時価総額1兆円と聞くとかなりの大企業という印象がありますが、そういった会社はどれほど国内に存在しているのでしょうか。また、時価総額1兆円に至るにはどういった属性を持っていれば良いのでしょうか。
企業規模が大きくなり続ける企業にはそれなりの理由や背景があると個人的には感じるのですが、なぜか個人投資家は小型株ばかりに目が行きがちです。この記事では時価総額1兆円の世界に足を踏み入れている企業について実際に調べて考察を行いましたが、果たして皆さんは読み終えた後どのように感じるでしょうか?
記事を読んで大企業がどういったことをしているのか気になったのであればぜひご自身でも調べてみてください。意外な企業が時価総額1兆円に名を連ねていて、あなたの投資心をくすぐってくれるかもしれませんよ!
時価総額1兆円企業はどのくらい存在するのか
というわけで早速ですが時価総額1兆円企業の存在数について調べてみましょう。今回使用した方法は楽天証券のスーパースクリーナーという機能です。別に楽天証券でなくても良いのですが私はヘビーユーザーなのでいつも通りスーパースクリーナーを使って調べてみました。
具体的にはスクリーニング条件に
- 市場:全市場
- 時価総額:1兆円以上
とだけ入れて検索しています。その結果が・・・
こちらですね。時価総額1兆円企業は2021年5月10日の時点で152社あるという結果で、これは国内株式市場に上場している4110銘柄の約3.7%にあたります。全体の数%というほんの一握りの企業がこの領域に達していて、市場別の内訳としては
- 東証1部:151社
- REIT:1社
となっています。当然ながら東証1部に上場している企業だけが時価総額1兆円企業の世界に足を踏み入れているという状況ですね。ちなみにREITの中に1社だけ時価総額1兆円に到達している銘柄がありますが、これは日本ビルファンド投資法人という銘柄です。
国内市場の時価総額上位10銘柄は図の通りで、
- トヨタ自動車:27兆円
- ソフトバンクグループ:21兆円
- ソニー:13兆円
- キーエンス:12兆円
- NTT:11兆円
- ファーストリテイリング(ユニクロ):9.6兆円
といった超有名企業が名を連ねています。一応注意しておきますと、これらの結果は2021年5月10日時点でのお話であり順位は今後変動していく可能性があります。トヨタ自動車とソフトバンクグループの差も縮まっているので近い将来にトップが入れ替わるかもしれません。同様に時価総額1兆円企業の総数自体も国内株式市場がさらなる高値更新となっていけばもっと増える可能性がありますね。
ちなみにギリギリ時価総額1兆円企業に滑りこんでいる企業を見てみると・・・
- ヤマハ発動機:1兆2憶2100万円
- GMOペイメントゲートウェイ:1兆69憶5800万円
- 光通信:1兆180億4100万円
- 電通グループ:1兆224憶1300万円
- 日本航空:1兆224億7900万円
こんな顔ぶれになります。時価総額1兆円にギリギリといってもやはり有名企業ばかりで株をやっていなくても知っている企業という印象です。日本航空に至ってはコロナで大打撃を受けたあとに時価総額1兆円を保っているので、企業としてどれくらい大きい水準かということがわかります。時価総額1兆円企業と聞いてもあまりイメージが湧きませんが、こういったギリギリのラインにいる企業と肩を並べていそうな顔ぶれ達を想像すれば良いでしょう。
時価総額1兆円企業の世界
ここまで時価総額1兆円に到達している企業についてざっと見てきましたが、ここまでくる会社の特徴はどういったものでしょうか。個人的には「日本の社会にとって欠かせないサービスを担っている会社」にまで成長すると時価総額1兆円企業の世界に足を踏み入れられるイメージです。
例えばトヨタ自動車が生産した車は日本のどこにいても走っていますよね。免許を取りたての人も新しく買い換えたいベテランドライバーもトヨタ自動車のラインナップからまずは選定するという方も多いのではないでしょうか。また、軽自動車狙いであってもダイハツというトヨタ系のメーカーがあるので知らず知らずお世話になっているわけですね。
同様にソニー製のオーディオ機器やテレビを愛用している人、普段着をユニクロやGUでいつも買っている人、通信ガリバーであるNTTに固定電話やネット回線といった通信インフラでお世話になっている人も多そうです。このように誰でも知っている存在ということは「みんながその企業のサービスを使っている」と言い換えられるでしょう。
だからこそ安定した業績を生み出し、認知度が年々上がってどんどん地位も盤石になっていく。それを実現できたからこそ時価総額1兆円という世界に突入するのだと思います。もはや時価総額数兆円以上で安定した企業は多くの人にとって無くてはならない存在と言えるでしょう。
