どうも、ひげづら(@higedura24)です。
国内の外食産業を一世風靡したジャンルに「牛丼」があります。
そして「うまい、やすい、はやい」で人気を集め、外食業界に新しい風が吹かせた存在こそ吉野家だと言えるでしょう。
そんな吉野家ホールディングスは株式市場でも優待銘柄として人気がある存在ですが、過去には株価暴落局面もありました。
この記事では
- 吉野家ホールディングスの企業概要(業績推移、各種指標、配当、優待など)
- 抱えている問題点と対策
- 株価暴落局面とその背景や理由
といったことを述べました。
同業他社であるすき家および松屋とも比較していますので、ぜひご参考下さい。
吉野家ホールディングスってどんな会社?
まずは吉野家ホールディングスの概要について簡単に見ていきます。
吉野家ホールディングスは「For the People(すべては人々のために)」という経営理念を掲げている時価総額1200億円ほどの大手飲食チェーン会社です。
具体的な事業セグメントと売上高比率は
外部参照リンク:吉野家HD公式HP
- 牛丼チェーン店(吉野家):50.7%
- うどんチェーン店(はなまるうどん):14.2%
- 寿司チェーン店(京樽):13.4%
となっていて、特に牛丼チェーン店として有名ですね(ステーキ事業などもあったが2020年2月に安楽亭に譲渡)。
吉野家に関しては東南アジアやアメリカにも進出しており、海外売上高比率は10.3%です。
グループ年間利用者数は世界23エリアで4.4億人と公表されていて、グループ内店舗数は3400店以上となっています。
ちなみに海外店舗数は10年で2倍まで拡大していて、この傾向が続けば海外売上高比率も拡大していくでしょう。
吉野家は過去に国内牛丼チェーン店で首位を獲得していましたが、現在は業界2番手になっています。
企業イメージはなんといってもうまくて安くて早いといったものですが、実は牛丼並盛りの価格は
- 吉野家:380円
- すき家:350円
- 松屋:320円(味噌汁つき)
と業界最高値です。
ちなみにどのサイズでも松屋が最安値をキープしていて、しかも味噌汁つきという親切さとなっています。
価格では負けていますが国内の外食産業に牛丼を根付かせたのは間違いなく吉野家ですので、その貢献度は大きいでしょう。
直近業績や各種指標
吉野家ホールディングスの直近業績はどうでしょうか。
まず売上高ですが・・・
出所:バフェットコード
このように直近は上昇傾向となっています。
ただし、営業利益と純利益は・・・
2019年2月期に
- 営業利益:赤字ギリギリのライン
- 純利益:60憶円の赤字
にまで落ち込んでいるようですね。
また、2018年7月6日に発表された3~5月期の決算発表でも最終赤字となっていて、この時は株価が20%以上も暴落しました。
この理由や要因については後述しますが、吉野家の業績は完全に安定しているわけではなく若干の脆弱性がありそうです。
その他の割安性や財務健全性についての指標は
- PER(予):1200倍
- PBR:2.5倍
- 自己資本比率:38.0%
となっています。
PERがこれほど高いのは時価総額に対して純利益がとても小さいからで、決して成長株として期待されているわけではありません。
配当と株主優待
吉野家ホールディングスの配当と株主優待はどのようなものでしょうか。
まず配当推移ですが・・・
1株あたり20円で安定していて、利回りは1.0%前後となっています。
配当面では増配もなく利回りも低いようですが、株主優待は・・・
100株で年間6000円が受け取れるので中々良い水準です。
仮に株価2000円で株主優待を受け取ったとすれば、
- 6000円 ÷ 20万円 × 100 = 3%の優待利回り
となるので、配当と合わせれば4%前後のインカムゲインですね。
つなぎ売りコストを入れても元は取れそうですし、株主優待だけでも狙う価値はあるでしょう。
ただし業績推移を見た限りでは赤転するリスクもありそうなので、長期保有するかは個々の判断にお任せします。
吉野家ホールディングスの株価暴落理由
さて、そんな吉野家ホールディングスの株価推移を月足で見てみましょう。
