どうも、ひげづら(@higedura24)です。
株式投資の世界では株主還元策として自社株買いが実施されます。
自社株買いとは「企業が自分の会社の株を買って投資家が持っている株の相対価値を引き上げること」です。
これは市場に出回っている1株あたりの価値を濃くしているわけですが、実はこの効果はないと言われているようなんです。
今回はその根拠を示した文献を紹介し、ちょっとした考察を述べてみたいと思います。
正直言って私もかなり驚きました。
自社株買いの効果は短期プラスかつ長期マイナス
今回ご紹介したい文献は
という論文で、2008年に神戸大学大学院博士課程で書かれたもののようです。
要約に書かれているように、通常であれば自社株買いは
- 株価の長期パフォーマンスを向上させる効果がある
- 企業が現状の株価を割安と感じている時に行われる傾向あり
と言われています。
私もそのように記憶していましたし、実際に自社株買いの材料で買うこともありました。
正直、体感的には自社株買いは割と良い方の材料だと認識しているのでリターンもそれなりに期待できる印象があります。
ただ、上記の論文の結論では「日本株においては長期的な効果が有意にマイナスであった」という記述です。
以下、論文の興味深いと感じた点をご紹介します。
短期的な効果は有意にプラス
この論文では2001年10月~2002年7月の自社株買いアナウンスを調査しています。
特に2002年5月の比重が大きいようですが、セクターは特段偏ってはいません。
このサンプル企業において、自社株買いアナウンスの前後11日間における効果を調べたところ・・・
このように有意にプラスだったと書かれています。
長期的な効果は有意にマイナス
しかし、短期的にプラスな効果でも、時間が経過するとマイナスになると書かれていました。
上図ではアナウンスから35日経過すると大きくマイナスになっていて、統計的にも有意だと判定されているようです。
企業は株価を割安と思って買っていない
この論文では参考文献を加味し、複数制度における自社株買いの違いにも触れています。
簡潔に言えば機動的に実施できる自社株買いとそうでないものがあるので、企業がこれらを使い分けている可能性を検証していました。
また、その使い分けは「自社の株価が過小評価(割安)な水準であるかどうか」と書かれています。
この記述は自社株買いの一般的なイメージ通りですが、結果的にはどちらの制度でも長期的なマイナス効果に変わりはなかったそうです。
また、企業規模(おそらく時価総額)別のサブサンプルでは小規模企業ほどマイナスが大きく、長期的なマイナス効果の源泉は小型株であると書かれていました。
検証期間の地合いはどうなのか
この論文を読んでまず感じたことは「検証期間の地合いはどのようなものだったのかな?」ということです。
そこで日経平均株価の2001年~2005年くらいまでの推移を見てみると・・・
赤枠で囲った自社株買いアナウンス期間はむしろ上げ基調で、長期的に見ても高値更新となっていました。
これって結構驚きの状況で、地合いが良くても自社株買いアナウンスの企業は軟調だったということですよね。
普通であれば地合いとともに上がってもおかしくなさそうですが、マイナスのパフォーマンスとは。
セクターも時価総額も考慮しているとのことですが、自社株買いを根拠に資産株を買うのは良くないのかもしれませんね。
文献も検証期間もかなり前なので現状もこの傾向があるとは限りませんが、自社株買いに対するイメージは少し変えた方がよさそうです。
しかも米国株は良くて日本株はダメみたいなので、余計に悲しくなりました。
日本株は何かあると途端に地合いが不安定になりますし、戻しも米国株より弱いのが現状です。
おまけに株主還元策がこんな結果では・・・ほんとに買うのやめようかなと思いました。
ただ、短期的な効果は有意にプラスとも書かれていましたので、投機面では色々と活用できる可能性があります。
また、むしろ長期的にマイナスなのであれば空売り・・・いや、それはやめときましょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は自社株買いに関する興味深い文献を見つけたので思わずシェアしてしまいました。
ご紹介した論文では自社株買いの効果は短期プラスで長期マイナスとのことです。
検証期間が限られているので今までの自社株買い実施効果全てがそういうわけではないでしょうが、個人的には非常に勉強になりました。
少し自社株買い材料を見る目が変わったので、今後は長期的な推移に注目していこうかなと思います。
関連記事には
がありますのでご参考ください。それではまた!