どうも、ひげづら(@higedura24)です。
皆さんは今でこそ当たり前にある「宅急便」という仕事を作った会社がどこかご存知でしょうか。
それはヤマト運輸でお馴染みのヤマトホールディングスです。
ヤマト運輸はクロネコが描かれたトラックで日本中を走り回り、今日においても家庭や会社に荷物を運んでくれています。
まさに国内を代表する運輸会社とも言えるヤマト運輸ですが・・・実は2020年3月現在では株価が大暴落している最中です。
この記事では
- ヤマトホールディングスの企業概要や特徴
- Amazonとの関係性
- 事業リスク
- 株価暴落の理由
などについて述べました。
世の中の変化に伴って、ヤマト運輸にも変化の時が訪れています。
中々興味深い背景だと感じますので、皆さんもぜひご参考下さい。
外部参照リンク:ヤマトホールディングス公式HP
ヤマトホールディングスの企業概要
ヤマトホールディングスは時価総額5000億円ほどの陸運業を営む会社です。
ヤマトホールディングスの事業セグメントと売上高比率は
- デリバリー事業:79.8%
- ホームコンビニエンス事業:2.1%
- フィナンシャル事業:4.9%
- BIZ-ロジ事業:9.1%
- e-ビジネス事業:1.6%
- オートワークス事業:1.6%
- その他事業:0.9%
となっていて、ヤマト運輸はこのうちのデリバリー事業にあたります。
ちなみに昨今ではホームコンビニエンス事業で不正が発覚し、新規受注を停止する騒ぎもありましたね。
事業全体としては
- 従業員数:21万人
- 事業所数:8032店
- 宅急便取扱数:18億個
- グループ会社:42社
- 取扱店数:19万店
- 所有車両台数:約55000台
と宅配便業で首位を獲得しています。
国内シェアも・・・
2018年度実績で42.3%のトップシェアです。
そんなヤマトホールディングスの事業で重要な時期は7月と言われています。
この背景にはギフトシーズンによる売上高増加があり、ここで家庭や会社に運ぶ荷物がどれだけあるかで業績も左右される傾向があるでしょう。
例えば、野菜や果物といった青果貨物は天候によってその量が影響されますよね。
夏前~夏の時期に
- 雨がどれだけ降ったか
- 気温はどのような推移だったか
によって農家の作物が影響され、こういった取引先の活況度合いがヤマト運輸としても大事なわけです。
ヤマトホールディングスの決算期で比重が高くなるのは第3Qですから、ここで一気に進捗率に変化が出ると覚えておきましょう。
ちなみに決算発表の傾向としては下方修正や上方修正がザラにあります。
前述のような背景から正確な業績予想を出すのも難しいのかもしれませんが、それにしてもかなりブレる印象があるので注意が必要ですね。
売上高の指標としては小口貨物取扱実績などがあるので、そういったものから業績判断していくのはひとつの手でしょう。
業績推移と各種指標
ヤマトホールディングス全体における直近5年の売上高推移は・・・
出典:バフェットコード
このように増加傾向にあります。
一方で利益推移は・・・
このようにどちらかと言えば減益傾向で伸び悩んでいますね。
ここからわかるのは売上高が増えても利益につながらないという構造で、ここには後述するような事業リスクが関係しているでしょう。
その他の指標としては
- PER(予):27.5倍
- PBR:0.9倍
- ROE:4.4%
- 自己資本比率:50.4%
- 有利子負債:99,500百万円
- 利益剰余金:450,650百万円
となっています。
業績推移を見てもわかるように、あまり収益性が良いとは言えず株価水準も割高なようですね。
ただ、財務面は悪くなさそうです。
配当と優待
ヤマトホールディングスの配当は
細かい増減がありつつも、直近では大幅な増配となっています。
業績が伸び悩んでも増配できるのは財務面がしっかりしているからかもしれませんね。
次に優待ですが、ヤマトホールディングスに株主優待制度はありません。
ただし、実は株主ポータルサイトの「株主ひろば」から羽田クロノゲート見学会の申し込みができます。
これは株主宛に送られてくる事業報告にて案内されている内容なので、公式といえば公式発表なのですが今後も続くかはわかりません。
隠れ優待の類なので興味がある方はクロス取引にてチェックしてみましょう。
運輸事業のリスクは人手不足と燃料費
ヤマトホールディングスの事業リスクには
- 人手不足
- 燃料費
があります。
どちらもヤマトホールディングスだけでなく陸運業全体に言えることでしょうが、ヤマト運輸は特にその傾向が強いです。
人手不足の背景には楽天やAmazonが関係
人手不足の背景には楽天やAmazonに代表されるネットショッピングの台頭があるでしょう。
これらのサービスが拡大を見せたことで家庭への宅配業が増え、ヤマトホールディングス全体の人手不足やサービス残業を引き起こしていると言われています。
特にAmazonでは、プライム会員になるとお急ぎ便(翌日の時間指定配達)を無料で提供してもらえますよね。
佐川急便がAmazonの配送を撤退してからその受け皿となったのがヤマト運輸ですので、業界内でも特にその負担は大きいでしょう。
こういった背景もあり、ヤマトホールディングスは「人員を増やして人手不足を解消する方針」を示し
- 夜間配達員1万人採用案(中途停止状態?)
