歩み値でアイスバーグやステルス注文を見分けるためのヒント

    

歩み値で大口が出すアイスバーグ注文やステルス注文を見分けることはできるのか?

このブログでは歩み値に関する記事をいくつか書いていて上記のような質問を頂くことは多いです。個別に回答したこともありますが、先日また同じようなご質問を頂きましたので今回は新しい記事として書き起こしてみました。今回ご質問いただいた内容は

  1. 板に表れていない逆指値も約定すれば歩み値に載ってくるのか
  2. どの程度の約定株数であれば大口や機関投資家と判断できるのか
  3. アイスバーグやステルス注文で出す注文は100株単位もあり得るのか

といったものです。以前の内容と重複する内容もありつつ私見を書いたので何かの参考にしてみてください。また、記事の最後には大口約定に素早く気づくための便利な方法もご紹介しましたのでそちらもぜひチェックしてください。

ちなみにステルス注文とは「他者から出された注文に反対注文を即座にぶつけてかき消すようなアルゴ取引」のことですね。また、アイスバーグ注文とは「設定した総数を小口に分けて自動発注する機能」のことです。機関投資家がよく活用するアルゴ注文のひとつとして知られていて、最近では個人投資家も発注することが可能になっています。

アルゴ注文を出せる証券会社として有名なのは楽天証券で、どのような種類が出せるのかは公式HPにて解説されていますのでそちらをご参考下さい。

参照リンク:楽天証券|サービス詳細

    

歩み値で大口を判断できるのか

最初の質問は「板に表れない逆指値も約定すれば歩み値に記載されるのか」というものです。結論から言うとざら場かつ市場内で約定したものは全て歩み値に記載されると認識しています。ただし、例えば立会い外取引で大口の受け渡しがなされるというケースではザラ場で約定していないので記載されないはずです。

質問者さんが考えている「板に表れない逆指値」というのは条件付き執行注文で「何円以下になったら成行を出す」というようなものでしょう。例えば大きな節目価格に下落中に差し掛かっているような銘柄がその対象となりやすいですね。

歩み値に逆指値が出やすい位置

イメージとしては上記のような直近安値を割り込んだ場合に損切り逆指値が発動するのでこれも歩み値に出てきます。節目価格を割った瞬間に数百株程度の売りが連続した場合には「このあたりの価格帯で損切り設定していた個人投資家が多かったのかもしれないな」と推測できますね(もちろん節目割れを追随した空売りもあるでしょう)。

歩み値の良い所は「実際に約定した注文が全て記載される」といった点です。あらかじめ置かれていた何万株という売り蓋が消えてなくなったというケースでも

  1. 実際に何万株が買い上げられたのか
  2. 買われたように見せかけてキャンセルしたのか

のどちらなのかが明確にわかります。基本的には実際に買われて、なおかつその買い玉が利食いや損切りされない限りはその価格が直近の節目価格になるでしょう。

ただし、そういった歩み値の約定サイズを考える上で出てくる疑問が「どの程度の約定株数であれば大口や機関投資家と判断できるのか」といったことですよね。結論的にはどのような約定であってもそれが「明確に機関投資家である」ということは言えません。

株数で考えてしまうと株価の大きさによって約定サイズ感も変わってきてしまうので、一般的な判断基準としては一撃で数百万~千万以上も動くような注文であればほぼ機関投資家が大口注文で売買したと考えやすいとは思います。

歩み値でアイスバーグやステルス注文を見分けたい

しかし、私の考えとしてはそういった大きな約定というのは最後の段階で行われる印象があり、大口注文を出す前にはアイスバーグ注文などアルゴ取引によって小口に買い集められていることも多そうですね。したがって最後の質問である「アイスバーグ注文で出す注文は100株単位もあり得るのか」という点の結論は十分あり得ると考えます。

では例えばアイスバーグ注文が出されているという判断を下す場合とはどういった状況なのか?これは板を一定時間じーっと観察していないとわかりません。

歩み値にアイスバーグが出やすい位置

自分が気になっている銘柄の5分足が上記のような場合、状況としては

  1. ある価格を節目として保ち合っている
  2. そこに差し掛かると必ず買われて上の価格に戻る

といった感じでしょうか。チャートだけ見ていればたったこれだけですが、板を見ているとここにもうひとつ印象が加わることがあります。それが「一定のラインで最良価格がなくなる(なくなりそうになる)と決まって同じ数だけ買い注文が増える」といったものです。

