株の世界にはPTS(Proprietary Trading System:私設取引システム)というものがあります。
これはその名の通り東証以外の取引所を指していて、夕方や夜間など市場が普段開いている時間以外でも株の取引ができる場所です。
一昔前まではあまり周知されているものでもなく、諸事情あって証券会社の中でも満足に取り扱っているところ自体が少なかったですね。
それが昨今ではシステム整備が行われ、手数料などの面でもかなり使いやすくなったため少しずつ人気が出てきている状況でしょう。
ただ、個人的にはPTSを使って「明日上がりそうな株を早めに仕入れてやろう」なんて考えるのは危険だと思います。
この記事ではPTSとの上手な付き合い方を述べ、ついでにPTSの特徴やよくある疑問をざっとまとめました。
PTSで売買をして損しているという方もいらっしゃるかと思いますので、ひとつの参考にしてみて下さい。
PTSとは売る場所だ!
まず言いたいことはPTSで買うなということです。例えばバイオ株などしょっちゅう何かしらの材料を出してくる銘柄はその度にPTSが反応します。
この反応するという意味は「誰かが売って誰かが買っている」ということです。言い換えれば約定して、通常営業時間の終値と比較した時に株価が動いているということですね。
ポジティブ材料が出た場合には割と大きめに動くこともあり、それを見た人達が
- PTSで反応しているな
- 明日の気配値は高そうだな
なんて思うわけです。
ただ、ここで考えたいのは「自分もPTSでさっさと買うべきか」というもの。
個人的にはPTSの気配値などあまり当てにならないと考えているので、勇み足で買わなくて良いと思います。
ストップ高ならまだしも中途半端な高値で浮いている場合には徐々に値を下げていくことが多々あるからです。
そうではなく「自分の保有株に材料が出たら、それをPTSで幾分か売りさばいておく」ということが狙いたい状況でしょう。
PTSの気配値は翌日の気配値そのままを表しているわけではありませんが、自分が売った場合にはそれは確定益となってくれます。
想定よりも上で売れそうなら保有の何分の一かは売り出しておけば翌日の値動きよりかなり高い位置で売れることもあり、これが本質的なPTSのメリットになるはずです。
ちなみに全て売らないのは翌日やそれ以降にもっと上がるかもしれないからです。
その材料でどう値動きしていくかわからないから分けて売るというただそれだけのことですね。
PTSで売る場合は指値売りでなるべく高く出しておき、狙えそうであればストップ高を狙っていきます。
このとき、PTS上の値幅は翌営業日のものが適用されるはずなので注文画面で確認しておきましょう。
また、材料の開示タイミングによっては夜間取引が始まる前段階であらかじめ指値売りを出すことも可能ですので、
- これはスト高が狙えそうだ
- そろそろ連続スト高も打ち止めかな
という場合には積極的に指値売りを狙って良いと思います。
考えられる材料開示タイミングと指値を出す意図としては
- 大引け直後に材料開示:勇み足で買う人に対してなるべく高値で売りつける
- 当日より前に材料が開示されている:連続スト高になるような強い材料を持つ銘柄を日中高値より上で売り抜ける
といった感じです。
売れたら良かったねとなりますし、売れなくてもリスクはないので「売る」という目線でPTSを活用していきましょう。
PTSのメリット
ではここからはPTSの特徴やメリットについての紹介です。
PTSの取引時間
まずPTSの取引時間ですが、
参照:楽天証券
このような時間割になっています。
上記の「JNX」や「Chi-X」というのは取引所の名称のことで、夜間取引は時間帯的に「JNX」の方です。
PTSは現物も信用も使えるものの信用取引の受付時間は夜間帯にはなく、SOR注文も現物のみとなっています。
こういった制限はあるもののザラ場以外で売買できるのはPTSのメリットですね。
手数料は追加でかかるのか
PTSに特別な手数料はなく、現状の手数料体系がそのまま適用されるケースが多いと思います。
むしろSBI証券の場合、ナイトタイムは手数料無料と安くなるくらいです。
ただし、手数料に関しては証券会社による所が大きく、変更される可能性もあるので一応ご自身でも確認してください。
日中と呼び値が違うケースあり
PTSでは日中よりも呼び値が細かくなっている銘柄があります。
呼び値とは注文を出す際の区切りのことで、例えば1円区切りや10円区切りがありますね。
日中は1円刻みでしか出せない銘柄でも、PTSの場合は0.1円刻みで約定できる場合があるのでわずかながら有利な価格で保有できる可能性があるでしょう。
PTSのデメリット
逆にPTSのデメリットにはどんなものがあるでしょうか。
流動性が低い銘柄が多い
PTS市場は環境が整ってきたとはいえ国内ではまだまだ使っている人が少ないです。
例えば国内の超有力企業であるトヨタ自動車でさえ・・・
このように出来高が数万株しかありません。日本を代表するような企業ですらこの状態なので、他の銘柄はもっと流動性が低いと想像できますよね。
現状としては材料が出たことで翌営業日に動きがありそうな銘柄がPTSで物色される傾向にあるので、「小型株メイン」かつ「売り抜ける視点」が好ましいでしょう。
値下がりが早い
流動性が低いということは値動きが荒くなるということでもあります。
例えば・・・
こちらは前日のPTS市場で売買が活発だった銘柄の15分足です。
特徴としては
- 急騰しても15分の間にガッと下げる動きあり
- ギャップが多い
という点が挙げられ、特に急騰からカカト落としとなっているのが印象的ですね。ここで高値掴みをしてしまうと後悔することになるので、十分に気をつけなければなりません。
値動きは当てにならない
PTSの値動きは流動性が低く、市場全体の意思かどうかはわかりません。
そのためPTSで高値をつけていても翌営業日にそうなるかはわからず、むしろ下げてしまったなんてこともあるでしょう。
この場合、得しているのはPTSで高く売りつけた人だけです。こういった点からもPTSの反応を見て翌日の値動きがそっくりそのままになると買い急がない方が良いですね。
夜間取引の株価チャートは見られるのか?
ところで夜間取引の株価チャートは見られるのでしょうか。
当然ですが、夜間取引に絞った株価チャートは証券会社のアプリで確認できます。
楽天証券であれば・・・
図の赤枠部分をタップするとJNXやChi-Xに切り替えられるのでお試し下さい。
まとめ
今回は「PTSとは買うのではなく売る場所だ」というお話をしました。
必ずしもPTSで売れるわけではありませんが、買い手に回るよりは売り手で参加する方が断然リスクは低いと思います。
材料が出ていてPTSで売買が行われそうであれば、さっと指値を出して高く売りつけてみるのも楽しいですよ。
PTSの流動性が今後高まってくれれば状況は変わってきそうですが、当面の間は売り手として参加していきましょう。
<関連記事>