個人投資家の多くはスイングトレードをやっていることと思います。この理由は本業の傍らで株の売買を楽しんでいる方が多いためですが、スイングトレードでうまくいっているという方は意外に少ないようです。
スイングトレードはメリットがありつつも難しい部分があり、おそらくそういったことを理解せずにリスクを取ってしまうとしっぺ返しをくらいやすいのでしょう。
そこでこの記事ではスイングトレードの
- メリットや難しい点
- スイング向きのテクニカル分析とコツ
- 目指すべき利益率
- おすすめの銘柄
などについて述べました。どちらかと言えば初心者さんに向けて書いた記事ですが、現状であまりうまくいっていないという方もぜひご参考いただければと思います。
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スイングトレードとは
最初にスイングトレードとはどういったものなのか説明します。スイングトレードというのは「日をまたいで株を保有しつつ利益を出す」という売買スタイルのことですね。
ここで重要なのはデイトレードのようにその日限りで売買を完結させないということです。この要素から後述するようなメリットや難しい点が生まれますし、ここをうまく活用することが醍醐味でもあります。
こういった点はあとで詳しく述べていきますが、その前に理解しておくべき内容からお伝えすると・・・
スイングトレードでは、例えば図の黒線のように株価が動いたときに「株価が上がる時期だけを見計らって買う」ということが重要です。
まずA期間を見てください。この期間は株価が下げ基調になっていますよね?ですからここで買ってはいけません。ここで買った場合は株価に上昇力がないので利益が出るどころか損失を生み出す可能性が高いので期待値は低いと判断してください。
次にB期間はどうでしょうか。この期間は株価が上昇基調なので買っても良い時期です。特に後半は今まで下げた分、大きく伸びているのでこの時期に買うとすぐ利益が出そうですよね。
最後にC期間はどうでしょうか。この時期は一定の価格帯で上下を繰り返していますので、下限のタイミングで買えばうまく利益が出そうですよね。だからここで買っても構いませんが、上限で下げ始めることを念頭に入れなくてはいけません。
スイングトレードはこのように勝てる時期だけ日をまたいで株を保有していくということが大前提の売買スタイルです。ここを理解しないと
- 値動き状況を加味せず闇雲に保有してしまう
- 買うに値しない株を一番悪い時期に保有してしまう
といったことが起きます。また、株価の動きを見る際に併せて確認しておきたいのは「なぜその株の値動きが強まっているのか」ということでしょう。好決算後から買われている株もあれば大きな材料を糧に上げている株もあるので、その銘柄に関する情報を集める中でぜひ把握しておいてください。
保有期間について
スイングトレードは日をまたいで株を保有しますが、保有期間に目安はあるのでしょうか。明確な決まりはありませんが、一般的には数日から数週間と認識する方が多いようです。ただ個人的には数か月程度まではギリギリ入ってくるのかなと感じていて、安定的な上昇力を見せている株であればそういった中期スイングトレードで利益率を伸ばしていく戦略も有効でしょう。
ちなみにスイングトレードが数週間までと認識されやすいのは資金回転率が落ちると考えられるためです。要するにスイングトレードを継続するその間は資金が拘束されているので、より高い利益が得られそうな株があった場合にもったいないという意味ですね。
しかし、私からすると「利益が伸びている銘柄をホールドできているなら何も問題はない」と感じます。というか違う銘柄に乗り換えた際にほぼ確実に利益が取れるのであれば良いのですが、そういった保証はどこにもないわけです。
スイングトレードでよくあるパターンに乗り換え先の値動きが振るわないというものがありまして、経験的には欲を見せるとろくなことがありません。ですから保有期間はあまり気にせず、
- 利益が伸びているうちはその銘柄に集中してホールド
- 満足いく利益が得られるか上昇力に陰りが見えたタイミングで手放す
という意識で良いでしょう。
意識すべきメリット
ではここからはスイングトレードのメリットについて述べていきます。まず言えることは「時間的な余裕」です。例えばデイトレの場合は瞬時の判断で売りと買いを行わないといけませんが、スイングトレードでは翌営業日が始まるまでの自由時間で
- 戦略を立てる
- 気になる部分を調査する
ということが可能で、こういった一呼吸置く時間を持てる点がメリットと言えます。この恩恵によって日中は忙しい兼業投資家でも十分に実践できる売買スタイルとなっていて、幅広いライフスタイルに対応できるでしょう。
2つ目のメリットは「資金を回転させやすい」ということです。この点に関してはデイトレードの方がより優れていますが、年単位で保有していくような長期投資よりは資金効率が良いですね。
