株の利益はキャピタルゲインとインカムゲインに分けられますが、これらに関する税金について考えたことはありますか?
場合によっては税金を払う必要がないのに払っているケースもあり、その場合は2割ほど利益が削られてしまっています。この記事では
- キャピタルゲインの計算方法
- キャピタルゲインの税金はどれくらいか
- 非課税になるケースはどんなものか
- インカムゲインとの違い
- アメリカ株や仮想通貨の税金との違い
についてまとめました。税金のお話は長く株を続けていく上で知っておいた方が良い知識なので、この機会に頭に入れておきましょう。
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キャピタルゲインの税金や税率について
キャピタルゲインとはいわゆる売買差益というやつです。簡単に言えば「取得単価から値上がりした際に売却すると得られる利益」ですね。
ただし、このキャピタルゲインは単純に取得単価と売却単価の差額を取ったものではなく「取得する際に生じた売買手数料や金利」といったコストを差し引かなければなりません。したがってキャピタルゲインの計算式は
- キャピタルゲイン=(売却時の株価×売却株数)-(購入時の株価×購入株数)-(購入時の売買手数料+売却時の売買手数料)-(金利や貸株料)
となります。上記の金利や貸株料は信用取引のみかかってくるコストなので現物取引では考える必要はありません。
キャピタルゲインの計算式は前述の通りですが、実はまだここから差し引かれるものがありますよね。そうです、株の利益には「税金」がかかりますので、次は国内株式市場でキャピタルゲインを得た場合の税金がどうなるのか見ていきましょう。
2021年9月現在では国内株式市場で得た利益にかけられる税金は20.315%となっています。この内訳は
- 復興特別所得税含む所得税:15.315%
- 住民税:5%
となっていて、売却金額ではなく実際に得た利益額にのみ発生します。
ちなみに小数点以下は切り捨てなので1円繰り上がる心配はありません。
また、復興特別所得税とは、東日本大震災の復興財源に充てるため設置された期限付きの特別徴収税のことです。期間は2013年1月1日から2037年12月31日までとなっていて、通常の所得税に2.1%を乗じた金額が上乗せされます。
復興特別所得税が設置されるまでは所得税の課税は15%でしたが、現状は0.315%が上乗せされている状況ですので
- キャピタルゲインの税金=所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=20.315%
というわけですね。
ではここまでの内容をふまえて税引き後のキャピタルゲインを計算してみましょう。例えば
- 株価1000円の時に100株を現物で購入
- 株価1500円で100株売却した
- 購入時も売却時も手数料は100円
というケースはどうなるでしょうか。まず税引前のキャピタルゲインは
- 税引前キャピタルゲイン=(1500円×100株)-(1000円×100株)-(100円+100円)=4万9800円
となりますね。この時の税金は
- 4万9800円×20.315%=1万116円(小数点以下切り捨て)
ですので、これを税引前キャピタルゲインから引いてあげると
- 4万9800円-1万116円=3万9684円
が税引き後のキャピタルゲイン、すなわち実際に口座に入金される利益額となります。
NISA口座ではキャピタルゲインが非課税で得られる
キャピタルゲインの税金について基本的なことをお伝えしましたが、中には非課税となるケースもあるのでご紹介しておきます。まず代表的なものとしてNISA口座の活用が挙げられますね。
NISA口座とは株や投資信託の運用で得た利益を非課税にできる特別枠のことで、証券会社を通じて申請すれば開設できるものです。このNISA口座を活用して得たキャピタルゲインやインカムゲインに対しては税金がかからず確定申告の必要もありません。ただしNISA口座では
- 1年間あたりの売買上限額は120万円
- 非課税期間は5年間
という条件がついています。非課税期間が終了しても順次ロールオーバーすることが可能ですが、非課税投資枠は600万円までという上限があるので注意が必要です。
収入がない専業主婦も38万円以内なら非課税
NISA口座以外でも条件つきでキャピタルゲインを非課税で得られることがあります。例えば専業主婦かつ他に収入がない場合に確定申告をすると、38万円という基礎控除を差し引いてキャピタルゲインの税金が計算されます。
この仕組みを活用すると払い過ぎた所得税や住民税を還付してもらえるケースがあり、場合によっては非課税でキャピタルゲインが得られるというわけですね。
ただし、専業主婦の場合でも年間で得たインカムゲインとキャピタルゲインが48万円を超えると配偶者控除の適用がなくなります。また、95万円を超えると配偶者特別控除が減額されるのでここも注意が必要です。
ちなみに専業主婦であっても夫の所得金額が1000万円を超えると控除そのものがなくなるので、確定申告をする前によく確認してください。
参考リンク:SMBC日興証券:証券税制に関するQ&A
年間20万円以下の利益なら非課税?