ただ、時価総額1兆円に到達する前段階として時価総額数千億円のレベルに来なければなりません。そのためには他社に負けない武器やドカンと一発当たったサービスがあるという側面もありそうです。いわばその業界にガツンとインパクトを与えてくれるような企業力を持っていないとこの領域には来れないのかもしれないですね。
例えば時価総額1.1兆円を誇るサイバーエージェントという企業で考えてみます。この会社は2021年現在、ウマ娘というゲームタイトルが爆発的なヒットとなっていますね。2021年3月の売上高だけで120億円となっていて、月収でこれほどの売上高を叩き出すタイトルは滅多にないです。このヒットにより・・・
業績も上方修正、株式市場でもご覧のようにかなり注目されて株価が好調です。2020年から1年間で株価は2倍になっていて、時価総額が大きくてもこんなに儲かるんだなと驚きます。サイバーエージェントは「時価総額が1兆円を超すほどに大きく伸びてくるためには企業としての爆発力や強みが必要だ」と教えてくれていますよね。
こういった点は上位勢を例にとってみても同じです。キーエンスは売上高営業利益率が驚異の50%と高く、それを株式市場内でも屈指の高給料として還元することで社員のモチベーションを上げています。信越化学はどの分野でもコンスタントに勝ちつつ植物肉という新しい分野にも市場を開拓しようと意欲が高いです。
普通であれば企業としてある程度の地位を築いた段階で小休止してしまいそうですが、こういった企業努力を行う会社だけが株主からも消費者・顧客からも評価が高くなるのでしょう。そしてそれが株価に結び付くというサイクルです。
余談ですがカップラーメンでおなじみの日清食品ホールディングスは少し前に時価総額1兆円企業に仲間入りしたと報じられ、企業側も記念配当を出すという材料が出ていましたね。個人的には逆に1兆円無かったのかと驚いたのですが、そのあとすぐに株価が下がって時価総額8000億円ほどになっています。これほど有名でみんなが食べている商品を出していてもこのくらいの水準なので、やはり高い壁なんだなと!
バリュエーションの特徴
時価総額が伸びるために必要だと感じる要素を述べましたが、こういった企業はやはり収益性が高く割高なのでしょうか。ここを調べるためにバリュエーションをいうものを1つずつ追加条件に組み込んでみましょう。具体的には先ほどの時価総額に加えて
- PER20倍以下:割安性チェック
- PBR2倍以下:割安性チェック
- ROE10%以上:財務・収益効率性チェック
- 営業利益率10%以上:収益性チェック
- 自己資本比率50%以上:財務健全性チェック
を加えてみます。その結果・・・
このような割合になりました。まず割安性についてみていきます。PERだけで考えるとヒット数が3分の1くらいに留まりますが、PBRだけで考えると実に半数以上がヒットする結果です。そう考えると時価総額1兆円を超える企業といっても割高で手が届かないというわけではなさそうですね。企業規模が成熟してくると株価が適正水準に収束しやすくなると考えられそうです。
次に収益性についてですが、ROEや営業利益率といった「事業効率性」を時価総額1兆円になってもある程度高く保っている企業は3割強ほどでしょうか。株価が適正水準に収束しやすくなるということは成長性が落ちてきてもおかしくないですが、こういった効率性を保てる企業は魅力的ですね。
最後に自己資本比率について。これだけで一概に財務が健全だとは言えませんが、およそ4割ほどは高い水準にあるようです。業績が安定していて余剰金が毎年生まれる企業ほど財務健全性も高まりやすいので、時価総額1兆円に到達する実力には健全な企業基盤も含まれていそうですね。
まとめ
今回は時価総額1兆円に到達する企業について述べてみました。この世界に到達するためには企業としての爆発力だけでなく社会を何かしらの形でしっかりと支える存在にならなければなりません。もはやその会社がなくてはならないレベルになると消費者としても頼らざるを得ませんし、ユーザーからの恒常的な使用は業績の安定につながります。
また、その域に達する企業は実力も申し分なくサイバーエージェントのように企業として大きくなっても爆発的なヒットを叩き出すケースもあるようです。そういった収益性を兼ね備えた企業が割安になったタイミングを見計らって保有するのも良さそうですよね。時価総額が大きくなるとなぜか個人投資家から人気がなくなりますが、企業としての安定性を魅力にポートフォリオに少しくらい組み込んでみてはいかがでしょうか。
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