が集まってくれないと不可能ですよね。
これを一目均衡表に置き換えると「今まで超えられなかった雲を抜けるにはそれなりのエネルギーが必要」というわけです。ここで言うエネルギーは出来高と言い換えて差し支えないとは思いますが、中途半端な出来高では雲抜けがダマシに終わる可能性もぬぐい切れません。
次に先行スパンから抵抗を受けるタイミングについてです。雲抜けしようとして失敗するケースには
上記のようなパターンがよくあります。すなわち
- 赤枠:下の先行スパンすら抜けられず勢いが落ちた
- 青枠:上の先行スパンから抵抗を受けて跳ね返された
といった状況ですね。前者の場合は雲で抵抗を受ける可能性を考えて監視して、かなり早い段階でそうなったのでまだ良いです。しかし後者の場合は非常に困ります。
なぜなら厚い雲のどの段階で落ち始めるのかも、抜ける前提で監視していた最後の最後で抵抗を受けることもあるからです。
ただしこれはある程度飲み込まないといけないリスクだと考えています。移動平均線やMACDのゴールデンクロスでもしっかり見届けてからでは遅いのである程度クロスを見越して早乗りしますよね?
それと同じで一目均衡表も完全な雲抜け後だと入るタイミングとしては遅いので、ダマシの可能性も承知で乗る勇気も必要だということです。もし完全な雲抜け前に乗ったあとにしっかりとしたトレンド転換が来てくれれば
- その分だけ取得単価が安くなる
- 雲より下で入っているのでサポートが効きやすい
というメリットが出てきます。
怖いからといって明確な雲抜けを見届けてから保有を開始した場合は3つ目の「厚い雲を抜けきった時にはかなり相場が進んでいる可能性」が出てくるので、この辺りの捉え方は個人の考え方に大きく依存するでしょう。
ちなみに、上記のような注意点をなるべく補うような手法は後述しますのでそちらもご参考ください。
雲抜け銘柄のスクリーニング方法
株価が雲抜けする意味合いや注意点について述べ終わったので、次は雲抜けした銘柄のスクリーニング方法をご紹介します。といってもそんなに難しい話ではなく、証券会社のスクリーニングツールを活用するだけなので誰でも出来てしまう方法です。
株の世界において雲抜けはあまりに有名なもので・・・
このように銘柄のスクリーニング条件に「一目均衡表雲抜け」が用意されていることも多いと思います。証券会社の検索ツールを使えば色々な条件を組み合わせられますし、これが最も取り組みやすい方法でしょう。
ただしヒットする銘柄ならどれでも良いわけではありません。例えばあってないような薄い雲を抜けているケースも含まれていますので、個別にチャートを確認して信頼度を考える必要があります。したがってある程度ご自身の中で「こういった雲抜け銘柄を探す」というガイドラインのようなものを定めてから拾い上げた方が良いですね。
雲の色々な手法
では最後に一目均衡表の雲を活用した手法をいくつか紹介して終わります。一目均衡表を熟知して値動き観察することは一朝一夕で出来ませんが、雲だけを活用するという考え方なら比較的取り組みやすいので参考にしてみてください。
ローソク足で初動を考え雲抜けで買い増し
ここまでのお話の中で雲抜けは初動で出る売買シグナルではないと述べましたが、こういった点をカバーするために考える要素がローソク足です。例えば出来高急増の大陽線が安値圏で発生したあとに
- 一定の価格帯を割り込まなくなる
- 安値を切り上げる
- 出来高が増加傾向になる
といったことはよく見かけますよね。これは初動圏における安値固めだと推測でき、初期段階の取得単価を作る上で最適な価格水準です。したがってまずはこういった価格帯で保有を開始し・・・
その後に起こる雲抜けで買い増しを行うという流れは「初動はローソク足でアプローチしつつ、値動きの強まりを雲抜けで感じ取ってからリスクを上げる」という考え方に合致します。これは雲抜けの弱点を補う考え方なので比較的おすすめですね。
ボリンジャーバンドと雲
もしあなたがローソク足で値動きを考えることに慣れないという場合はお好きなテクニカル指標と組み合わせても問題ありません。
例えば一目均衡表とボリンジャーバンドは併用されることも多く、「スーパーボリンジャーバンド」といって遅行線とボリンジャーバンドを組み合わせて新しいテクニカル指標として紹介されているくらいです。
個人的にはボリンジャーバンドと雲も相性が比較的良いと考えていて
- ボリンジャーバンド:モメンタムやボラティリティ、移動平均線の方向
- 雲:ボリンジャーバンドでは見えない支持帯および抵抗帯
という役割で使えます。ただしボリンジャーバンドも雲も明確な売買タイミングという意味では少し弱いので、MACDなど比較的売買タイミングが明確なテクニカル指標も併用した方が良いかもしれませんね。
複数時間軸の雲を見る
もうある程度は自分なりに売買状況が決まっていて、単純に値動き観察の一部として雲抜けを活用していきたいという場合は複数時間軸の雲を観察することがおすすめです。
例えば今まで下げ基調だった銘柄が急上昇すると最初に日足ベースで雲にぶつかることが多いでしょう。仮に日足で雲抜けしたとしても、今度は日足のひとつ上の時間軸である週足で雲にぶち当たるわけです。
このように完全に上昇トレンドに転換するまでには複数時間軸にわたって雲抜けする必要があるので、
- 日足の初動らしき価格帯で値動き変化を察知、なるべく安い価格帯で持ち始める
- 日足の雲抜けを確認して値動きの強まりを感じ取る(必要なら買い増し)
- 週足の雲に抵抗を受ける可能性を考慮しながら監視
という流れを頭に入れると良いでしょう。
ちなみに週足の雲ですらぐいぐい突き進むようなケースはかなり強い買いが来ているという体感になるので、そのタイミングで買い増しすることもひとつの考え方ですね。
まとめ
今回は株の雲抜けについて色々と述べてきました。雲は一目均衡表を構成する要素のひとつであり、抵抗帯や支持帯の視覚化以外にも色々な意味合いがあります。
使いやすいテクニカル分析の考え方なので重宝しますが、売買シグナルとしては遅いケースもあるので注意が必要です。そういった特徴を補うためにはローソク足などと組み合わせる必要があり、個人個人の工夫が求められます。
とはいえ株価の雲抜けは値動きの中で意味合いが強いものですので、ぜひ普段の売買に取り入れていきたいですね。