株の税金についての話題でよく言われるのは「年間20万円以下の利益であれば確定申告は不要である」という内容です。実はこの話、半分正解で半分間違いのようですね。
確かに年収2000万円以下の人が20万円以下の副収入を得ても確定申告は不要というルールはあります。ただ、このルールはあくまで所得税に関するものですので住民税に関しては申告する義務があるようです。
私も勘違いしていたのですが、どうやら「年間20万円以下のキャピタルゲインだから非課税で良いんだラッキー」というのは申告漏れになるので注意が必要です。口座種別が「特定口座の源泉徴収あり」となっている人は心配ありませんが、その他の種別になっている人は今一度見直した方が良いかもしれません。
アメリカ株で得たキャピタルゲインの税金
ここまでの話は国内株式市場におけるキャピタルゲインの税金についてでしたが、アメリカの株式市場では税金や税率は変わるのでしょうか。
結論から申し上げますと、2021年9月の時点では
- キャピタルゲインの税金は同じ内容(20.315%)の申告分離課税
- インカムゲイン(配当金)に関しては少し違う
という状況です。まずキャピタルゲインの税金は国内と同じ扱いで、
- 復興特別所得税含む所得税:15.315%
- 住民税:5%
という内訳のもと実際に得た利益額へ課税されます。仮に損失が出た場合は確定申告によって損失繰越や損益通算も可能です。
一方で米国株式からインカムゲインを得た場合は少し面倒ですね。というのも受け取った配当金にはアメリカと日本の両方から課税されてしまうので、いわゆる二重課税という状況になってしまいます。ちなみに税率はそれぞれ
- アメリカ:日米租税条約に基づき10%
- 日本:アメリカから源泉徴収された残りの額に対して20.315%
です。流れとしては
- まずアメリカからの徴収がドルのまま行われる
- 源泉徴収レートにて円換算
- 換算後の金額に対して日本の源泉聴取がなされる
といったものですね。この二重課税は確定申告することで「外国税額控除」という還付をしてもらうことが可能ですので、面倒でもしっかり手続きしておきましょう。
仮想通貨で得たキャピタルゲインの税金
ところで今話題の仮想通貨ではどのくらい税金が取られるのでしょうか。仮想通貨でキャピタルゲインを得た場合の課税方式は総合課税というものです。こちらは後述していきますが、簡単に言えば本業の年収などと合算した合計所得にて税率計算がなされるという方式になります。
ご自身の所得合計額に伴って上記の早見表のもと課税されるという点が株のキャピタルゲインにかかる税金と大きく異なる所ですね。例えば課税対象となる所得金額が500万円だったという場合には税率20%が適用され、
- 500万円×20%-427500円=572500円
が徴収される税金となります。
よく仮想通貨の税金は半分近く取られるという話を聞きますが、正しくは「課税対象となる所得金額が4000万円を超えると45%の税率となる」ですね。ご自身の所得金額やキャピタルゲインの大きさによって税率は変わってきますので、場合によっては株のキャピタルゲインより税率が低くなることもあります。
ちなみに仮想通貨の場合は損益通算ができませんので純粋な利益額に課税される点も覚えておきましょう。
インカムゲインの税金について
ここまでキャピタルゲインの税金について詳しく述べてきましたが、インカムゲインも同様に
- 復興特別所得税含む所得税:15.315%
- 住民税:5%
の合計20.315%という税率が設定されています。ただしインカムゲインに関しては
- 総合課税
- 申告分離課税
- 申告不要
という3つの選択肢が用意されていて、自分の状況によって最適なものを選ぶことができます。
