権利落ち日に空売りすれば儲かる!?代替策も紹介!

    

個別銘柄には配当や優待をもらう権利が確定する月があります。これを権利確定月と呼び、当該月の月末には「権利落ち日」がやってくるわけです。この権利落ち日では配当や優待の価値を基準とした下落が発生しますが(配当剥落)、もしこの時に空売りをしていたら儲かるのでしょうか?

この記事ではそんな疑問を持った方に向けて

  1. 権利落ち日に空売りをすれば儲かるのか
  2. その他に権利落ち日を活用した儲かる方法はあるのか

といったことを述べました。おそらくこの「権利落ち日を活用して何か手法が作れないか」という考えは多くの初心者さんが思うことですが、実際はどうなのでしょうか。

    

権利落ち日とは

まず配当や優待の権利確定日について簡単に解説しておきます。株式投資の世界には株主優待や配当という制度があり、制度を実施している企業であれば保有株数に応じて品物やお金がもらえる仕組みです。

ただし、配当や優待をもらうためにはそれぞれの銘柄に定められた権利確定月の最終営業日までに株を受渡されている必要があります。この受渡しに関する詳細は後述しますね。

極端な話、キャピタルゲインを無視して配当や優待だけをもらいたい場合は最終営業日だけ保有していればあとの期間は該当銘柄を保有する必要がありません。

そういった背景から配当や優待をもらえる権利が確定した翌日には処分売りが一斉に出て、地合いが一過性に悪くなることがあります。この処分売りが出る日を「権利落ち日」と呼んでいて、大体の銘柄は3月と9月に権利確定日を設けているでしょう(3月のほうが圧倒的に多い)。

したがって権利落ちの影響が大きく、地合いが処分売りによって悪化しやすいのも3月と9月末です。ちなみに権利落ちの基本的な考え方は「配当や優待の価値だけ下落する」というものになります。例えば株価1000円の1株配当10円という銘柄であれば10円が剥がれて990円になるといった具合です。

また、こういった権利落ち日を考える上での注意点が1つあります。それは「権利落ち日は最終営業日から2営業日前になる」ということです。これは「株を買ってから実際に受渡しされるまでに2営業日かかる」という受け渡しルールが関係していて、こういった理由から最終営業日の2営業日前までに優待や配当銘柄を保有しておく必要があります。

ちなみに証券会社のアプリ上では注文が約定した瞬間から口座内に保有銘柄として表示されるので即時売却などできますが、実際の手続き上では受渡しが2営業日後になるという意味です。

例えば注文月の月末カレンダーが・・・

権利落ち日のカレンダー

こんな感じであれば表のような日程になります。月末が金曜平日なのでその2営業日前である水曜が権利確定日、そして木曜が権利落ち日ですね。仮に30・31日が土日だった場合は最終営業日が前倒しされるので、その分だけ権利確定日や権利落ち日も27・28日に前倒しになります。

また、29・30日に土日が挟まれている場合でも最終営業日から逆算して2営業日前が権利確定日になるので覚えておきましょう。毎月のカレンダーで権利確定日と権利落ち日を確認し、特に3月と9月の権利落ち日の直前は下手に売買しないように気をつけてください。

おすすめはスマホのスケジュールアプリに毎月の権利落ち日を入力して月始と1週間前くらいにアラートをかけておく運用です。買おうとしている銘柄の権利確定月は必ずチェックして、権利落ち直前だった場合は配当や優待利回り分の下落を浴びる可能性を考慮した方が良いですね。

権利付き最終日に買うのは儲かるのか

配当や優待投資をやっていきたいという株初心者さんは「権利付き最終日に買ってすぐ売ればいいや」と考えがちですが、上記の解説の通りそれでは儲かりません(配当や優待をもらってもそれと同等の下落が権利落ち日に発生する)。