例えば100万円ほどしかない少資金者が長期投資を行っていく場合、どうしても定期的に入金しながら雪だるまを転がしていく必要が出てきます。その点、スイングトレードであれば100万円を色々な銘柄に入れたり出したりすることで有効活用しやすいので資金効率を高めやすいです。
3つ目のメリットは「値幅が出しやすい」という点。デイトレードは日中のせいぜいほんの数時間というスパンでしか保有しませんが、スイングトレードはその何倍もの時間で保有しますよね。
保有期間が長いほど株価が動く範囲も広くしやすいので、株価の上昇にうまく乗れればそれだけ大きな値幅を生み出しやすいというわけです。仮に小型株の連続スト高を掴めれば短期的に2倍3倍になることもあるので、こういった点はデイトレードにはない強みでしょう。
最後のメリットは「テクニカル分析で対応しやすい」ということです。テクニカル分析はその性質上、どうしても数か月や数年後の値動きというものは読みづらいと思います。そのため長期保有目的の株を買う際に「テクニカル分析の結果として数年後に上がっていそうだから」とは言いづらいです。
長期保有する場合は業績や企業そのものが持つ将来への期待を鑑みて買う必要があり、テクニカル分析はあくまでその時の最適な買いタイミングを探っているだけにすぎません。
その点、スイングトレードは最初から短期目線で保有するのでテクニカル分析と相性が良いです。極端な話、今日買って明日上がってくれればそれで利益を取れるので一過性の値動きを読めればそれで充分でしょう。
難しい点と対応策
では次にスイングトレードのデメリットというか難しいと感じる点を述べていきます。まず言えることは「一過性の地合い悪化で損切りさせられやすい」ということです。例えば・・・
このように上昇トレンド中の株であっても、一過性に落ち込んだあとV字回復されると損切りさせられてしまうケースも多いですね。長期保有の場合は「数年後に上がっていれば問題ない」と一過性の値動きを無視できますが、こういった流れは特にテクニカル分析や材料で保有した場合に弱いケースでしょう。
短期売買の背景にはその時期を取り巻く地合いが色濃く反映されやすく、対応策としては地合いを気にする以外にありません。もしこういったケースを嫌うのであればマーケットが上下どちらに向かっているのかよくわからない時期は休むか保有銘柄数を減らす方が得策ですね。
2つ目の難しい点は「保有株の時価総額バランス」です。一般的に時価総額が小さい銘柄ほど大きな値幅を生み出しやすいですが、これは大きな下げも起こるということになります。
したがって時価総額が小さな銘柄ばかり狙っているとその値幅がデメリットになるケースも増えてきます。株価が上昇しやすい時期にスイングトレードをすることが大前提ではあるものの、時価総額が小さい銘柄は過熱感も出やすいと覚えておきましょう。
したがって対応策は
- 狙う時価総額帯を限定すること
- 重複して持てる小型株の数を限定すること
- 過熱感が出ている小型株に触らない
といったことが挙げられます。スイングトレードはこういった難しい点もありますが、ある程度は自分で調整することができる要素が多いです。
スイングトレード向きのテクニカル
では次にスイングトレード向きのテクニカル分析をご紹介します。私が初心者さんにおすすめするのはMACD(マックディー)と呼ばれるものです。MACDとは・・・
図の下段に表示している赤と緑の2本線のことです。簡単に言えば赤線が緑線を勢い良く下から上にクロスしたタイミングが買いポイントだと教えてくれています。また、MACDが上方向に順調に伸びていく状況は値動きが強まっていることを示していて、株価の方向感を視覚的に知ることも可能です。
初心者さんはまずこういったシンプルなテクニカル分析でスイングトレードを始めることがおすすめで、色々な銘柄でMACDの推移を観察する所がスタートラインになります。MACDに関してはこのブログでも詳しく解説していて、ページ上部のテクニカル分析カテゴリーの中にまとめてあるのでぜひご参考ください。
最大のコツ
スイングトレードをテクニカル分析で行う最大のコツは「再現性を持たせること」です。再現性という言葉にピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが、要するに
- 自分が狙う状況をひとつだけ決める
- 狙う状況で売買を繰り返すことができるかどうか
ということです。
同じ状況を再現性高く狙うためには「どういったテクニカル分析のどういった状況を想定しなければならないか」を考えます。再現性を持たせるためには自分の口で説明できるくらい狙う状況を限定した方が良いと考えていて、例えばMACDであれば
- 狙いたい状況は株価上昇に転じる時期である
- 大陽線など強い値動きが増え、上昇機運が高まっている時期が好ましい