出所:株探
アベノミクス以降の月足イメージは上昇トレンドを維持している印象ですが、過去には所々で株価暴落局面もあったようです。
営業利益率2%という市場屈指の低さ
例えば前述した2018年7月の決算発表では5年ぶりに最終赤字が発表され、市場では一斉に売りが出ることとなりました(上図の赤枠部分)。
2019年4月頃までの半年間で株価が24.3%も暴落したわけですが、ここには吉野家ホールディングスが抱えている事業リスクが関係しているでしょう。
というのも赤字背景には吉野家の稼ぐ力が関係していて、これは以前から懸念されていたことです。
実は吉野家ホールディングスの営業利益率は2%と市場全体で見てもかなり低い数字なんですね。
営業利益率は売上高のうちどれくらいが利益として残っているかを見る指標ですが、吉野家の場合はわずか2%しか利益が残りません。
飲食業界では営業利益率8%を目指しましょうという風潮がある中で、この利益率の低さは厳しい印象があります。
投資家の中でも営業利益率が低い企業として知れ渡っているので、なんとかこの状況は変えてもらいたいものです。
ちなみに同業他社のすき家および松屋と比較しても、
- 吉野家HD:2%前後
- すき家(ゼンショーHD):3.5~4.0%
- 松屋:4.5~5.0%
と負けています。
この背景には
- 人件費の慢性的上昇
- 牛肉価格の変動
が要因として挙げられていて、どちらもわずかに上昇しただけで営業利益が吹き飛ぶ可能性があります。
2019年の通期純利益が赤字になった理由としてもこの2点は決算資料で述べられていて、吉野家ホールディングスとしても課題と見ているようですね。
ちなみに、牛バラ肉(ショートプレート)の価格は直近でも高騰が問題視されています。
外部参照リンク:財務省|牛肉の緊急関税措置の効果
昨今では米中通商協議において
- 中国側が米国産牛肉の追加関税を免除する考えを示した
- アジア圏で需要増加が起きるかもしれない
という流れがありましたが、今のところ消費者に過度な税負担増加はないようです。
とはいえこのまま材料費の高騰が続けば営業利益がまた赤字転落する可能性もあるので、こういった株価暴落の要因は知っておきたいところでしょう。
消費税増税後の思惑消失
先ほどお見せした吉野家の月足では、もう一箇所だけ株価暴落部分があります。
それは2020年1月~3月に生じている43.9%もの暴落期間です(黄色枠部分)。
2020年2月終わりからは地合いがすこぶる悪かったのでこれもひとつの背景ですが、それとは別に「消費税増税にあたって生じた吉野家への思惑」があると思います。
その思惑の具体的な内容とは「消費税増税の影響をあまり受けないのでは」というものです。
消費税が現行の8%から10%に増税するというテーマが出てきた時、株価が下がった飲食関連銘柄もありました。
暴落とまではいきませんが、消費税が増税されれば
- 消費者が外食を手控える
- 飲食業界の売上高が落ちる
- 連動して株価も下がる
という思惑が市場に走ったためでしょう。
しかし、吉野家の株価はその思惑に反して上がりました。
この背景には増税後も
- 牛丼・牛皿全品10%オフキャンペーン
- 超特盛りや小盛りなどの新サイズ投入
- 特選すきやき重や月見牛とじ御膳など新路線メニュー投入
など積極的な客集めを行うと発表していたことが挙げられます。
これらは増税対策でもあり営業利益率の改善対策でもあるかもしれません。
例えば超特盛りは
- 牛肉量が大盛りの2倍とインパクト大
- 価格が780円(並盛り2杯以上の値段)と利益率が良い
という施策です。
特選すきやき重も同じく860円という価格で、これは吉野家で最も高いメニューとなっています。
ワンコインで食べられない吉野家に衝撃を受けましたが、経営的には超特盛りや特選すきやき重1杯で並盛り客2人分以上を確保できるので割が良いのかもしれませんね。
実際に増税後の既存店売上高も好調だったので、これも株価上昇を助けた一因でしょう。
ただ、ここまでくれば四半期決算の内容や通期の進捗率が良いことは多くの投資家が想像しやすくなります。
結果的に2020年1月に発表した決算(2020年2月期第3Q)では