アイスバーグ注文はひとつの総数を分割しながら注文を出す方法で、小分けされた1つのグループが約定しなければ次のグループが板に見えることはありません。したがって指値設定した価格に

  1. 何度も決まった数が出てくる
  2. 決まった株数だけ約定する

といったことが多ければアイスバーグ注文が出されている可能性はあります。ただし、アイスバーグ注文の設定方法には分割株数をランダムにするものもあるのでそういった場合は判断が非常にしにくいでしょう。

ちなみにアイスバーグ注文は板が薄い銘柄で活用されやすいという側面があります。これは一気に大口注文を出すと価格が動きやすく市場内で目立ってしまうためです。

そういった目立った買いが出てくると売り手側目線としては「それほど大きな買いがあるならもう少し上の価格まで指値を引っ張ろう」となりますし、買い手目線としては先回りしたいので「少し上の価格で買ってしまおう」となりやすいですよね。アイスバーグ注文にはより有利な価格で約定させるという以外にも、こういった心理的な変化を防ぐという意味合いもあるわけです。

したがって歩み値以外にも板にどの程度注文が置かれている状況なのかを加味すると少しは見分けるヒントになるのかなと感じます。

ステルス注文は「買いが買いを呼ぶ状況」を防ぐ

ここまでアイスバーグ注文について考察してきましたがステルス注文に関してはどうでしょうか。ステルス注文は一般的にヘッジファンドが空売りを仕掛ける時に活用されるアルゴ取引だと言われています。

考えやすいのは空売りポジションを仕込んでいる時に株価が動かないよう操作するというケースです。空売りポジションを仕込む場合は株価がなるべくその価格を維持してもらいたいわけなので、買いが出たらすぐ売りをぶつけるというステルス注文はうってつけの機能でしょう。

また、一番防がないといけないのは大口注文で節目をぶち抜かれる流れです。なぜならそういった値動きは個人投資家としても便乗して利益を得たい代表的なものですし、買いが買いを呼ぶということにもなりかねないからです。

となると考えやすいのは

  1. 売り気配値に大きな蓋が置かれている
  2. それが約定したのにすぐ下げた

といった流れとステルス注文との関連性ですが・・・正直そういった意識で観察したことがあまりないですね。まぁステルス注文はさておき、蓋を食い破ったのにダマシとなって数ティックで下げるということがないわけではないので、もしかしたらステルス注文が関係しているのかもしれませんが・・・。

ただ個人的にはヘッジファンドもそうなるもっと前段階からうまく阻止しているとは思うので、そういう意味ではステルス注文も100株単位で地道かつ秘密裏に作用するアルゴという可能性はあります。

まとめ

今回は歩み値にどの程度の約定が出たら大口と判断できるのか、アイスバーグなどを判断するコツはあるのかということを書きました。機関が出す大口注文はどの程度の約定かは明確に言えませんが、蓋を破る際に出やすい約定規模1000万円近いような注文は機関投資家が出しているケースも多いと考えます。

その前段階の買い集めではアイスバーグ注文を活用した100株単位の約定が時間をかけて起きると推測できますが、それをわざわざ確認しなくとも「ザラ場で大口約定があったかどうか」で機関投資家が触っているかどうかを知ることもできるでしょう。

ちなみにその際に役立つ機能は「歩み値フィルター」というもの。これはSBIネオトレード証券(旧ライブスター証券)のスマホアプリに搭載されています。

例えば2000株以上の約定という設定で歩み値を表示させれば・・・

歩み値の見方例

このようにそれに該当する約定のみが出てくれます。これを気になっている銘柄に活用すれば大きな約定に素早く気づくことも可能です。詳細は公式HPに記載されていますのでぜひチェックしてみてください。

歩み値フィルター参照リンク:SBIネオトレード証券:サービス詳細

アルゴ注文参照リンク:楽天証券|サービス詳細

<関連記事>