どうも、ひげづら(@higedura24)です。
株式投資をやっていると「A社がB社をTOBします」といったニュースを聞くことがあります。
TOBとは株式公開買付けのことで、要するにA社がB社の株をある価格で大量に買付けることを公表している状態です。
TOBには企業側にも投資家側にもメリット・デメリットがあります。
この記事では
- TOBの概要
- メリット・デメリット
- 友好的TOBと敵対的TOBの違い
- 上場廃止と上場維持の違い(一部買い付けと全部買い付け)
- TOBの注意点
についてまとめましたので、ぜひご参考下さい。
TOBで株価はどうなる?
TOBとはTake Over Bidといって、買い付け企業が
- 募集期間
- 買い付け株数
- 買い付け価格
を提示した上で、TOB対象企業の株式を公開買付けにて取得することを言います。
TOBが行われる目的としてはTOB対象企業の
- 関連会社化
- 子会社化
などがあります。また、まれに自社株買いの目的でTOBを行うこともあるようですね。
TOBを行うと、対象株式には買い取り企業側からの株価上乗せ分が入るため現在価格よりも高い価格で買い取られるのが一般的です。
なぜこのような太っ腹なことをしてくれるのかというと、TOBには「TOB対象企業の株式を短期間で一定数集めたい」という背景があるためです。
通常、株式を大量に買集めたい場合はそれなりの時間をかけて行わなければなりませんし、需給状況によっては暴騰してしまうリスクもあります。
TOBを成立させるために上乗せしなければならないものの、期間や価格を決めたうえで必要数を集められるので買い取り企業側としてもメリットが大きいのです。
実際にTOBが行われたチャートを見てみると・・・
このように株価がTOB買付け価格付近でほぼ一定の状態となっていることがわかりますね。
もし対象の株式を保有していた場合はこの近辺の価格で売却することができるというわけです。
TOBのメリットとは
TOBのメリットについてそれぞれの立場に分けて深掘りしてみましょう。
TOBにおける買い取り企業側のメリット
先ほど申し上げたように、買い取り企業側がTOBを行うメリットは「TOB対象企業の株式を短期間で計画的に集められる」という点です。
株式会社には発行済み株式数の取得割合に応じて、
- 33%以上の取得:重大な決定事項の拒否
- 50%以上の取得:役員の選任
- 66%以上の取得:会社の解散・合併
といった経営権を有することができ、上記のような関係性を築くためにTOBを活用することが多いです。
ちなみにこの取得割合によって
- 20%以上の取得:関係(関連)会社
- 50%以上の取得:子会社
と呼び名が変わることは覚えておきましょう(15%以上や40%以上の取得でも、実質的な影響力が大きいとみなされていれば上記のような呼び名になるケースもあります)。
株価も変動せず、計画的にTOB対象企業との関係性を構築できることは大きなメリットですね。
また、そもそも対象企業をTOBしたい理由があり、それを実現できることもメリットです。例えば、
- 対象企業の有用サービス
- 販売網やノウハウ
- 自社システムと併合してサービス強化
といったことで成長性が向上します。自社の企業価値の向上や、売上増加の可能性があるのもTOBの大きなメリットですね。
TOBにおける投資家側のメリット
投資家側のTOBメリットとしては「TOB対象企業が保有株だった場合、買い取り上乗せ分が利益となる」といったことが挙げられます。
例えば、100円の株価で保有していた銘柄がTOBの対象となり、50%上乗せされれば保有額の50%前後がそのまま利益となりますよね。
突然大きな値幅が手に入るわけですから、これはひとつのメリットだと考えられます。ちなみに、TOB対象の株式を売却するには
- 市場で売る
- 代理証券会社に売却
のどちらかになります。市場で売る場合はTOB価格を確認した上でその付近の価格で売るだけですが、市場売買の特性上どうしても多少のブレは生じます。
代理証券会社に売却する場合はTOB価格で売却できますが移管料が発生することがあります。
TOB買付けには上限が設けられていることがあるため市場でさっと売却する方が多いとは思いますが、一長一短ですのでお好きな方を選択すれば良いでしょう。
TOBのデメリットとは
TOBにはどんなデメリットがあるのかそれぞれの立場で見ていきましょう。
TOBにおける企業側のデメリット
TOBを仕掛ける買付け企業側のデメリットとしては
- TOB買い付けは市場価格より高く設定することが多い
- 投資家からの印象が悪くなる可能性あり
- TOB対象企業と敵対する可能性あり
ということが挙げられます。
TOBを発表したあとに必要数の買付け株を集めるためには、市場価格よりも高い買い付け価格を提示する必要があります。大量買い付けによる株価の変動リスクがなくなるものの、これはひとつのデメリットとも言えますね。
また、先ほどTOBでは成長性が向上する可能性があると述べましたが、もし投資家からの判断として「本当かなぁ?」と疑われた場合には投資家からの印象は悪くなります。
投資家が離れていけば当然、株価にも影響が出ますのでこれもデメリットとなり得ますよね。
最終的に本当に成長戦略として成功すれば投資家の評価も戻りますが、後でわかることでしょう。
また、TOB対象企業と買付け企業の間で交渉が成立しなかった場合は敵対してしまうことも考えられます。
これについては後述しますが、場合によっては対象企業側にTOB阻止の対策を取られたり、TOBそのものが不発に終わる可能性もあるということです。
TOBにおける投資家側のデメリット
投資家側のTOBデメリットとしては
- 保有タイミングよってはメリットが薄まる
- 買付け株数によっては保有株が上場廃止になる
ということが挙げられます。
TOBでは買付け価格が決められてしまうのでその近辺に株価が収束してしまいます。
