大引けに大量買いが出て出来高急増になる理由をご存じでしょうか。
もちろん出来高急増になるということは同時に大量の売りも発生しているわけですが、そういった大引けに売りや買いの需要が発生する理由を知ることで何かのヒントを得られるかもしれません。この記事では
- 大引けに大量買いが発生して出来高急増になる理由
- それを引き起こしている投資家の背景
- 大引けに出来高急増となっても株価が動かない理由
- 大引けに出来高急増したら翌日以降に株価が上がるのか
などについてまとめました。参考になりそうな引用元や経験則も含めていますので、ぜひご参考下さい。
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大引けの大量買いや出来高急増の理由
では結論から申し上げましょう。大引けに大量買いをしている犯人はもちろん機関投資家だと言われています。明確に確認する術がないのでこのような言い方をしていますが、ほぼ機関投資家に間違いないでしょう。
というのも大引けに出来高急増となる現象は大型株にも見られるもので、大型株の出来高が相対的に跳ね上がるのは機関投資家が絡まないと難しいからです。
ただし、機関投資家と言っても色々な種別がありますよね。大引けに大量買いを出す具体的な存在としてはパッシブファンド、いわゆるインデックスファンドが主体だろうとも言われています。
ではこういったパッシブファンドとはどういうものなのか。簡単に言えば「指数に沿ったパフォーマンスを目指す」というコンセプトで立ち上げられていて、
- 指数が上がれば成績も上がる
- 指数が下がれば成績も下がる
といった点が特徴です。つまり日経平均株価などと連動した成績になるよう売買をする必要があり、このことから大引けに大量の買いを出したりするわけです。
ちなみになぜ大引けなのかというと、一般的に指数の最終的な株価は大引け価格と考えられているからですね。株の世界には「大引けこそ真の株価」という言葉もあるくらいですし、テクニカル指標も終値ベースに計算することが一般的ですよね。
パッシブファンドは指数に連動する成績を出すために大引けに合わせて成行注文を出す必要があり、これが出来高急増を招く大きな要因となっています。また、国内の事情としてはこのパッシブファンドを活用する顧客層も広がりを見せていて、既にパッシブ比率は73%に昇っているようです。
昨今では積立NISAやiDeCoの普及促進で若年層から中高年層までインデックスファンドの利用が増えていて、この裏には有名YouTuberなどの影響もあると私は考えています。
また、ETFを日銀が大量買いしていたという事実も有名ですよね。大型株の大引けに大量買い需要が出るのはこういった事実が関係していて、昨今ではザラ場の流動性を下げる要因にもなっています。
参考リンク:日経新聞|「タダ乗り投資」市場蝕む パッシブ化の弊害強く
指数構成銘柄の定期入れ替え需要
ところで、指数関連かつ大引けに大量の買い需要が出るその他の要素には「指数構成銘柄の定期入れ替え」もあります。
指数構成銘柄の入れ替えとは日経平均株価などが国内株式市場の状況を常に正しく反映できるよう、構成銘柄を定期的に入れ替える調整作業のことです。例えば
- 銘柄Aは流動性が低くなってきたから構成銘柄から外して、その代わりに銘柄Bを組み込もう
- セクター比率を考えると銘柄Aを外して銘柄Bを組み込んだ方が良いかな
といった具合に国内を代表する銘柄を業種バランス良く指数に構成していくわけですね。
この入れ替え作業は毎年決められた月末付近に行われていて、売買タイミングは大引けとなっています。また、指数に構成されるということは前述のようなパッシブファンド(インデックスファンド)からの買い需要があるということです。
ここを見越して個人投資家からも買い需要(これは大引けとは限らない)が出てくるので、組み合わされば大量の買い需要となるでしょう。
中小型株への買い需要
ここまでは主に大型株への大引け買い需要についてでしたが、出来高急増となるケースは中小型株にも見受けられますよね。もちろんインデックスに関係ない中小型株でも大引けに大量買いが発生することがあり、その裏には個人投資家からの
- 翌日以降の株価上昇を見越したスイング目線の買い需要
- ザラ場内で指値が刺さらなかった際に執行される大引け不成
- 寄らずのストップ高銘柄に対する買い需要
などがあるでしょう。
大引けで出来高急増でも株価が変わらない理由
