バリュー株とグロース株を複数の切り口とデータで比較してみた!

    

株の世界にはバリュー株とグロース株という分け方があります。

バリュー株は割安水準にあるもの、グロース株は割高になりがちだけど成長が著しいものですね。

両者は投資スタイルとしても、また資金流入先としても比較されやすい分け方なので聞いたことのある方も多いでしょう。

この記事では「バリュー株とグロース株の違いはどんなものなのか?」という内容を色々な角度から考えてみました。

切り口によって色々なことが考えられ、またメリットデメリットも様々です。バリュー株とグロース株どちらが良いのか最適解はないですが、ひとつの考え方としてご参考ください。

    

バリュー株とは

最初にバリュー株とグロース株の一般的な意味合いや特徴について述べていきます。

まずバリュー株とは「企業が持っている資産や業績などを考慮して価値を算出した際に割安だと感じられる銘柄」を指すことが多いです。

例えば代表的な株価指標であるPERとPBRを例に考えた場合、

  1. PERが長らく一桁台から15倍程度に収まっている
  2. PBRが1.0倍を割り込んでいる

といった銘柄はバリュー株と呼べるのではないでしょうか。

本来の価値よりも低くなっている銘柄を安いままの状態で買うという投資行動がバリュー株の醍醐味でありメリットでもあります。ただし、本来の価値よりも低くなっている銘柄というのはそれなりの理由があるというケースも少なくありません。

例えば業績が下火になっていることを受けて株価が将来的な減収減益を織り込みに行っている可能性もありますよね。そういった場合では現状が割安でも将来的に適正価格になってしまうことも考えられるので注意が必要です。

ただ、業績も地道に伸ばしていて財務面も問題ないような企業もバリュー株の中にはあります。そういった場合は単純に知名度が低くて人気がないと考えて「どこかのタイミングで見直し買いが入り適正価格に戻るだろう」という戦略を取りたいわけです。

バリュー株投資ではこういった見直し買いでキャピタルゲインを狙う考え方に並行して、配当や優待によってインカムゲインを稼いでいく考え方があります。

株価が割安になっているということは相対的な利回りは高くなりやすいので、見直し買いを気長に待ちつつも資金効率良くインカムゲインが頂けるわけですね。

グロース株とは

一方、グロース株とはどのような戦略なのでしょうか。

一般にグロース株とは「業績伸び率がずば抜けて良く時流にも合っているような成長著しい企業」を言います。時流に合っているという点はマストではないですが、兼ね備えていた方が業績も向上しやすいのは確かでしょう。

グロース株は業績面が良いという側面があるので単純に人気化しやすく、特集記事などでも取り上げられやすいので知名度も高い特徴があります。しかし、その影響で株価が現状の価値を大きく超えて上がっていく現象が度々見られ、

  1. PERが50倍や100倍を軽く超えてくる
  2. PBRも数十倍と通常ではありえない水準になる

という側面もありますね。

いわば高い株を買ってさらに高く売るという投資行動になっていて利益の源泉はキャピタルゲインです。企業側としても高い成長を維持するために将来への先行投資を惜しまない傾向が高く、配当や優待といったインカムゲインにはあまりお金を回しません。

株価が高いかどうかはあまり気にせず、さらに株価が上がりそうなものを狙って買っていく面が強いのでキャピタルゲインが命です。

バリュー株とグロース株の違いとは

ではそんなバリュー株とグロース株の違いとはどのようなものか色々な角度から考えてみましょう。

時間軸と人気

まず両者の大きな違いは時間軸があると思います。

バリュー株は前述のように「インカムゲインを得ながら見直し買いを狙う」というスタイルですが、グロース株は「とにかくキャピタルゲインを狙う」というスタイルです。

したがって前者は時間軸を長く取りやすく、後者は短く取るというケースが多くなるでしょう。言い換えるなら投資と投機といった違いがあって、グロース株は人気があるからこそ需給が良く投機も成り立つわけですよね。

需給が良いということは

  1. ホルダーさんの入れ替わりが激しい
  2. 何かあれば躊躇なく売ってくる

といったホルダーさんの質にもつながってくるので、それがまた長く持ちづらい理由にもなってしまうのかなと考えます。

ただ、個人的には売られてもまた戻るというくらい人気が高いのがグロース株とも考えているので、またそこで買って短期的に値幅を取ることもありですね。

資金量

前述のようにバリュー株とグロース株には人気度合いに大きな違いがあります。おそらくバリュー株よりグロース株の方が人気が高く、これは株価の大きさにも表れやすいでしょう。

具体的にはグロース株ほど株価が大きくなりがちで一回あたりの売買に使う資金量も大きくなります。一方でバリュー株は比較的株価が小さいので少ない資金量で細かく買いやすいと思います。

そしてこれがまた

  1. 大きく入れて短く抜く投機
  2. 色々な銘柄に細かく長く入れる投資

ということにもつながってしまうのではないでしょうか。

ちなみにグロース株は株価が大きくなると株式分割を行って、しばらくすると東証一部に昇格するという傾向もありますね。一部昇格後は達成感から少し売られて、そしてまた盛り返すというのもあるあるでしょう。

