海運株が下落した時に理由を知りたいという方は多いようです。そこで今回は海運株の下落理由について述べていきます。
ただ、一応断っておくとあくまでこういった要因で落ちたことがあるという話ではありますね。当たり前ですが、今後思いもよらない理由で海運株が下落する可能性もあるでしょう。
とはいえ過去の経験を知見として蓄積していくことはとても大事ですので、ぜひ今後の参考にしてみてくださいね。
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海運株の下落理由として考えられる4つの要因
では早速ですが海運株の下落理由として考えられる4つの要因について述べていきます。今回お話しするのは
- バルチック海運指数や中国コンテナ運賃指数などの市況
- 長期上昇による利食い売り
- 配当利回りへの期待感
- 船舶需要による将来懸念
の4つで、配当利回り以外の下落要因はかなり前から述べられることが多いものですね。ではひとつずつ見ていきましょう。
バルチック海運指数(BDI)や中国コンテナ運賃指数(CCFI)の下落
海運株の収益源のひとつに運賃があります。海運株は船を使って物資や資源などを運ぶ運送業ですので、その対価として運賃をもらうわけです。
運賃推移を教えてくれる代表的な指数に
- バルチック海運指数(BDI):イギリスやヨーロッパ付近の運賃状況
- 中国コンテナ運賃指数(CCFI):中国発のコンテナ運賃状況
があり、時期によってどちらが重視されるかが変わるもののこれらはよく投資家から見られています。
当然ながらこういった運賃指数が上がれば収益は増えますし、逆に下がれば収益も下がってしまうというのが根本的な考え方で株価もこれに追随しやすいでしょう。
ちなみに私は海運業の関係者ではないので本当の所はわかりませんが、例え海運を本業とする方に「運賃指数と最終的な業績は全く関係しないよ」と言われたとしても株式市場の常識が上記なので基本的にはこれが値動きを決める大きな要因となります。
日本株の参加者には投機勢が多いのでちょっとでも悪いニュースがあれば売られますが、これは海運株も例外ではありません。バルチック海運指数や中国コンテナ運賃指数が急落したとなれば、例え歴史的な高水準であっても急落すれば十分な下落理由となってしまいます。
上昇を長いこと続けたあとに生じる大きな利食い売り
海運株はコロナショックから間もなくして一気に人気セクターに躍り出ました。株式市場では人気がある株ほど高く買われて株価が上がる傾向にあります。海運株も昔の不人気ぶりからは考えられないほど人気になったので当然ながら株価も大きく上がったわけです。
しかし重要な点は海運株に飛びついた多くの資金が短期的な目線であるということでしょう。つまり長期保有を目的とした買いより短期間で売り買いを繰り返して効率良く儲けてやろうという考えの人ばかりがこびりついている状況です。
短期売買の資金は逃げ足が速い性質がありますので、そういった状況で
- バルチック海運指数や中国コンテナ運賃指数が下がる
- 将来を不安視するニュースが出る
といったことが起きると躊躇なく売られてしまいます。
こういった長く上げ続けた株ほど売られ始めると速いという流れは海運株に限ったことではありませんが、それでも海運株は全員参加型の大相場だったためすごい早さでしたね。みんな含み益を持っている状況でちょっとした急落がくると「これ以上利益が減るのはごめんだ」と言わんばかりに利食い売りが出始めるのも無理はありません。
株の世界では買いよりも売りのスピードが速いことが知られていて、実際に海運株は売り始めから1週間ちょっとで40%も下落してしまったわけです。
ですから海運株に過熱感がある状況ではバルチック海運指数や中国コンテナ運賃指数が日々どういった推移をしているかは確認必須で、少しでも売られ始めたら逃げた方が良いでしょうね。
配当利回りの期待に応えられず
海運株の人気が絶好調になった理由は業績です。特に最後のひと上げに貢献したのが好業績を背景にした増配でした。なんと配当利回りが10%になるほどの大幅増配で、株式市場の話題性としてはかなり大きかったです。
しかし、逆に言えばこの配当利回りに対して市場から過度な期待感が出てしまったという状況でもありましたよね。というのも配当性向などから勘案するとさらなる増配が期待できるのではという意見が出てしまい、結果的にはその後の決算で期待に応えられず下落理由となってしまったからです。
成長株もそうですが市場から過度な期待感が出てしまうと、逆にそれが下落理由になりかねないので注意しなくてはなりません。
今後の船舶需給によって先行き不透明感が出る可能性あり
最後に海運株の長期的な需給要因として大きな船舶需給について簡単に述べます。冒頭で運賃状況が下落要因となると述べましたが、あれは短期的な需給要因です。それに対し船舶需給は比較的長いスパンの要因となるでしょう。
船舶は海運株の大事な仕事道具のひとつで、その造船にはかなりの時間を要します。海運業は数年先の市況を読む必要があると言われるのはこのためで、将来的な市況観を先読みした造船発注が求められるようです。
リしかしーマンショックの前にはこれがうまくいかず、景気に対する先行き不透明感が続く中での船舶供給過剰に陥りました。そしてこれを背景に海運市況の低迷期が続いたという流れですね。
このことから昨今では新規造船発注が抑制されていたようですが、逆にコロナ窩の海運需要では船舶供給が追いついていませんでした(運賃上昇の要因)。
しかし、ここからは再び造船発注が増加すると予想され段々と供給過剰になる可能性はあるでしょう。特にコンテナ船は将来的な需給悪化が予想されていて、徐々にコンテナ運賃指数に影響する可能性があります。また、その流れが浮き彫りになれば海運株の本格的な下落理由にもなりかねません。
まとめ
今回は海運株の下落要因について述べてみました。一般的にはBDIやCCFIのような運賃指数が下落要因として挙げられることが多いですが、コロナ窩では短期勢の利食いや配当利回りをめぐる期待感などもそのひとつとなりました。
今後は船舶需給など長期的な要因が運賃指数などに影響し、それに伴って株価も動くと予想されます。将来の値動きは誰にも読めず、投資家としては市況に関するレポートや運賃指数の状況を把握しながら値動きを追うことしかできません。
とはいえ海運株がどういった要因で下落するのか過去の知見から考えることでひらめきもあるかもしれませんので、ぜひ何かの参考にしてみてはいかがでしょうか。
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