株の世界には買い戻しという言葉があり、これは空売り決済という意味合いでよく使われているものです。
一般的に信用売り残がどれくらいあるか、また信用倍率が1.0以下で推移しているかなどで買い戻しエネルギーは推測されます。ただ、厳密に言うとこれは個人投資家が主体になっているので、機関投資家側からの買い戻し余力は日証協の貸付残高などで考える必要があるでしょう。
この記事では日証協や貸借取引状況などの簡単な説明、そして空売りの買い戻しによる株価上昇について述べました。正直、このあたりのお話は非常にわかりづらく私自身も全てを理解しているとは言えません。
ですが、なんとなくの意味合いはお伝えできるかと思いますので、ぜひ導入部分の参考にしてみて下さい。
日証協(日本証券業協会)とは
まず日証協についてですが、これは日本証券業協会の略名です。日証協の主な概要は
- 全国の証券会社を構成員として1973年7月に設立された
- 内閣総理大臣の認可を受けた金融商品取引業協会である
- 会員には証券会社などが所属、それらに株を貸し付けている
参考:日証協公式HP
といった感じですね。めちゃ簡単に言えば証券会社に株を貸し付ける組織で、
- 貸し付けられた株は証券会社自身が空売りを行う
- 後述する貸借取引残高は将来の買い圧力
となる可能性があります。
株券等貸借週末取引残高とは
日証協では会員である証券会社に貸し付けを行うわけですが、これは貸借取引と言います。ちなみに読み方は「たいしゃくとりひき」ですね。
また、これらの取引状況は毎週木曜日(第4営業日)に
- 新規成約高
- 株券等貸借残高
を全体および銘柄別に発表しています。稀に耳にする株券等貸借週末取引残高とは上記にある「週末時点での貸借残高」のことですね。ただし、この中には後述する日証金の貸借残高である制度信用取引は含まれていません。
日証協と日証金の違い
日証協という証券会社に株券などを貸す組織があり、借りた株は証券会社自身が空売りすると述べました。
その一方で、似たような名前の組織に日証金(日本証券金融)というものがあります。
日証金も日証協と同じく株もしくは資金を証券会社に貸し付ける目的で存在している組織ですが、こちらは社団法人などではなく時価総額500億円ほどの東証一部上場企業です。
したがって日証協より規模が小さく、貸し付けている株数も東証の信用売残に満たないようなレベルというケースが多いでしょう。
また、日証金から証券会社に貸し出された株は「個人投資家の制度信用取引」に活用されていますので、ここは日証金と日証協の大きな違いですね。
日証金が発表している貸借取引残高とは証券会社向けに貸し出されている株の残高であり、一般的には制度信用の残高と考えて良いでしょう。
日証金の貸株残高を見るだけであれば・・・
このように証券会社のツールで市況情報を見れば、信用売り残などと一緒に簡単にチェックできます。
日証協と日証金と東証のイメージ
ここまでの話をまとめると、とりあえず買い戻し余力のイメージとしては
- 一番大きい:日証協の貸付残高(証券会社主体)
- 二番目に大きい:東証の信用売り残(個人主体)
- 三番目に大きい:日証金の信用売り残(個人主体?)
といった感じでしょうか。ちなみに日証金の残高は制度信用のみに関するものですが、東証の残高には一般と制度両方合わさっていると思います。
最も大きな存在である日証協の売り残高は
- 根本的な出所は構成員である保険会社や信託銀行
- 最終的な売り使用者は会員のヘッジファンドや外資系企業
という流れですので、ヘッジファンドや外国人投資家のアクティブに売買をしてくる性質からも市場に与える影響が大きそうだと感じますよね。
空売りの買い戻しは日証協の貸付残高までチェックする
色々と述べてきましたが、最終的に何が言いたいのかというと「空売りの買い戻し余力は東証だけでなく日証協の貸付残高まで確認しないと不十分」ということです。
残高に明記される株数の大きさを考えても見逃せないものですし、東証と日証協の方向感が異なっているかもわかりません。
仮に東証の信用買い残が多く買い長でも、日証協がとてつもなく大きな信用売り残で売り長になっていたら買い戻し余力の方が大きいと推察できます。
個人と機関投資家の方向感があっているか、そしてその合算が相対的に大きなものかを確認するためにも両方チェックしておきたいですね。
貸付残高を調べる方法
では肝心の日証協の貸付残高を調べる方法ですが、これは空売りネットというサイトを活用している方が多く・・・
このように東証・日証協・日証金の売り残や貸付残高がまとめられています。
主にチェックするのは東証と日証協の残高で、このふたつを合算したものが買い戻しエネルギーとして期待できるものでしょう。
これらの大きさと該当銘柄の日々の出来高平均を比較した時、圧倒的に売り長になっているという場合は踏み上げ相場が期待できます。ちなみに比較に使う出来高平均は25日や50日出来高移動平均線を活用すれば良いです。出来高移動平均線はスマホでは表示できないかもしれませんが、証券会社が提供している無料PCツールなどで見ることができますよ。
また、踏み上げ相場ということは大きな買い戻しエネルギーを持ったまま株価が上昇する必要があるので、こういった需給面と株価推移をバランス良く見なければなりませんね。
買い戻し圧力を考える際の注意点
ここまで述べてきたように、個別銘柄の買い戻しエネルギーを考える際に日証協までチェックした方が良いというのは間違いありません。
ただし、注意したいのは「完全に実態を掴んでいるものではなくあくまで目安という位置づけ」という点です。
というのも日証協で貸し付けられた株が本当に空売りされているかも、異なる証券会社間でやりとりされているかもわからないからです。このあたりのお話は私たち個人投資家ではどうなっているか検討もつかず、あくまで知識的な観点で考えるしかないですよね。
仮に日証協の貸付残高に
- 借りただけで実際に市場に放出されていない
- 証券会社間のやりとりもカウントされる
というパターンがあるのであれば、貸付残高と同じだけの買い戻しは起こらないわけです。
そう考えると、日証協の貸付残高は買い戻しや踏み上げを考える上で重要な位置づけですがあくまで目安と考える方が妥当でしょう。
まとめ
今回は日証協の概要や貸付残高が意味すること、そして日証金との違いや東証を含めそれぞれの立ち位置について述べました。
買い戻しエネルギーをより実態に近い状況でチェックするのであれば日証協の貸付残高は欠かせないものです。あくまで目安という側面はあるものの、個別銘柄の需給状況を知る上で大切なものなので覚えておきましょう。
また、信用売り残があるから良いというわけではなく「買い戻し余力がある状態で株価が継続的に上がるから良い」ということも忘れてはいけません。
そもそも株価が上がらなければ踏み上げなど起こらないですし、短期的な上げはむしろ売り増しされるかもしれません。株価推移と需給状況がかみ合わないと踏み上げ相場は起こらないので気をつけましょう。
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