- 強い値動きが出るとMACDが勢いよくクロスしやすいので、ローソク足の強さに加えてクロスの角度が急な状況を狙う
- そのままMACDが上昇し続ければ値動きが継続されていると判断してホールド
といった具合ですね。上記は簡単に書いてしまいましたが、実際はもっと状況を細かく想定して狙う状況を絞った方が良いでしょう。状況を絞れば売買機会は減ってしまいますが、逆に言えば無駄な売買をしなくなる利点もあります。また、要素が絞られる分だけダメな点も考えやすく深堀りしやすいですよ。
深堀りを続ければ自分がなんとなく狙っていた状況を手法に生まれ変わらせることだって夢ではないのでこれは大きなコツだと考えます。その他にもスイングトレードのコツはあるので、関連記事としてまとめておきますね。
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スイングトレードで勝てない人はどうするか
スイングトレードで勝てない人が持つ最大の特徴はやはり「一貫性や再現性がない」ということです。先ほど述べたように自分が狙う状況を考えていないので
- 買う場所も売る場所も定まらない
- 判断が曖昧で利食いも損切りもバラバラ
となりやすいですね。
また、勝てない人が持つその他の原因として「時間軸や銘柄数が売買手法に合っていない」ということもありそうです。まずは自分が大きな波を取りたいのか小さな波を取りたいのか考えてください。一般的には波が小さいほどたくさん売買しないとまとまった利益は得られませんが、大きな波をひとつ取れれば銘柄数は少なくても増えていきます。
どちらが合っているかはあなたの性格に大きく依存するのでここはご自身で考える必要がありますが、最も大きな要素としては自分が短気かどうかです。短気な性格だと数週間や数か月といった期間は持っていられないでしょうが、物事をじっくり楽しめる性格なら保有期間を少し長めに取りながら利益をじっくり伸ばす方が合っているかもしれませんね。
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スイングトレードで目指す利益率
では次にスイングトレードで目指す利益率について述べます。結論としては
- 最初は3~5%を目指す
- そこから10%まで伸ばしたい
- 可能なら20%以上
と段階的に利益率を区分した方が良いでしょう。
もちろん狙えるのであればなるべく高い利益率を狙った方が良いのですが、10%以上の利益率を短期間で狙う場合は
- それなりに値幅がある銘柄を活用する
- 材料発生時など値動きが活性化された時期を狙う
- 保有期間を伸ばしていく
といったことを実践しないと難しいことも多いです。しかし、例えば材料に飛びついて買った場合はザラ場や翌営業日に下げて損失を被ることもあるでしょう。また、値幅が大きな銘柄を狙って失敗するということも当然あります。
高い利益率を狙うための要素というのは上記のように非常にシンプルですが、いずれにせよ再現性高く取れる手法でないと意味がないということです。したがって、まずは数%で良いから手堅く取れる方法論を見つける方がベターだと思います。
というか数%を手堅く取れる方法論がひとつあるだけで確実に資産は増えていきますから、無理に大きな利益率を狙うよりそこに尽力するべきかもしれません。また、例えば暴落買いのように高い確率で大きな利益率を取れる方法はあるのですが・・・問題はその頻度です。
暴落は年に数回しかないのでその1回1回に大きく入れる必要がありますし、値幅を出すために大きなポジションを持ち続ける必要もあります。要は利益率だけが正義ではなく自分が理想とする
- 頻度
- 再現性
- 勝率
- 保有期間
を叩き出せるかがキモです。仮に数%の利益率を高い確率で取れる手法ができればそれをじっくりと5%の手法、10%の手法に改良していけばなお良いでしょう。
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スイングトレード向きおすすめ5銘柄
では最後にスイングトレード向きのおすすめ5銘柄とその理由を紹介します。
1570 NF日経レバETF
1銘柄目は日経平均の動きに連動しつつ2倍の値幅となる1570日経レバETFです。用途としては日経平均の動きを読みつつ取れそうなところでピンポイントに買っていくというものですね。例えば2020年はコロナショック後に日経平均が歴史的な強さを見せてくれましたが・・・
そういった時期に日経レバETFを買うことで上記のような上昇トレンドに乗ることが可能です。ETFの良さは通常なら売買できない株価指数をこういった具合に間接的に保有できること。地合いが強いと感じた場合は迷うことなく日経レバETFのような銘柄を活用してスイングトレードを行えば地合いに乗り遅れたという気持ちにはならないでしょう。
