投資家が株式を購入する理由はただ貯金をするより大きくお金を増やせるからですよね。同様に、国債や保険商品などを使ってお金を増やさないのはより大きく増やしたいからでしょう。
株式のリスクプレミアムとはこういった考え方によってできた概念であり、投資をする上で最初に考えたい内容です。この記事では
- 株式のリスクプレミアムとは何か
- 大体何%くらいだと考えられているのか
- 国による違いはあるのか
- 無リスク資産の基準となるものは何か
- 正確にリスクプレミアムを計算する方法はあるか
などをまとめましたので、参考程度に読んでみて下さい。
<関連記事>
株式市場のリスクプレミアムとは
株式におけるリスクプレミアムとは「リスクを取ることでどれだけのリターンを期待するのか」というもので、平たく言えば株式投資を行うメリットそのものです。
例えば、Aさんが100万円を持っていたとします。
Aさんはこの100万円で投資をして200万円にしたいと考え、次のふたつから投資先を選ぶことにしました。
- 無リスクで年率3%の商品
- 有リスクで年率3%の商品
さて、あなたならどちらを選びますか?
おそらく誰もが1番目の商品を選ぶはずで、その理由はリスクを取っても取らなくても同じリターンだからですよね。
リスクを取るメリットが全くないわけですから、当然リスクがない商品で同じ効果を得たいと思うのは当たり前でしょう。
しかし、これが
- 無リスクで年率2%の商品
- 有リスクで年率7%の商品
という選択肢であれば話は違ってきます。
リスクを取る分だけリターンは上がっていて、単純な引き算ではその差が5%です。
この時の5%の差こそがリスクプレミアムと呼ばれるもので、リスクを取ることでどれくらいリターンが上がるかを指しています。
特に多くの株式で構成されるベンチマークを用いた場合はエクイティリスクプレミアムと呼び、マーケット全体のリスクプレミアムを指します。
また、無リスク資産は「リスクフリーレート」と呼ばれ、日本のリスクフリーレートとして引き合いに出されるのは10年国債が一般的です。
反対にリスク資産として引き合いに出されるのは株式や不動産が多いでしょう。
割引率とは
私たち個人投資家は、無リスク資産として引き合いに出される国債を継続的に買うことで金利分のリターンを確実に得ることができます。
個人の考え方によってはリスク無しで確実なリターンを得られることに魅力を感じ、株式など不確実な要素を持つリスク資産に見向きもしないでしょう。
ただし、前述のようにリスクプレミアムが上がるほど株式にも魅力が出てくるわけです。
こういった
- リスクフリーレート:投資家がここまでは最低でも欲しいリターン
- リスクプレミアム:リスクによって生じるリターン
を併せて「割引率」と呼び、要は
- リスクによってどれくらいリターンが上乗せされれば魅力的ですか?
- リスク資産がどれくらい割り引かれれば魅力的ですか?
という考え方になります。
割引率で重要なのは不確実性のあるリスクプレミアムの部分ですが、ここは自分なりに考える必要がありますね。
PERとの関係と計算式
株式における益回りは「PERの逆数」であるため、
- リスクプレミアムが拡大するとPERは低下
- リスクプレミアムが縮小するとPERは上昇
という関係があります。
常識的に考えても
- 株式市場に不安材料が多いほど雰囲気が悪く株価が軟調
- 株価が下がればPERも下がる
- 市場リスクが大きいほどそれに見合ったリターンを求める
はずなので、PERが下がることとリスクプレミアムが上昇することは連動性がありそうですね。
ちなみに、株式投資のレポートでも
- 10年国債利回り
- 日経平均株価のPER
を使ってリスクプレミアム拡大の影響を説明しているものがあります。
外部参照リンク:三井住友アセットマネジメント|日経平均株価のPERとリスクプレミアム
上記のレポートでは
- PER:12.98倍
- 10年国債利回り:0.035%
という条件から
- 益回り= 1 ÷ 12.98 × 100 = 7.7%
- リスクプレミアム = 7.7% - 0.035% = 7.665%
と計算しています。
また、ここからリスクプレミアムが拡大した場合に
- 益回りやPERがどう変化するか
- それによって日経平均株価がどうなるか
も推定しているようです。
このようにリスクプレミアムの計算方法や考え方は色々なものがあり、時代によって目安が変化してきた経緯もあります。
