どうも、ひげづら(@higedura24)です。
株式投資を行っていると「新株予約権の発行」という材料を見かけることがあります。
新株予約権は悪材料として取られることが多く、市場ではあまり好感されません。
これは1株あたりの価値が希薄化することが大きな原因であり、既存株主にとっては資産価値に影響する内容です。
しかし、企業側にとってもなんの理由もなく新株予約権を発行することはなく、その目的も様々なものがあります。
そこでこの記事では
- 新株予約権発行の概要と目的
- 社内向けと社外向けの違い
- 行使価格修正条項付きとは何か
- TOBとの関連性
についてご紹介しました。
新株予約権の発行はよく聞くお話なので、ぜひご参考下さい。
新株予約権の発行と株価への影響
新株予約権とは「行使することで新株を得ることができる権利」のことです。
権利者が新株を得るためには行使価格を支払う必要があり、支払われたお金が企業の資金となります。
新株予約権の発行には
- ストックオプション
- 資金調達
- 無償割り当て
- 公正・有利発行
の4つがあり、どの属性を持っているかによって社内向けの新株発行なのか、社外向けなのかが決まってきます。
ストックオプション
まずストックオプションについてですが、これはIPOを予定している企業の役員や従業員が新株を得るというケースです。
ゆえに社内向けの新株予約権発行と考えられ、流れとしては
- 割安価格で自社株を与える
- 受け取り期間を数年先に設ける
- 自社内で仕事を頑張り、業績を上げれば自社の株価が上がる
- 受け取り期間に株価が上がっていれば、ディスカウント価格にプラスして利益が発生する
というものが挙げられます。
自分の頑張りが自社の株価を通してそのまま返ってくることがポイントで、
- 社内モチベーションの上昇
- 業績アップの実需
- 社員のインセンティブ
といったメリットが社内にはあるでしょう。
また、ストックオプション期間が残存している間は自社から退職することを食い止められるので、重要役員をつなぎ止めるような役割もあるかもしれません。
しかし市場側からすると、「インセンティブを得るための多少の売り圧力が将来的にやってくる可能性がある」というデメリットがあります。
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資金調達
新株予約権の発行は単純に大きな資金を調達するためだけに、社外向けの施策として行われることもあります。
例えば有利子負債の返済が滞りそうなケースや、自己資本比率を上げたいときに執行されることがあるでしょう。
新株予約権の発行で資金調達するメリットは「返済義務がないこと」です。
有利子負債は利子をつけて返済する義務がありますし、社債も同様に将来的な返済義務が生じますよね。
一方で株主からの資金は返済義務がなく、しかも一時的に大きな資金が手に入る特徴があります。
使用用途も企業側の裁量で決められるので、もし新株予約権の発行がうまくいけば色々な活路が見いだせるのがポイントでしょう。
また、新株予約権を受けた側としても行使時の株価から大体8~10%前後のディスカウント価格で新株を受け取ることができます。
ただし、
- 想定した金額より少ない資金調達になる可能性あり
- 既存株主にとっては1株あたりの価値が希薄化する
といったデメリットがあることがポイントです。
特に株式の希薄化は市場から敬遠される要素なので、株価下落要因となりやすいでしょう。
無償割り当て
新株予約権の発行は、大規模増資に伴う既存株主の資産価値を担保する目的で行われることもあります。
増資は株式の希薄化を伴うので、株価が大きく下がりやすいです。
そういったケースでは無償で既存株主に新株を発行して、株式資産の価値が減ることを防ぎます。
これは会社法施行に伴って導入されたシステムで、株式分割とは
- 別の種類の株式を交付できる
- 自己株式を株主に交付できる
という点で区別されています。
公正発行・有利発行
公正発行とは新株予約権を公正な価格で発行するもので、有利発行とは特に低い価格で第三者に割り当てることを言います。
特に有利発行は株式の希薄化効果があるため、株主総会での決議が必要です。
取締役はなぜ有利な価格で新株発行をするのか明確な理由を説明する必要があり、既存株主の利益を保護するような配慮が必要と言われています。
有利発行は会社にとって利益となる相手に対して発行し、関係性を構築する目的があるでしょう。
行使価格修正条項付き新株予約権とは
新株予約権の発行においては、
- 行使価格修正条項:ディスカウント価格で新株を与える
- 行使期間の停止条項:行使期間の停止と再開を企業側が行える
といったものが付随されていることが多いです。
ディスカウント価格で新株をもらえれば、割当先となった銀行や証券会社にメリットがあるだけでなく、希薄化の影響を抑えられるという側面もあります。
また、行使期間を企業が判断できることで
- 市場の状況を加味しつつ新株発行を行える
- 既存株主の利益阻害を抑えられる
というメリットが生まれます。
特に時価総額が小さく、流動性が乏しいケースでは大きな株価下落を可能な限り避けられるはずです。
ちなみに、新株予約権の行使期間は「新株予約券行使における課税免除(一部免除)」を目的に2~5年前後に設定されることが多いでしょう。
公募増資をしない理由とは
ところで資金調達をしたいのであれば、なぜ公募増資などを行わないのでしょうか?
根回しも必要なく、新株予約権の発行より手っ取り早いような気もします。
これは想像ですが、公募しても割当先が見つからないと企業側が考えているからではないでしょうか。
資金繰りに苦しむくらいですから、将来的な不安が強い企業だと思います。
そんな企業の公募増資に応募する投資家も少ないと思うので、最初から新株予約権の発行をディスカウント価格で行っているのでしょう。
もし公募増資があったとしても必要な金額を調達できない可能性もあるので、新株予約権を発行した方がメリットが大きいのかもしれませんね。
敵対的TOBで新株発行されるケースも
新株予約権の発行のイレギュラーなパターンはTOBとの絡みです。
TOBとは株式公開買い付けのことで、企業間の意志が合わない場合には敵対的TOBという状況になります。
TOBの具体的な内容は「TOB先の発行済み株式を一定割合以上取得すること」で、敵対的TOBでは買収される側がそれを阻止する必要がありますよね。
その阻止方法として挙がるのは新株予約権の発行で、こういった目的で発行することを「ポイズンピル」と言います。
「poison(ポイズン)」は毒という意味ですが、これは
- 敵対的TOBを行った企業
- 新株予約権の発行を行った側
の双方にデメリットがあることを意味しているのでしょう。
なぜなら、新株予約権の発行によって株式の希薄化が起こるので
- TOB先の株式をある程度買い進めていたのに、大幅にその資産価値が目減りした
- 既存株主の資産価値も同様に減り、信用問題に関わる
といったことが起こりうるからです。
ポイズンピルの手順としては、
- 友好関係にある企業に新株予約権を発行しておく
- 敵対先にある程度の株式が取得されたら権利を行使してもらう
といったものが挙げられると思います。
双方が傷を負いやすいですが、成功すれば敵対的TOBを阻止できるでしょう。
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まとめ
いかがでしたか?今回は新株予約権の発行について簡単にご説明しました。
用途には色々なものがありますが、社内向けと社外向けのケースがあります。
また、既存株主の資産価値が希薄化することが市場に好まれない理由で、その対策として行使価格修正条項と行使期間の停止条項があるのでしょう。
敵対的TOBとの関連性も強く、場合によってはTOB先の売買で儲かるケースもあります。
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がありますのでご参考ください。それではまた!