インフレで上がる株の条件と物価上昇への直接的なヘッジ方法

    

今回はインフレで上がる株とはどのようなものか述べていきます。というのも現在アメリカの物価指数が上昇し続けているからですね。この状況を受けて日銀も2022年度の物価見通しを上げようか議論を開始するのではという話まで出ています。

これは資源高を反映する必要があるからで、ニュースでも「原油高によってレギュラーガソリンですら170円に高騰している」と騒いでいるので皆さんも肌で感じているところですよね。

ちなみに金銀銅といったものから小麦にコーンそして大豆まで全て値上がりしています。エネルギーから鉱石に食料資源まで上昇が止まらなければ、当然インフレも止まることはありません。

このまま物価が上がるのであれば私たちのお給料も上がらないとやっていけないのですが、岸田総理はどうするつもりでしょうか。最近はずーっと賃上げ賃上げと言ってますが、これは参院選を見据えたポーズなのかどうか・・・。日本の物価が上がっていくのかは定かではありませんが、いずれにせよインフレのお膳立てとしてはかなりできている状況かなと思います。

    

インフレで上がる株とは

最初にインフレって何なんですかという話をわかりやすく述べておきます。インフレは簡単に言えば物価が上がることです。例えばね一房100円のバナナがあったとして、これが1年後に110円になって、また1年後に120円になったといった感じで2年以上物価が上がることをインフレと呼びます。

ここで重要なのは100円玉1枚当たりの価値が下がっているということで、最初の年は100円玉1枚でバナナ一房買えたのに2年経ったら100円玉1枚では買えず10円玉2枚をつけなくてはならないわけです。

これはつまり相対的に100円玉1枚あたりの価値が下がっているという話になりますよね。こういった話は私たちの身の回りにもありまして、例えば

  1. 小さい頃は缶コーヒー1本100円で買えたのに
  2. 週刊少年ジャンプは200円ちょっとで買えたのに

などこういう話はたくさんありますよね。現在でもこういった小さなインフレはどんどん出てきていて、生活の中で恐怖を覚えることがより増えていくと予想されます。

実物資産に注目

ではこういったインフレに強い株とはどのようなものでしょうか。そもそも株というのは物価上昇局面で強い金融資産ではあります。なぜなら物価が上がれば価格転嫁によって業績向上も起きやすく、それに伴う株価上昇で資産価値を上げられるからですね。

ただ、物価上昇という意味では実物資産が注目されやすく、株式市場だと不動産セクターが代表的でしょう。金利が上がる前に中古物件が売られて中古不動産市場は下がるという話もあるようですが、教科書的には不動産も物価上昇の対象になるという見解ではあります。

また、それに伴って家賃も上がると言われていますので、やはり不動産関連株はインフレで上がる株として注目されやすいのかなと思いますね。

具体的な銘柄名としては例えば三菱地所などがビルの賃貸業大手ですし、三井不動産もデベロッパー大手としてかなり手広くやっています。住友不動産も都心にオフィス賃貸ビルを持っていますし、ヒューリックも都心駅近物件に強い企業です。

ヒューリック

ヒューリックはこの記事を書いている時点では大幅増資の影響で株価低迷中ですが、直近で上方修正しています。また、株主優待も充実していて長期保有特典もあるので狙ってみても良いでしょうね。

ちなみに不動産の他の切り口ではREITという選択肢もあります。REITは上場型不動産投資信託のことで、高配当利回りかつ優待を持っている銘柄もありますね。

一方、不動産以外の実物資産では金も注目されやすいでしょう。例えば1540の純金上場信託(金の果実)は金価格連動ETFとして有名です。特徴としては

  1. 実際に金やプラチナなどの現物保管がされている
  2. 一定の受益権口数があれば交換することが可能

といった点が挙げられます。ETFですので実物を自ら管理するコストや環境なしで長期保管できるメリットがありますし、金価格のスイングトレードもやりやすいですね。

価格競争に強い株

インフレで上がる株かはそれぞれの事情によると思いますが、広い意味では価格競争に強い株はインフレに強いのではないかと思います。例えば原材料高なんて話が冒頭でありましたが、そういった局面で企業はどうするか考えてみましょう。やはり原材料が上がった分値上げをして価格転嫁したいと思うのが普通の流れですよね。

ただ最近の傾向として物価は上がるけど景気の先行きは不透明というスタグフレーションの状況です。したがってそういった局面では値上げに慎重にならざるを得ません。普通の企業がそのように悩むのに対し、その一方で

  1. 独占市場を持っている
  2. シェア率が圧倒的に高く競合が少ない

などの会社は価格競争そのものが起きづらいですし、起きたとしてもトップシェアを誇っている会社が値上げをしなければ他社も値上げしづらいと言えるでしょう。

また、独占的な企業が出す価格は消費者自身も飲み込むしかありませんので、そういった意味でも非常にインフレ局面に強い会社と言えますよね。

ちなみに、そういった状況は利益率という数字に表れやすいです。そして売上高営業利益率が高い会社はスクリーニング機能を使えば簡単に探し出すことができます。

例としては日本電信電話なんかどうでしょう。あれだけ時価総額が高い企業なのに売上高利業利益率13.9%です。事業の特色としては

  1. 固定電話の独占市場
  2. 光回線の高シェア

などがあり、安定業績から生み出される配当も予想利回り3.4%と結構高い水準です。ドコモ子会社化で独壇場になるといった声も挙がっていて、投資家としてはそういった業界トップ企業に乗りたいものです。