総合課税
まず総合課税ですが、これは確定申告を行い株以外の所得と合算した上で所得税を算出する課税方式です。また、この時のポイントは
- 税率は課税所得が多いほど高くなる累進課税方式が採用されている
- 配当控除の適用が可能
といったことでしょう。配当控除を加味すると累進課税方式の実効税率が変化し・・・
課税所得に応じて上記のように変化します。具体的には課税所得900万円までなら総合課税が有利な結果となっていて、自分の稼ぎに応じて課税方式を選択するべきです。ただし住民税に関してはその限りでないので、課税方式を別に選択した上で住民税の申告書を市町村に提出する必要があります。
提出期限は住民税の納付通知書が届く前になるので5月中という目安でしょうか。このあたりは自治体によって違う可能性があるのでご自身で確認してくださいね。
参照リンク:国税庁:総合課税
申告分離課税
総合課税ではその他の課税所得と合算して税率計算を行いましたが、逆にその他の課税所得とは別に税額計算をする方式があります。これを申告分離課税と呼び、最大のメリットは「譲渡損失や繰越損失と合算できること」です。
要は自分が株の売買で出してしまった損失もしくは年をまたいで繰越していた分を使って配当金にかかる税金を相殺できるということですね。総合課税が配当控除で得するのに対して申告分離課税は損失を使って得をするイメージです。
ただし、これをするためには
- 申告分離課税で確定申告をする必要あり
- 損失繰越も確定申告にて損益通算しなければならない
という条件があるので覚えておきましょう。
参照リンク:国税庁:申告分離課税
源泉分離課税(申告不要)
総合課税や申告分離課税は自分の損益状況によって課税方式を選択し、それを確定申告にて実行するものでした。しかし、中には確定申告がとても面倒だという方もいらっしゃり、そういった方々は源泉分離課税を選ぶことになります。
源泉分離課税では他の所得と分離して課税することが前提となっていて、「一定の税率で所得税を源泉徴収して納税完結させる」ということが最大の特徴です。要するに一定の税率をもとに税引きされた配当金を受け取ったあとは何もしませんよという課税方式で確定申告の必要もありません。
ただしひとつだけ注意点があります。通常、配当金は企業側が源泉徴収を済ませてから入金するので申告不要とするつもりなら特にやることはないものの
- 「一般口座」や「特定口座源泉徴収なし」といった確定申告が必要な口座種別を選択している
- 本来なら払わなくてよい税金を還付してもらいたい
といったケースでは確定申告が必要です。
参照リンク:国税庁:源泉分離課税
まとめ
今回はキャピタルゲインの税金について解説してきました。基本的には20.315%が税率として定められていますが、利益額が20万円以下や専業主婦といったケースでは住民税のみの申告や基礎控除内に収まる可能性があります。どうしても非課税で利益を得たい銘柄があればNISA口座を活用することも一つの手ですが、投資額には上限枠があるので計画的に活用しましょう。
米国株のキャピタルゲインも国内と同様の税率が設けられていますが、インカムゲインの場合は二重課税を確定申告にて還付してもらう必要があります。仮想通貨の場合は申告方式の違いから所得金額によってキャピタルゲインにかかる税金が変わってきますので注意しましょう。
一方、国内株式からインカムゲインを得る場合はキャピタルゲインより自由度が設けられていました。具体的には3つの方式から選択できるので損益状況や所得によって最適な方式を選ぶ必要があります。面倒だという場合は申告不要という選択肢もありますが、しっかりと節税対策していった方が長い目で得するので早めに対応した方が良いでしょう。