- 12時~14時の配達時間を削除
などの施策を打ち出していますが・・・未だに人手不足の解消には至っていません。
人員拡充は必須のようですが、当然ながら人件費は増加するので中々難しい課題のようです。
ちなみにAmazon側の対応は厳しいもので
- デリバリープロバイダ:地域限定の運送業者と提携
- Amazonフレックス:個人事業主と提携
という独自配送システムを構築しつつあります。
今のところかなり評判が悪いのでこのまま進んでいくかは正直わかりません。
ただ万が一にもこの流れが濃くなれば、ヤマト運輸の大口顧客数が減少していくと思うので簡単に人員コストを増やしていくわけにもいかないのではと思います。
燃料費には原油価格が関係する?
ヤマト運輸がクロネコヤマトのトラックを走らせるためにはガソリンなどの燃料が必要です。
したがって、市場の見方としては「ヤマトホールディングスのコスト面に原油価格の推移も関係する」というのが一般的でしょう。
しかし、元代表取締役会長兼社長の有富慶二氏はインタビューで原油高の影響について聞かれると・・・
外部参照リンク:ヤマトグループの企業価値最大化へ向けて
- 原油高の燃料費割合は、ヤマト運輸における全体売上高の1%程度と軽微なもの
- ハイブリッド車を中心に低燃費車を導入する施策が功を奏した
と述べています。
インタビューはヤマト運輸がデリバリー事業としてヤマトホールディングスに入る時期(10年以上前)のものですが、昨今でも「2030年までに小型EV5000台を導入する」と発表しているので原油高への対策は継続的に考えられているようですね。
とは言え市場としては原油高関連銘柄となっているので短期的には株価が動くのでしょうが、業績面にはあまり関係ないという認識で良いでしょう。
ヤマト運輸における値上げの歴史
ヤマト運輸は過去に何度か値上げを敢行していて、その背景には
- 消費税の増税
- 人員不足によるコスト増加
が関係しています。
例えば最近では
- 2014年:消費税の増税に伴って発表
- 2017年:人手不足と人件費高騰、貨物量の増加を理由に発表
- 2019年:消費税の増税に伴って発表
という歴史がありました。
増税時期の値上げに関しては税金分だけとなっていますが、大きかったのは2017年の大幅値上げですね。
前述の楽天やAmazonといったネットショッピングの需要増加を背景に行われ・・・
このような大幅改変となりました。
ちなみに、昨今は値上げだけではなくキャッシュレス決済なども取り入れ
- キャッシュレス決済で送料軽減(小銭管理の負担減少が理由)
- スマホで全て簡潔するサービスを提供
という改革も並行しています。
キャッシュレスやスマホで簡潔するスキームは配送員への負担軽減も兼ねており、働き方改革の一種と言えるでしょう。
ヤマトホールディングスの株価暴落理由
ここまでヤマトホールディングスについて述べてきましたが、2020年3月時点の株価推移を見てみましょう。
なんと2018年9月につけた高値3559円から2020年3月には1289円の安値をつけていて、下落率は
- (3559円-1289円)÷ 3559円 × 100 = 63.7%
という計算結果です。
わずか1年ちょっとで株価が半分以下になっているので、これは大暴落と言って良いレベルでしょう。
元々は1兆円規模だった時価総額も今では5000億円ほどにまで下がっていて、これほどの大企業でも価値が大きく下がるんだなと驚きますよね。
これほどまでの株価暴落を引き起こしたのは業績の落ち込みが理由です。
2019年期第2~3Qまでの内容は
- 2019年第2Q(2018年10月発表):通期の経常利益を8.2%上方修正
- 2019年第3Q(2019年1月発表):通期の経常利益をさらに1.5%上方修正
と問題なかったのですが、チャート的にはこの辺から株価がもみ合いに入っています。
株価が特に下落反応を示したのは2019年通期本決算と2020年期第1Qです。
まず2019年本決算(2019年4月発表)ですが、市場が嫌気したのは
- 複数回出した上方修正に全く届かずに下振れた
- 一転して下方修正が出された
という内容でしょう。
この理由としては
- 想定より取扱数量が減った
- 海外関連会社の株式評価損を計上した
- 人員増えたことでコスト増加
ことが挙げられ、売上高も営業利益も従来予想を下回ったためと言われています。
次に2020年第1Q(2019年7月発表)の内容ですが、「97億円の赤字計上かつ通期経常利益予想を4.2%下方修正」がさらに暴落を継続させることになりました。
この背景には
- ドライバーの採用を増やして人員コスト増加