時価総額と市場

バリュー株とグロース株の違いは市場や時価総額から見出せるケースもあります。例えば

  1. 業績伸び率が良いグロース株は企業としてまだまだこれから
  2. 業績伸び率がまちまちなバリュー株は企業としてある程度成長してきた

とするならば前者は時価総額が小さく、後者は時価総額がそれなりに大きくなっている可能性は高いですよね。

実際にグロース株には小型株が、バリュー株には中大型株が多いと思います。また、時価総額が小さくて成長が著しい銘柄はマザーズやJASDAQに上場しているケースも多いでしょう。そしてそういった企業が前述のように株式分割などを行って株主数を増やし、一部昇格を行うわけですね。

一部昇格後も成長が続いた企業は段々と株主還元にもシフトしていき、段々と株価指標も適正水準になり・・・という流れもあるかもしれません。

資金の流れ

バリュー株とグロース株は

  1. 今はグロース株のターンだね
  2. 最近はバリュー株が優勢だね

なんて言われ方をすることも多いです。

これは資金流入がどちらに起きているのかということを述べるもので、個人的なイメージとしては

  1. まず人気者が多いグロース株に資金が流れる(上流)
  2. ある程度上がるとバリュー株が注目され始める(下流)
  3. 上記の流れを何度か繰り返すと相場全体が落ち込みリスクオフへ
  4. 再びリスクオンになると同時に最初に戻る

といった流れですね。

個人投資家が悲鳴を上げるのはグロースが売り込まれてマザーズが落ちる瞬間で、大型株が上がる(すなわち日経平均などが上がる?)時期は

  1. 日経平均が調子良いのに恩恵がない!
  2. 機関投資家や上流国民ばかり得している!
  3. インチキ相場だ!

など言われる傾向があります。

個人に人気がある銘柄ばかり持っていればそりゃ日経平均が上がってマザーズが下がれば苦しくなりやすいわけで、それが嫌なら配当や優待を狙えるような中大型バリュー株も長期的に持てば良いのではないでしょうか。

話が少し脱線しましたが、バリュー株とグロース株の違いにはこういった資金流入タイミングもあると思います。

割安株と成長株どっちが良いの?

ここまでバリュー株とグロース株について違いを述べてきましたが、結局のところどっちが良いのかわからなくなったという方もいらっしゃるかもしれません。

これに関しては前述の通り一長一短かつ求める要素によって違ってくるので正解はないかと思います。

成長株が見せてくれる短期的な株価上昇劇は惚れ惚れしますし、全然株価が動かない割安株だからこそ安心して持っていられるという側面もあるわけですからね。

ただ、ここで言いたいのはたまには隣の芝生を見ても良いのではないかということです。

例えばグロース株しか興味がないよという方にお聞きしますが、TOPIXと比較した場合の長期的なリターンではバリュー株とグロース株どちらの方が大きいと思いますか?

この点を端的に表してくれる指標にラッセル野村のバリュー総合とグロース総合というインデックスがあり、これらは新興市場を含む東証の全銘柄を対象にスタイル別や規模別に区分した上で値動きを表したものです。

まずバリュー総合(配当込み)をTOPIXと比較してみると・・・

野村バリューインデックス

引用:マイインデックス

このように長期的にTOPIXのパフォーマンスを上回っています。一方でグロース総合では・・・

ラッセル野村グロースインデックス

このように長期的にTOPIXを下回っていることがわかります。

誤解のないように述べておきますが、

  1. 特定の個別銘柄とTOPIXで比較すればまた違う結果になる
  2. ある年のある時期だけというように切り取ってくる期間によっても違う

という可能性はあるでしょう。しかし、長期的かつ平均的なリターンとしてインデックスを比較した場合には上記のようなグラフになっているわけです。

このリターンの差がインカムゲインの差なのか、値動きの激しさやホルダーの質なのかはわかりません。

でもこれをふまえると、例えばPBRが低くて業績や財務に問題がないような銘柄を長期分散保有していくのも悪くない気がしませんか?

自分でグロースしか興味ないと考えているとこういった情報すら目にできないですが、たまにはバリュー株について調べてみても良いと思います。

バリュー株の場合は長く持ってなんぼなので出来る人とそうでない人がいるとは思いますが、いつもは使わないPBR1.0倍以下というスクリーニング条件からお宝銘柄が見つかるかもしれませんよ。

まとめ

今回はバリュー株とグロース株の違いとはどのようなものがあるか考えてみました。

その人の考え方によってどちらを狙うのかは大きく変わってくるとは思いますが、いずれにせよ自分が狙う銘柄にはどういった特徴があるか一度考えてみた方が良いでしょう。

例えば小型グロース株は人気が高く株価が伸びやすい一方で落ちる時は早いです。そういったことを考えずに信用取引を行っては危険ですし、出口戦略で焦ることになります。

時期によってどちらが優勢になるかも違いますので、たまには自分の趣味ではない銘柄を調べてみることも良いですね。