もちろんその当日に市場の買い気が強ければ前日比プラスで始まる可能性はありますが、よくよく考えると

  1. これはギャンブル要素
  2. 権利落ち相場に関係なく売買すれば良いだけ

ですよね。したがってもっと他の手段を考える必要があるでしょう。

権利落ち日に空売りは儲かるのか

ではこの記事の本題である「権利落ち日に空売り」というやり方は儲かるのでしょうか。これも残念ながら儲かる可能性は低いです。なぜなら株の世界には「配当落調整金」というものがあり、権利確定日をまたいで空売りをすると配当金に相当する金額を支払う義務が生じてしまいます。

したがって仮に権利落ち日に空売りで儲かったとしても、後日には配当金分を損してしまうので意味がありません。また、空売りをすることで手数料や貸株料といったコストがかかるのでその分もマイナスですね。

ちなみにこの配当落調整金が拘束されるタイミングは証券会社によって異なるので、お使いの証券会社で各自確認する必要があります。おそらく一般的には権利落ち日に拘束されるはずですが、配当支払時に反映されるケースもありますね。

代替策はあるか

権利落ち日に空売りをしても配当落調整金によって儲かることはあまりないと述べましたが、ではこの手法の代替策にはどのようなものがあるでしょうか。よく言われるのは

  1. 配当落調整金は「配当金を調整するための特別利息みたいなもの」
  2. 優待額は調整されない

ということに着目したやり方です。具体的には「配当金を回収されることには目をつぶり優待額の剥落分で儲けよう」というものですね。例えばですが

  1. 配当金:100株あたり1000円
  2. 優待:100株あたり3000円相当

という銘柄があった場合、権利落ちによって剥落する株価は40円ほどが理論値になります。このうちの10円は配当金調整として持っていかれてしまいますが優待分の30円は空売りで取れるだろうという考え方です。

この考え方でいけば「優待で得られる金額が大きい銘柄に関してはお得かもしれない」と言えますが、地合いが良ければ通常の権利落ち想定額より上昇してしまう可能性もあるので注意が必要でしょう。

また、優待額は保有株数や優待そのものの人気によっても効果が変わってくる可能性が高いのでどの程度を下落目安にするのか難しいところです。あえておすすめはしませんが、人気優待銘柄に絞って検証してみても面白いかもしれませんね。

違う手法としては「権利落ち日の売り一巡から反発特性を利用したデイトレ」もあります。これは空売りではなく買いで利益を取っていく方法ですが、例えば2019年3月の権利落ち日の5分足を見てみましょう。

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寄り付きから権利落ちの売り(A期間)が一巡したあと、横ばい(B期間)に転じてからやがて反発する値動き(C期間)が確認できますよね。2021 年3月はどうでしょうか。

権利落ち日の値動き2021年3月

同じく売り一巡から横ばい、そして反発の値動きが確認できます。ちなみに2019年は忘れましたが2021年3月の権利落ち日は米国株S&P500が最高値を更新したことでリスクオンムードが漂っていました。それでも最初に権利落ちの下落が出てから反発するというのがミソですよね。

この反発を取るのは多少デイトレをやっていればそこまで難しくはないかと思いますが、

  1. 初心者さんは何回か権利落ち日の雰囲気をチェックしてからやること
  2. 横ばいからさらに掘り下げるケースもある

ということは言っておきます(2021年は反発後に前場安値を割るほどの下落がきています)。ちなみに買った銘柄はデイトレで終わらせても持ち越しても良いのですが、持ち越しの場合は数日間権利落ちの影響が出ることも珍しくないので注意してください。日足単位で考えるのであればそこを意識しつつ、確実に人気があって買い戻される可能性が高いような銘柄に絞るのがコツでしょう。

まとめ

今回は権利落ち日に空売りをすれば儲かるのかをお伝えしました。単純な剥落分だけ儲かるということは制度上ないと思いますが、優待分の剥落で儲かる可能性も多少はあります。また、権利落ち日の値動きは売り一巡後に反発することも多いのでこれを狙ったデイトレもひとつの考え方でしょう。

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