財務健全株

続いては財務健全株です。なぜこういった株がインフレに強く上がりやすいかと言いますと、この理由には物価上昇局面で起こる金利上昇が関係します。

金利上昇が上がれば利払いコストが上昇すると言い換えられますので、借金の多い会社にとってはかなり中長期的な痛手になってくるでしょう。しかし無借金や低有利子負債の会社はその影響が少ないのでインフレ局面でも業績を上げやすいというわけです。

財務健全性指標で一般的なものといえば、やはり

  1. 自己資本比率
  2. 有利子負債自己資本比率

などが挙げられます。こちらも営業利益率と同様にスクリーニング機能を使うことによって該当する会社を簡単に

見つけ出すことができます。一応、お伝えしておくと自己資本比率は高い方が良く、有利子負債自己資本比率は低い方が好ましいものです。例としては日清食品HDが挙げられます。こちらの会社はカップ麺の国内シェア50%という驚異的な会社で知られていますが、実は財務面も優れています。

最近は原料高の影響を懸念されていますが、インフレ局面でも安定した需要を見込める良い会社ではないかと個人的には考えています。

原材料高で恩恵を受ける株

最後は原料高の恩恵を受ける株についてです。インフレ局面では原料高になりますが、それらを提供する会社は業績が上がりやすくインフレでも株価が上がりやすいと思います。

ちなみに原油高からどういった流れで原材料が高くなるのかについてですが、これはまず発電コストが増える事がポイントですね。

発電コストが増えると電力価格が上がりますので、大量にね電力を消費するような金属生産を減らさざるを得なくなります。すると需給の関係から金属価格が上がり、それが金属を使った商品にも価格転嫁されるでしょう。

また、原油高の流れではエチレン生産も減らされやすく、例えばビニール袋やペットボトルなどといったものから様々な生活用品の価格に転嫁されていきます。

その他にもガソリン価格が上がり、運輸コストに転嫁などなど回りまわって私達が思う以上に影響が出てくるわけです。そう考えると原油高や資源高で恩恵を受ける株というのはインフレに強い会社と言えるんじゃないかと考えられます。

原油高や資源高で名前が出やすいのは

  1. 石油関連株
  2. 商社株(資源権益を持つ)
  3. 非鉄金属株

でしょう。具体的には

  1. 石油資源開発
  2. INPEX
  3. 三菱商事
  4. 三井物産
  5. 住友鉱山

などの銘柄です。ただしこの話は以前よりかなり知られてしまっているので価格の折込や投機的な動きがかなり出やすくなりました。そういった事情はありつつも、やはり知識として覚えておくといい会社達なのでご参考ください。

インフレは元本保証型物価連動債も注目されやすい

最後に株ではありませんが元本保証型物価連動債について述べておきます。インフレ局面では株や不動産を買う流れがありがちですが、これらはリスク資産なので元本割れのリスクがありますよね。

したがって現金の全てを株や不動産に換えておくというのは非常に怖いことで、普通は何か他のものもポートフォリオに組み込みたいとなるわけです。そこで出てくるのが元本保証型の物価連動債というやつですね。

これはどういうものかというと物価上昇に伴って元本価格が上がっていくと仕組みで、つまりインフレヘッジをしながら元本割れを防げる債券商品です。

例えばコアCPIが100で元本100万円を預けたとして、CPIが101になったら101万円、102になれば102万円といった具合でCPIの上昇に伴ってこちらの元本額も上がっていきます。

ただし注意したいのは元本保証といえども物価の動きによっては元本割れリスクがあるという所ですね。ポイントは額面価格と発行価格の違いで、物価上昇を予想する人が多いと発行価格がつり上がります。

保証される元本は額面の方ですので、発行価格の上昇分を超える物価上昇でなければ元本割れが生じるので、完全にリスクがないわけではありません。

この物価連動債は一昔前に個人向けが解禁されているようで、財務のホームページでは大手証券会社から個人向けの物価連動債を購入できると書かれています。

しかし、探してみると投資信託版の物価連動債しか見つからないので・・・現状はどうなっているのか疑問に思っているところです。

いずれにせよ物価連動債は長期金利に連動するものではないので、金利に対するヘッジ目的であれば普通に個人向け10年変動金利国債もしくはそれに連動する投信を買えばそれでいいのではとも思うところですが。

まとめ

今回はインフレで上がる株について述べました。一般的には不動産や金などの実物資産、独占的でシェア率が高く価格競争に強い企業、財務健全で金利リスクが少ない企業、そして原材料高から恩恵を受ける企業などが挙げられます。

物価上昇に対する直接的なヘッジであれば物価連動債(もしくはそれに準ずる投信)という選択肢もあり、インフレへの対策は様々ですね。いずれにせよ自分が納得する会社や商品に投資することが重要ですので、何かの参考にしてみてくださいね。