株は靴磨き少年で危機察知?その驚くべき理由と実際にあった例

    

株式投資は靴磨きの少年が始めだしたら暴落するという話を聞いたことがありますか?

これはケネディ前大統領の父であるジョセフ・パトリック・”ジョー”・ケネディ・シニアにまつわる話としてとても有名です。この靴磨きの少年が株を始めたら暴落するという根拠は至ってシンプルなもので、「普段は株のことなど興味のない人まで買っている状況というのは買いたい人全てが買っている状況だから」というもの。

つまり買う人がもういなくなればあとは売る人だけで、そう遠くない未来に売りが殺到して暴落相場になるという考え方です。ただこの話はジョセフ自身の作り話で、実はパトロンのガイという人物からの助言によって暴落相場を切り抜けたとも言われていますね。しかしこれほどまでに広がるエピソードということからも株式投資の的を得ている話と考えて良いのではないでしょうか。

この記事ではこういったとても有名な靴磨き少年のエピソードに対して考察する内容になっています。個人的にも正しい考え方だなと捉えていて、短期売買でも長期投資でも類似例はあるなと思います。もっと言えば株以外の話でもそういった逸話は聞いたことがあるので、実例として簡単にまとめておきました。

靴磨きの少年が株を始めたら暴落する。ぜひ今後の株人生に生かしてもらいたい考え方ですのでご参考ください。

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株は靴磨き少年が始めたら暴落する

では改めて「株は靴磨きの少年まで買い始めたら暴落する」という話をお伝えします。ケネディ前大統領の父であるジョセフ・ケネディ氏は実業家や政治家として有名ですが、実はそのバックボーンは金融業と株式投資から得た莫大な資産です。映画産業や不動産業によってさらに資産を伸ばしますが、ある時期から息子たちの政界進出に黒幕として尽力を始めます。

そんな実業家や投資家として確かな実力を持つジョセフ・ケネディ氏は1928年冬のある日、オフィスに向かう途中に靴磨きの少年と会話をしました。するとその少年はジョセフ氏に向かって「株を買ったほうが良いよ」という話をしてきたのです。もしあなたならこの時どう感じますか?

当時のジョセフ・ケネディ氏は「これは株式市場に暴落が来るぞ」と感じたようです。なぜなら町で靴磨きをするほどお金がない少年でも株の話をしている状況から

  1. もうほとんどの人が株を買っている状況だろう
  2. 買いたい人がもういないということはあとは売られるのみ
  3. 買った人数がここまで多いのだから売りも相当な大きさになるだろう

という考えに至ったからですね。実際その後は1929年10月に世界恐慌という大暴落が起き、事前に株を売却・空売りしていたジョセフ氏だけは大きな利益を得られたと言われています。

靴磨きうんぬんかんぬんは作り話で、ジョセフ氏に助言を行ったのは当時の資金後援者とも言われていますが・・・どちらにせよこれはかなり興味深い話です。靴磨き少年の話が作り話だろうとどちらでも良いのですが、もし本当だったとしたら少年は誰から株の話を聞いたと予想しますか?

靴磨きの仕事をしたあと証券取引所に向かい情報収集するとは考えにくいので、せいぜい靴磨き仲間や近所のおじさんなどでしょう。では靴磨き仲間や近所のおじさんは誰から聞いたのでしょうか。おそらくここも株に関係ない仕事をしている素人だと思います。

情報の出所を辿って辿ってさらに辿っていけばやがてちゃんと株式投資を行っている人に行きつくのかもしれませんが、大抵の人は何番煎じかわからない情報を掴まされていると考えて良いでしょう。情報の出所から行き着く終着駅が子供や老人をはじめとする情報弱者であり、損を掴まされるのも受け手の末端です。

末端の人たちは「もうそんな話とっくに知っているよ」という人達にしか伝えられないのでジョセフ・ケネディ氏が危機感を覚えるのも無理はないですね。

現代でも類似エピソードはある

この靴磨き少年の話は昔に限った話ではなく現代に置き換えても様々な市場、銘柄で類似エピソードがあります。例えば2012年以降にあったアベノミクス相場ではあまりの株高状況にテレビでも様々な特集が組まれていました。メディアから露出が増えたのは証券会社などからお金が回った可能性もありますが、いずれにせよ新規参入者が増えて儲かるのは証券会社です。

実は私もそういった時期に乗った輩のひとりですが、テレビの画面にはなんの変哲もない老夫婦が映り「せいぜいぼくが株で稼ぐから」と年金の心配はいらないと話していたのが印象的です。

2012年の日経平均推移

上記は2012年から2013年前半における日経平均株価の推移となっています。アベノミクス相場は2012年の12月頃からと言われていますが、当時の動きを見ると前半部分(黄色枠)でも日銀の発言で相場が大きく動いたあと全戻し。また、アベノミクス相場初期では赤枠部分で深い押し目があるなど初心者に耐えられるか疑問を抱く流れが組み込まれていたようですね。