- 売上高予想を2080億円から2150億円へ
- 営業利益予想を10億円から36億円へ
と上方修正を発表したもののこれをきっかけに株価は急落し、地合いも相まり暴落の流れになりました。
表向きは進捗率が市場コンセンサスに届かなかったためと言われていますが、個人的には
- 増税後の期待感で先取り上昇していたこと
- その状態で上方修正が発表されたこと
が出尽くし下げにつながったと考えています。
薄利多売のスタンスが改善されていくという観点では嬉しいことですが、需給状況としては転換点にされたのかもしれません。
今後、仮に吉野家側がしれっと利益率の高い特別メニューを増やしていくのであれば、営業利益率が改善されるか注目ですね。
吉野家ホールディングスがすき家にトップを奪われた理由とは
ところで、牛丼チェーン店の首位を守り続けていた吉野家はなぜ二番手になってしまったのでしょうか。
その要因のひとつに2000年初頭に勃発した「狂牛病問題」がありました。
正式にはBSEや牛海綿状脳症と呼ぶようですが、ここでは狂牛病としておきます。
狂牛病はイギリスで初めて確認され、その後アメリカでも発見された牛の感染症です。
日本でも2001年に千葉県で発見され、ここから産地偽造事件などに発展しました。
この一連の影響で米国産牛肉の調達が困難になってしまい、飲食業界全体に激震が走ったそうです。
牛肉を提供する企業の思わぬリスクとなり、吉野家も大きな痛手を伴いました。
吉野家が原材料に使っていたのは米国産の牛肉だったので、騒動がきっかけで消費者に牛丼を提供することが困難になってしまったのです。
他国の牛肉で提供することも考えたようですが、品質・味・企業イメージを守るためには
- 牛丼の販売を中止する
- 豚丼にメインメニューを切り替える
という選択肢しかなかったとのこと。
しかし、やはり豚丼では従来の売上高を実現できず数字に表れてしまいました。
ちなみにその時期の株価推移は・・・
1999年代の3000円近い高値から1500円まで暴落していますね。
一方で、すき家は米国産からオーストラリア産に変更して牛丼の提供を続けたので
- 客が一気に流れてしまった
- 業界の順位が入れ替わってしまった
という結果になったわけです。
国内の吉野家から牛丼が消える日には全国ニュースになるほど多くの客が押し寄せたので、再開すればまた人気が戻りそうなものですが・・・飲食業界は厳しいですね。
吉野家の株はいつ買うべきか
銘柄の好みは人それぞれですが、個人的には牛丼チェーン店の株を買うなら松屋フーズを選びます。
吉野家よりも時価総額は小さいですが営業利益は多く、純利益が直近で赤字になったこともありません。
自己資本比率も良く、定食や独自性のある丼メニューもあります。
何より味が一番好みなので保有するならこれかなーと思えるのは大きいですね。
どうしても吉野家HDを買うという場合には、やはり営業利益率がもっと高い位置で推移し始めた時でしょうか。
業績悪化リスクが後退しない限りは怖いイメージが消えないので、もう少し構造改革が進むのを待ちたいです。
事業セグメントとしては「はなまる」と「海外売上」がもっと大きな柱になってくれると良いですね。
吉野家HD内では「NEW BEGINNINGS 2025」という長期計画を持っていて、現在はそのセカンドステージです。
2000年代からは大きな成長が難しくなっていることを理由に、ここからは変革期にすると言っているので投資の収穫期を待ちましょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は吉野家HDの株価暴落理由について述べました。
営業利益率の低さは昔から言われていることで、その背景には人件費や材料費の問題があります。
それらで業績を喰われ、株価暴落となったケースもあるのでリスクとして知っておきたいですね。
直近では新メニューの施策が功を奏したようですが、この傾向がこれから続いてくれるかも注目したいところでしょう。
関連記事には
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