ここまで大引けに大量買いが発生する要因について述べてきましたが、出来高急増となるためには同じだけ売り需要がなければなりませんよね。なぜなら出来高は「売りと買い注文がぶつかった数」をカウントするものだからです。
もちろん大引け前までに売り注文が置かれていれば、そこに大量の買い注文がくることで約定はされます。しかし、その場合はどんどん上値が約定していくことになるので大引け価格がかなりつり上がることにもなるでしょう。
普段から大引けの価格を見ている方はおわかりかと思いますが、そういったケースばかりかというとそんなことはないですよね。多くの場合は大引け直前の株価とあまり変わらないような価格で終値がつくと思います。例えばある日のトヨタ自動車で大引け出来高と価格を見てみると・・・
このように出来高急増となっていますが株価は直前と変わらずです。
また、大引け及び寄り付きの約定ルールは板寄せ方式が採用されているのをご存じでしょうか。板寄せ方式とは
- その時点で出ている注文を全て集める
- まず成行注文を優先的に約定させる
- 次に高い買い注文と安い売り注文を順番にぶつけていく
という約定方式のことです。
参考リンク:SMBC日興証券|板寄せ
したがって、株価が大引け間際の価格水準とほぼ変わらずに終値をつけるためには「成行買いと同等レベルの成行売り注文が欲しい」ということになります。ということでここからは「大引けに売り需要が発生する要因」についても触れていきましょう。
デイトレードの手仕舞い売り需要
例えば大引けには確実に手仕舞いをしなければならないデイトレーダーは成行注文による売り需要を発生させる要因になります。なぜなら
- デイトレードはそもそもザラ場内で完結させるトレードスタイルだから
- 翌日以降に保有リスクを残したくないから
- 1日信用は持ち越しすると高いコストを払わないといけないから
ですね。デイトレーダーの手仕舞いがどれほどの大きさかは定かではないのですが、ひとつの売り需要にはなるでしょう。
決算などイベント前のリスク回避
大引けにポジションを解消しておきたい理由にはリスク回避があると思います。例えば決算前などは不要なリスクを取らないためにスイングトレードのポジションを控えたりしますよね。
また、決算でなくても「あまりに当日値動きが弱く日足上で大陰線引けになりそう」という場合も翌日以降の展開に不安を感じて売りたくなることがあります。
その他にも米国雇用統計やFOMCなど定期的なものから一過性のものまでリスク回避売りを発生させる要因を挙げればキリがないですね。こういった要素は個人投資家だけでなく機関投資家も気にしていることなので、イベント前に売り需要が出るのは銘柄全般に言える事ではないでしょうか。
大引けに出来高急増したら翌日以降の株価は上がるのか
ここまで大引けに出来高急増となる原因について述べてきましたが、大引けに出来高急増となったら翌日以降の株価に影響を与えるのでしょうか。
結論的にはあまり関係ないと考えていて、この理由は前述のように「出来高急増ということは大量の買いも大量の売りも出ているから」ですね。売りがほとんど出ず最後の最後に株価がかなりつり上がったという場合は別ですが、多くのケースでは株価があまり変わらないので翌日以降に株価が上がる理由にはならないでしょう。
しかしザラ場の流れによっては怪しいと感じることはあります。例えば大きく下げてから急速な巻き返しがあった場合は翌日以降の株価上昇を見据えて買われた可能性があるでしょう。
また、日足出来高が直近水準と比較してやたら高くなっているのに株価が全く下がらない場合も売りが一定価格で吸収されている可能性があるので怪しいかもしれません。
こういった場合は大引け間際の出来高急増が翌日以降に影響する可能性はありますが、これはあくまで総合的な流れを加味して考察しているのであって大引けの出来高急増だけで考えているのではありません。大引けの出来高が増えること自体はよくあるのでザラ場の流れや日足の動きが重要ということです。
まとめ
今回は大引けに大量買い需要が発生する理由や出来高急増となる原因について述べました。パッシブファンドや個人投資家の事情によって大量の買いや売りが発生することはよくあり、ぶつかれば出来高急増となります。
出来高急増でも株価が変わらないのは板寄せ方式によって売り買いがほぼ相殺されているからで、株価が変わらないのであれば翌日以降の株価にそこまで大きな影響はないでしょう。ザラ場の流れによっては怪しさを感じることもありますが、それは出来高急増ではなくあくまで過程を考えた結果です。
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