おそらく老夫婦がドヤっていたのは赤枠の手前とかそんな時期ではないでしょうか。指数レベルで半年もしないうちに株価が倍近くの上昇を見せているということは個別株レベルではもっとすごいことになっているはず。そんななんでもかんでも株高になる様子から「株は楽に儲かるものだ」という考え方が生まれ、相場が落ちるのかもしれません。

また、特筆すべきは出来高の増加率です。2012年前半と2013年4月の出来高を比較するとなんと4倍にも膨れ上がっています。この推移から株式投資が社会的に盛り上がっていて新規参入者も多かったのだろうなということが想像できますよね。

靴磨き少年の話をテクニカル分析に置き替えるとすればこういった出来高分析が的を得ているのではないでしょうか。ちなみに私はその時代を知らないのですが、ライブドアショックでも類似エピソードがあったようです。これもメディアで取り上げられていた内容のようですが中学生がライブドアの株を買って日枝会長を批判するという・・・。

そしてその後は皆さんが知るように株式市場全体を巻き込む暴落相場(いわゆるライブドアショック)となりました。おそらくこの時も出来高が膨れ上がっていたのかなと思いますが、そこに新規参入者はどれほど含まれていたのか気になりますね。

一方、現代にはアベノミクス相場よりもっとひどい名言もありました。それは仮想通貨人気の火付け役とも言えるビットコイン相場で出た「寝ているだけで朝起きたらお金が増えている」という若い女性の言葉で、これはSNSをかなり賑わせていました。

実際に寝て起きたらお金が増えている状況ではありましたが、もちろんこれはいつまでも続くわけではありません。ちゃんとビットコインショックが起きて資金は様々な仮想通貨に移動しました。

靴磨き少年の話はかなり昔の話ですが、どうして現代になってもこのようなエピソードが後を絶たないのでしょうか。思うに相場が上方向に過熱感を出す状況というのは実力に関係なく勝ててしまうからなのでしょうね。

それこそ小学生、中学生、老人、主婦、学生誰でも株を買ってさえいれば儲かるわけです。本来なら何かしら理由がある銘柄に人気が集まって株価が上がるわけですが、相場に過熱感が出るととりあえずまだ買われていない株にも片っ端から資金が入っていきます。

コロナ後の金余り相場も人気株はもちろん割安セクターにも徐々にお金が回ってきましたが、こういった勝ち方は実力無視ですからね。自分はなんて投資がうまいんだと勘違いしてしまっても無理はないと思います。実際には自分だけでなく誰でも勝っているわけですが、自惚れの強い人はさらに株を買い漁って暴落に巻き込まれるのでしょう。

ジョセフ・ケネディ氏の話を私生活に落とし込む

ジョセフ・ケネディ氏は靴磨き少年から暴落を察知しましたが、この話を私生活に落とし込むとしたらどうなるでしょうか。この時代かつ日本という国では靴磨き少年はいませんので、もっと身近な人物に置き換える必要があります。

例えば職場の同僚が株を始めて大儲けした自慢話をしてくるとか、投資に反対していた実家の親が銀行に勧められて投資信託や株を買って満面の笑みだったとか・・・そんな話になるでしょうか。

あとはTwitterで特定銘柄を売買している人が急増していて、給料が入ったら買い増しするとか他の株を売ってまで買い増しするとか無謀な集中投資に言及していたらもうアウト?

この時のポイントは「初心者でもみんな儲かっている」という状況だと感じます。素人だろうがなんだろうが始めてすぐに利益が出ている相場というのは指数が吹き上がっているはずです。そこから少しでも下げるようなことがあるとまず上手な人たちが売り始めますよね(むしろ海外からの仕掛け売りとかありそう)。

するとその次くらいに上手な人たちが売って、さらに素人が売って・・・と売りが雪崩を起こします。株を始めて間もない人ほど売りに根拠がないので狼狽売りをしやすく、この個人の売りが殺到するという状況も中々バカにできないです。

上昇から全戻し

イメージとしてはこんな感じで上昇をはるかに上回るスピードで下げていくこともあり得るので、身近な人が株でドヤり始めたら少なからず利食いを入れた方が良いかもしれません。

株と靴磨き少年まとめ

今回はジョセフ・ケネディ氏の逸話として残されている靴磨き少年の話をテーマにお話してきました。ジョセフ・ケネディ氏は靴磨き少年が株の話をしているのを聞いて株価上昇も終盤に入っていると感じ取ったそうですが、作り話であっても学ぶことは多いエピソードです。

アベノミクス相場やビットコイン高騰でも同じようなエピソードは話題になっていて、そういった相場が過熱感を帯びている終盤戦では簡単に儲かるという意識を持つ新規参入者が増えてもおかしくはありません。

メディアに煽られて新規参入者が増えた状況では出来高が通常の何倍にも膨れ上がっていることもあり、行き過ぎた流動性は危険信号となりますので注意が必要でしょう。もし私生活の中で「こんな人まで株を始めているのか」と驚くようなことがあれば、まず出来高をチェックして相場のステージを考えてみてはいかがでしょうか。

かく言う私も未だに大きな下げでは胃が痛くなったりはするので素人に毛が生えた程度かもしれませんが、株式投資の痛みの部分を知っているという意味では靴磨き少年よりマシかなと思います。