高値覚えと安値覚えは株に潜むアンカリング効果である

    

株の世界には「高値覚え」や「安値覚え」といった言葉があります。これらはいわゆるアンカリング効果と呼ばれる心理的な現象であり、私たち人間の思い込みや願望などが引き起こすものです。

株の世界で起こるアンカリング効果は非常に興味深く、銘柄監視を開始した時期やどういった部分に着目して銘柄を見ているのかなどの要素が関わってきます。

この記事では

  1. アンカリング効果とは一般的にどのような現象か
  2. 高値覚えと安値覚えとはどんなものか
  3. その具体例と対策

といった内容について述べました。知らず知らずのうちに誰もが陥っている心理効果だと思いますので、心の罠にハマらないようぜひご参考下さい。

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アンカリング効果とはどんな心理効果か

まずアンカリング効果についてですが、これは「自分が最初に見た位置を基準(アンカー)として考え、そこからどのように変化したのかで物事を考えてしまうこと」です。

例えば子供の成績を追跡したケースを考えてみましょう。お母さんはお子さんの成績がクラスで一番下だった頃から介入し始め、毎日欠かさず一緒に勉強しました。すると徐々に成績が持ち上がり、なんとかクラスで真ん中くらいの成績まで昇ることができました。

お父さんはこの時期から子供が勉強を頑張っていることを知り、一緒に応援し始めます。その後、さらに勉強を頑張ったお子さんはなんとクラスでトップクラスの成績に登り詰めました。

ここからがポイントで、おそらくこの時の親御さんの感動はお母さんの方が大きいと思います。なぜならお母さんは「一番下の成績」を基準としているのに対し、お父さんは「中くらいの成績」にアンカーを置いているからです。

一番上まできたという感動は同様にあるのでしょうが、アンカリング効果の観点ではより下に基準を持っているお母さんの方が成績のギャップを感じやすいわけですね。

株の高値覚えと安値覚えとは

前述のアンカリング効果は株の世界でも起こり得ることだと知られています。

例えば最初に見た株価位置が・・・

株の高値覚えと安値覚え

赤丸のような高値圏だった場合を考えてみます。ここから買い場を探るとき、黄色丸部分は株価が数十%以上も値下がりしているのでそれなりの押し目だと感じる方も多いでしょう。

しかし、最初に見た株価が青丸のような安値圏だったらどうでしょうか。いくら黄色丸まで下がったとは言えまだまだ下げ幅があるように感じ、実際に買うのはまだまだもう少し先と考えてしまいそうですよね。

このように現在の株価に対して判断を下す際に、自分が最初に見た過去の株価水準と比較して高いか安いかで考えてしまうことを「高値覚え」や「安値覚え」と言います。

要するに過去の株価をアンカーとして銘柄の価値を判断してしまうアンカリング効果であり、銘柄への正当な判断が出来なくなる原因として代表的なものです。

高値覚えの場合であれば「株価が高値から落ちてきた理由を考えずに買い急いでさらなる下落に巻き込まれてしまった」という結末になるかもしれませんし、安値覚えの場合は「過去の安値に囚われすぎて絶好の買い場を逃した」ということになりかねません。

どちらも株の世界ではあり得ることで、大事なのは「株価がそこまで動いた理由はどんなものか」ということです。

高値から落ちていても大した理由がなければ単なる押し目なのかもしれないし、上昇要因が決算期待だったのに良いとこなしのボロボロ決算で落ちてきたのであれば魅力は薄れてしまいます。

株価は何かしらを頼りに動いていることが多いので、単なる数字の変化だけでは売買がしづらいでしょう。

正当な判断が出来なくなる理由と対策

高値覚えや安値覚えによって株価への判断がズレてしまう最大の原因は「株価を数字だけで考えているから」です。

通常、銘柄の価値は株価が高いか安いかではなく企業の業績や将来への見込みがどのように変化しているのかで判断するべきですが、

  1. やっと自分の資金で買える範囲まで落ちてきたから買おうかな
  2. あの時と同じくらいまで落ちてきたから買おうかな
  3. どうせまたここまで上がるからその時に売ろうかな