したがってそれよりも下の価格で保有していた人にとってはメリットが大きいですが、それよりも上の価格で保有していた人はメリットが薄いでしょう。
例えばTOBの末に2019年3月上場廃止となったエナリス。
エナリスは上場時の高値が2500円ほどでしたが赤字続きで株価は低迷していました。
株価は400円辺りまで下がりましたが、業績回復基調により少しずつ株価も回復に向かっていたところ・・・KDDIと電源開発によるTOBが発表されたのです。
このときTOB価格は700円でしたから、底値付近で買った人のみ利益を得られる状況でした。
エナリスを信じて上場付近で買っていた人は全員含み損のまま。これはTOBのメリットが薄い代表的な例ですよね。
また、TOBにより議決権比率が
- KDDI:51%
- 電源開発:49%
となったため、エナリスは子会社化によって上場廃止という結末になりました。
したがってエナリスを保有していた投資家の多くは含み損ではなく確定損失を余儀なくされ、物議をかもす結果となりました。
このようにTOBは投資家からすると大きなメリットがある反面、保有タイミングやTOB取得株数によってデメリットが生じる可能性があるということです。
TOBにおける一部買い付けと全部買い付けの違いとは
TOBの実施パターンには
- 一部買付け:議決権向上を目的に行い、買い取り株数に上限を設ける(上場維持パターン)
- 全部買付け:完全子会社化を目的に行い、買い取り株数に上限を設けない(上場廃止パターン)
の2パターンがあります。
これらのパターンによって株価がTOB価格に収束するかどうかが変わるので注意が必要です。
具体的には買い取り上限を設けない全部買付けの場合はTOB価格にほぼ収束しますが、一部買付けの場合は予想収束株価や損益分岐点を考える必要があります。
これらを求める計算式としては
- 予想収束株価 = 発表前株価 +(TOB価格 - 発表前株価) × 予想買付け率
- 予想損益分岐点 = (TOB価格 × 予想買付け率) + {発表前株価 × (1-予想買付け率)}
などです。予想買付け率を自分で設定しなければなりませんが、こんな計算を行うことでTOB買い付け期間中の売買判断が行えます。
もし保有株がTOB対象となった場合には最初に一部買付けなのか全部買付けなのかを調べて下さい。
全部買い付けの場合は上場廃止となるのでどこかのタイミングで売却する必要があります。
友好的TOBと敵対的TOBとは
TOBは買付け企業とTOB対象企業の間で合意がなされている場合とそうでない場合があります。この違いによって
- 合意有り:友好的TOB
- 合意なし:敵対的TOB
という分け方がなされます。国内の事情としては友好的TOBが多いですが、時に敵対的TOBが勃発したり、交渉決裂により発展することがあります。
有名な敵対的TOBの例としては
- ライブドア ⇒ フジテレビ
- 伊藤忠商事 ⇒ デサント
などが印象的です。色々なケースがありますが、敵対的TOBになるとTOB対象企業側で
- ポイズンピル
- ホワイトナイト
などの対策を取ってくる可能性が高くなります。
ポイズンピルとは
敵対的TOBがしばらく進行した段階で既存株主に向けて新株を大量に発行し、希薄化を行うことを言います。これにより
- 買付け企業側の保有割合が減少
- 保有株式の価値も下がり損失出る
といった効果があります。もとの保有割合に戻すにはまた買付けを行わなければなりませんし、じわじわとダメージが膨らんでいくわけです。
敵対的TOBを阻止するための有名な手法ですが、既存株主にもダメージが大きく自社にも信用問題として降りかかってくるデメリットがあります。
ホワイトナイトとは
TOB対象企業の味方となってくれる第3者企業に買収を進めてもらうことを言います。敵対的TOBと並行して友好的TOBが進むことになるので、TOB価格のつり上がりが生じやすいです。
既存株主にとってはTOB価格がつりあがることで利益が増えますし、敵対的TOB対策にもなるので有効な手法ではあります。
しかしホワイトナイト(第3者企業)に対して新株を発行するケースでは、買付け企業だけでなく既存株主が保有する株式の価値も希薄化してしまうのでこれは良いパターンではありません。
TOBの注意点とは
TOBのニュースは買付け企業から正式発表される前にリークされてしまうことがあります。その場合は、
- 情報の信憑性
- 正式発表までのタイムラグ
に注意する必要です。
TOBのリークによって株価は大きく上昇しますが、もし間違った情報だった場合や正式発表までのタイムラグが長かった場合には株価が上昇前の水準に戻るでしょう。
TOBのリークに踊らされて保有していた場合には含み損を抱えることになりますので注意してください。
また、前述のエナリスのように「保有株が全部買付けのTOB対象となった場合」にはそれを拒否できないと考えた方が良いですね。
もしTOBに応じず保有株を売却しない場合には、株式併合などを活用しながら合法的に少数株主の持ち分を1株以下に減らされてしまうこともあるようです。
まとめ
いかがでしたか?今回はTOB(株式公開買付け)についてお話しました。
色々と難しい話でしたが、自分から飛び込んでいかなければそこまで関わることもないですし、
- TOBは期間・価格・買付け株数を決めて行われる
- TOBは子会社化など議決権比率を上げるために行う
- TOBには友好的なものと敵対的なものがある
- 敵対的TOBに発展した場合には保有株の価値が希薄化する可能性あり
- TOBには一部買付けと全部買付けがある
- 買付け方法にもよるが、TOB価格より安く保有していれば利益が生じやすい
- 一部買付けのTOBに参戦する際には収束価格などの計算が必要
といったことを抑えておけば良いでしょう。保有株が良い形でTOB対象となればラッキーですね。
関連記事には
がありますのでご参考ください。それではまた!