例えば米国株式ではリスクプレミアムを5~7%と考えることが多いですが、2000年頃に起きたITバブル崩壊後は3%程度だという意見も出てきたようです。
真相は定かではないですが、ある一定期間における地合いの影響や投資家の心理的な部分も関係してくるのかなと思います。
ちなみに日本株式では米国よりリターンが少なく見積もられやすく長期的には3~5%程度と言われますが、リスクプレミアムが時代によって変化することをふまえれば、
- これからも恒久的に変化し続ける
- 人間の心理的な要素が絡む以上、正確な計算方法はない
- 株価変化によってリスクプレミアムは跳ね上がる
と考えられそうです。
とはいえ、株式の期待投資収益率はCAPM(資本資産価格モデル)というものである程度計算できると言われているので、興味のある方は算出してみて下さい。
リスクプレミアムで考えたい要素
リスクプレミアムを株式に求める上乗せリターンだとするならば、考えたい要素として
- 国や地域
- 時価総額
- 投資スタイル
があります。
例えば前述のように日本株と米国株では期待できるリターンが異なり、一般的には米国株の方が大きなリターンが期待できると言われていますよね。
この違いは国別株式市場の時価総額規模が異なるからこそ生まれていて、日本株の中でも大型株と小型株では全く値動きが違ってくるでしょう。
ちなみに、こういった時価総額によって生じる差をサイズリスクプレミアムと呼びます。
また、リスクプレミアムは株式へ長期投資した際に求める上乗せリターンだと思います。
過去の株価推移から推定する考えを持つ方もいて、こういった点からも長期的な目線のお話ではないでしょうか。
したがって何度も売り買いを繰り返すような投機スタイルにリスクプレミアムの概念を持ってくるのは少し違うのかもしれませんね。
長期目線で買うにしてもリスクフリーレート分も勝てなさそうなボロ株はダメでしょうし、いくら利回りや企業体質がしっかりしていても短期売買ではその良さを生かせないと思います。
また、リスクプレミアムには「銀行や債券発行体ごとのリスクに応じて上乗せされた金利分」という意味合いもあります。
債券には、
- 流動性
- デフォルト
- 期間
などの要素があって、貸し出してもお金が返ってこない可能性もあるわけです。
信用度合いが低いところには誰もお金を出したくないので買い手を集めるためにも金利を上乗せしなければならず、ここがリスクプレミアムと呼ばれる部分になります。
日米におけるリスクプレミアムの時系列変化
最後に、日米におけるリスクプレミアムの時系列変化を推計してくれた資料と概略を紹介しておきます。
2016年に出されたものであり、この結果はこれからも変化し続けるとは思いますがご参考下さい。
外部参照リンク:日本証券経済研究所|株式リスクプレミアムの時系列変動の推計
米国株の場合
- 1950~1960年代までは2~3%程度
- 1970~1990年半ば以降は5%程度
- 2013年には7%前後
- 1952~1982年は高度経済成長とインフレが関係していそう
- 1983~2013年はインフレ低下が関係(金利ピークを過ぎる)
- 特に1987年以降はブラックマンデー、ITバブル崩壊、サブプライム問題、リーマンショックなど繰り返し金融危機が起きた(金融緩和の原因)
日本株の場合
- 1952年には5%程度
- 1980年代には1%以下
- バブル崩壊によって上昇し5%程度になった
- 2003年には10%以上になるが、その後低下して6%程度
- 2008年の金融危機には20%以上に上昇し、2011年の震災では25%に到達
- アベノミクス以降は低下傾向
まとめ
いかがでしたか?今回は株式のリスクプレミアムについてまとめました。
リスクプレミアムとは投資家がリスクを取ることによって期待するリターンのことで、無リスクで得られるリターンに上乗せされているものです。
両者を足したものを割引率と呼び、PERと逆数の関係にあります。
この関係性を利用して時系列変化を調べたり、予想変動から株価水準を推定することもできるようです。
リスクプレミアムには地域や時価総額なども関係していますが、時代や投資家心理によって大きく変動する可能性があります。
日本株では3~5%程度、米国株では5~7%とされていますが将来的な目安は誰にもわかりません。
関連記事には
がありますのでご参考ください。それではまた!