など無意識のうちに自分の中に置かれているアンカーが判断基準になって売買しようとしているケースも多いですよね。

これらには個人投資家の多くが、テクニカル分析が大好きでチャートだけを見て売買判断をしているという背景が大きく関わっていると感じます。

したがって、対策としてまず見るべきは

  1. 企業業績や増益率の実績
  2. 営業利益率の大小と維持力
  3. 配当や増配の実績と余力
  4. 直近材料や適時開示
  5. 注目されているテーマ性とテーマの状況変化

など企業の状況や需給を教えてくれる情報でしょう。

ちなみに経験的には「今は増益率が高いが将来的にはこの材料のせいで増益幅が縮小する」といった類の話は全く当てにならないので無視して構いません。

個人的に将来への見込みは自分や市場コンセンサスのエゴでしかないケースが非常に多いと考えていて、そういった根拠のない観測で優良株が下がってくれた時は買うべきです。というか、むしろ情報元も自分が安く買うためにそんな観測を流しているとまで思えるので自分は市場と反対に動くべき局面でしょう。

少し話がズレましたが、このように単純に株価の上下だけで判断するのではなく現状の業績など企業実態をもとに銘柄への判断を下すことを当たり前に考える必要があります。

これはかなり昔から言われていることなのでしょうが、それでも未だに多くの投資家がチャートだけを見て安いか高いかを考えてしまっていますよね。

高値覚えや安値覚えの罠にハマりたくなければ、まずは業績や決算内容をしっかりと見る癖をつけることです。

チャートを見たら四季報ページを流れるように閲覧し、そのまま直近の適時開示や材料まで調べる。また、増益しているかだけでなく増益幅が広がっているか、そして現状持っている売上高や営業利益から見てあまりに高い株価水準でないかをバリュエーションなどを参考に考えることも重要ですね。

私は中長期で買うことも多いのでこういったことを主に見ていますが、短期売買を生業とした投機勢も見る部分は株価だけではないと思います。

たったひとつの悪材料だけで大きく流れが変わってしまうこともありますし、出来高や信用取り組みなど需給情報も大事でしょう。

単に株価の上げ下げだけ考えていると流れは読めないと感じますので、ぜひ総合的な視点で株価判断してみてはいかがでしょうか。

コロナ窩では安値覚えが多かった?

ところで、新型コロナウィルスショックではほぼ全ての銘柄の株価が暴落しましたよね。また、同時にそこから多くの銘柄が大反発したので驚いた投資家も多かったように思います。

コロナショックと安値覚え

投資家が驚いた理由は「経済状況が悪くなるのは明らかだったのに株価が大反発したから」です。前述のように業績という企業状況を考えればいくら安くても手を出せないと考えた人もいたことでしょう。

ただ、結果的にはそれよりも

  1. さらに翌通期の業績が回復するはずだ
  2. コロナ窩でも業績に影響がない銘柄を選ぼう

といった二歩先の未来に対する思惑や、コロナでメリットが生じる企業へ資金が向かった恰好になったわけです。

仮にこの状況下でコロナショック時の安値にアンカリングしてしまっていると、

  1. まだこの株価水準は割安ではないだろう
  2. さらに株価が下がるかもしれない

と考えてしまい相場が上昇しても手を出せなかったということになりますよね。

私自身、コロナショック後の回復期は資産が戻っていくのを眺めている時期が長く、その裏には「自粛期間の決算内容が確実に織り込まれていることを確認したい」という考えもありました。

ただ、コロナショックではあまりそういった考えは必要なく、ただジャブジャブ買われている状況についていけば良かったということにもなります(かなり先になって感じたのは先進国の中でも特に日本が感染拡大をコントロールできていたということ、そして世界中から一種の安心感があったということ)。

株式市場ではこういったよくわからない現象も起こるので難しいところではありますが、基本的には企業状況を加味しつつ市場の心理を捉えていきたいと勉強になりました。

まとめ

今回は株価の高値覚えと安値覚えについてご紹介しました。これらはアンカリング効果と呼ばれる一種の心理的な現象であり、無意識のうちに銘柄への判断に影響しています。

高値覚えや安値覚えに陥らないためには株価以外の情報にもしっかりと目を向け、自分がどういった部分を重視して判断を下すのかを考えておく必要があるでしょう。

これは売買の時間軸に関係なく共通して言えることですので、ぜひ総合的な視点を持ってみてはいかがでしょうか。

自分が最初に見た株価水準に囚われた売買にならないように意識していきましょう。

    
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