- 代金過大請求問題で新規受付を停止した引っ越し事業の損失計上
- 天候不順で青果などの貨物需要が停滞
といったことが挙げられ、大口荷主が離れて貨物数が伸び悩む現状をかなり嫌気されたようです。
その後の決算発表でも
- 2020年第2Q(2019年10月発表):中間決算前年同期比88%減の経常利益を計上かつ通期の経常利益予想を14%下方修正
- 2020年第3Q(2020年1月発表):通期の経常利益予想をさらに37.3%下方修正
と業績の落ち込み懸念が払拭できていません。
2020年第3Qでは配当を10円増額するとも発表しましたが、それだけで株価を大きく戻すのは難しいですよね。
株価暴落の根本的な要因は
- 取扱数量の減少
- 人員不足とコスト増加
があるので、ここが改善されない限りは安定的な上昇は見込めないと思います。
2019年9月20日の株価急落理由
ところで、ヤマトホールディングスのチャートには決算発表の翌日でもないのに株価が急落している箇所があります。
出来高も急増していて、寄付きで大幅ギャップダウンしている特徴的な値動きと言えるでしょう。
この株価急落理由は、寄付き前に大口のディスカウント取引が成立したためです。
大口のディスカウント取引とは
- 立ち会い外(ザラ場以外の時間帯)で
- 大量の株価が
- 前日終値よりも安く受け渡された
という取引を言います。
ヤマトホールディングスの場合、230万株が前日比マイナス7.5%の1757円で成立したことを受けて急落したと観測されていて
- 既存の大株主が大量に売却した
- その背景には業績の落ち込み懸念があるのではないか
と言われていました。
その1ヶ月ほど後の2019年10月には米キャピタルが7%ほどの保有株式を全て売却したと報告していて、これは寄り付き前の下落率とキャピタルの保有割合から見ても合致している材料です。
米国の運用大手会社が手放したということは、本当にヤマトホールディングスの業績がさらに悪化するということなのでしょうか・・・?
ヤマトホールディングスにおける今後の見通し
ヤマトホールディングスの課題は
- 取扱個数の安定確保(大口案件が欲しい?)
- いかにコストをかけずに人員不足の解消を図るか
といったところです。
2017年には取扱個数に戦略的な総量抑制を図りましたが、この施策のせいで顧客離れが引き起こされています。
今度は戦略的に総量増加を行わないと業績が改善しないので、小口や大口の取扱個数を増加させるためには企業との連携が必要になってくるでしょう。
Amazonにやりたい放題やられているので、ここは国内企業と手を組んで立ち向かってほしいところですね。
ちなみに2020年2月にはメルカリと連携し、フリマ商品をドライバーが梱包・発送するサービスを拡充しています。
また、2020年3月にもZHD(ヤフージャパン)と物流サービスで提携することを発表していて、2020年6月30日からYahoo!ショッピングなどの出店ストア向けに受注から出荷までの業務を代行するようです。
こういった企業連携の流れが加速していけば必然的に売上高が上がり、国内での立ち位置もより強固なものになると思います。
ただし、懸念されるのは
- 提携しても人員不足でうまく生かせない
- 売上高が増加してもコスト増加で利益につながらない
といった可能性ですよね(実際に現状は売上高のみ増加傾向にあります)。
したがって、企業提携と並行して「コスト削減+人員増加」が求められるのでそういった所にも注目したいところです。
いずれにせよ一朝一夕で状況が変わるわけはないので、中長期的な目線で動向を見守りましょう。
ちなみに最近の材料としては
- EC専用の物流網を構築し、仕分け方法も変更
- 置き配の導入で需要増加を狙う
といったものがあります。
配送効率のアップや配送員の負担軽減が効果として現れるのか期待ですね。
まとめ
いかがでしたか?今回はヤマトホールディングスの企業概要や株価暴落理由について述べました。
ヤマト運輸でお馴染みのデリバリー事業をメインに国内の陸運業を行っている会社ですが、内部状況としては人員不足などに苦しんでいるようですね。
この影響は業績にも表れてしまっていて、ここが改善されない限りは安心してホルダーになれないでしょう。
Amazonとの絡みや取扱数量の推移など心配ですが、ヤマト運輸という企業ブランドがあれば施策はいくらでも打てそうとも思います。
もう少し様子を見て、内部事情に変化が見られ始めたタイミングで買いを検討するのが無難ではないでしょうか。
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