また、日経レバETFの良さは株価1万5000円前後で1株から購入できる点ですね。このレベルであれば資金が少ない初心者さんでもスイングトレードの練習として活用しやすく、最適なポジションサイズにもしやすいと考えます。
指数の売買は長期的な目線だと色々な要素が絡んできますが、1週間程度のスイングトレードであれば値動きベースで考えやすいですね。テクニカル分析も十分通用するので少額から試していきたいという方は活用してみてください。
4751 サイバーエージェント
2銘柄目はアベマTVやスマホゲームなどで有名なサイバーエージェントです。元々はネット広告業がメイン事業でしたが、今ではゲーム関連事業の方が売上高が大きくなりました。時価総額は1兆円を超すほど大きいですが・・・
そこそこの値幅や押し目を持っていてスイングトレードにおすすめの銘柄ですね。最近ではウマ娘というタイトルが爆発的なヒットとなっていて、これが業績や株価を動かす原動力のひとつとなっています。個別株を触るうえでこういったカタリストと呼ばれる要素は重要であり、そういった意味でもスイングトレードにおすすめの銘柄です。
個人的にはアベマTVの赤字が消えればもっと面白い銘柄になるのになと考えていて、そういった角度で見れば中長期でも楽しめる銘柄と言えます。
2379 ディップ
3銘柄目は求人情報誌バイトルでおなじみのディップです。時価総額は1500億から2000億円前後と中型部類で、株価は1500円から3500円前後になっています。求人情報誌ということもあり新型コロナではそれなりの打撃を受けた会社ですが、ではなぜスイングトレードにおすすめなのか。これは直近の株価推移を見てもらえばわかります。
ポイントは「ボックス推移をしやすい」という点で、これは言い換えると安値で拾う戦略が底堅いということです。
ボックス推移している理由は定かではありませんが、もしかすると投資家側も求人関連会社であるディップを買って良いのか悩んでいるのかもしれません。だとすれば将来の業績が見えてこないうちはこういった特性が続く可能性は高く、それまでは「ボックスの確認⇒安値拾い」というスイングトレード手順で利益が取れるでしょう。
また、元々は増益維持できるような実力を持っているので過去の値動きを振り返ると安定上昇時期もあります。業績への不安が払しょくされ始めれば上方向に行ってもおかしくはないので、こちらも中長期的に楽しめる銘柄です。
5713 住友鉱山
4銘柄目は非鉄金属関連でおなじみの住友鉱山です。こちらはあまり聞き慣れない方も多そうですが、ある先物価格と連動しやすいことで有名となっています。それは銅の先物価格で・・・
図のように住友鉱山(上)とCopper先物はかなり連動しています。特筆すべきは銅価格が動いたあとに住友鉱山が追随するケースがあるという点です。そういったケースでは後追い的に住友鉱山でスイングトレードすれば利益が得られます。
昨今では再生可能エネルギー関連の需要で銅価格が高騰したことも話題にもなっていましたし、非鉄金属関連は今後もスイングトレード対象としておすすめの銘柄です。
4985 アース製薬
スイングトレードにおすすめな最後の銘柄はアース製薬です。こちらは殺虫剤で有名な企業ですが、選定理由は少し今までと毛色が違います。どう違うかというと「特定の月に買って特定の月に売ると利益が出やすい」という特性を理由に選定している点が特徴です。
一応、月足を載せておきますがアース製薬の過去11年分(2011年から2021年)を振り返ると「2月終値より3月終値が高い」という確率はなんと100%でした。つまり2月が終わる時に買って3月が終わる時に売れば利益が出る可能性がとても高いということが言えるので、期間限定ではあるものの1か月スパンのスイングトレードに最適な銘柄と言えます。
アース製薬の値動きには「投資家が夏の殺虫剤需要に先回りしている」という季節要因が関係していそうですが、実はこういった銘柄は探せば他にもあるんですよね。そういった銘柄を探してリストアップしておけばこれもひとつの手法となるわけで、この重要性を述べたくてアース製薬をスイングトレードにおすすめの銘柄としてご紹介しました。
スイングトレードはこういった観点からも考察できますので皆さんもぜひ探してみてください。
まとめ
今回はスイングトレードについて色々と解説してみました。このスタイルは多くの方が実践しているものですが、勝っている人は例外なく自分が狙うべき状況を理解しています。
方法はテクニカル分析でもなんでも良いのですが、重要なことは再現性高く売買できるかどうかです。利益率数%でも再現性と勝率が高ければそれで充分ですので、良い方法に巡り合えるまで試行錯誤してみましょう。ひとつでも見つければあとはコツコツと積み重ねるだけで資産は増えますので、まずはじっくり狙うべき状況を考えてみてはいかがでしょうか。
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