株式投資には「売り枯れた」という表現があります。「売り枯れ」とか「売り枯れ相場」とか呼ぶこともありますね。
売り枯れ相場とは「売りが枯れて急騰する準備が整った」という意味です。これだけ聞くと「え!?それって儲けられそうな響き!」なんて思いますが、なかなかどうしてそんな生易しいものではありません。
この記事では
- 売り枯れ相場やチャートの解説
- 売り枯れ相場と出来高の関係性
- 売り枯れ相場で見られる?板の状況
- 売り枯れと浮動株の関係
などについてお話します。言っておきますがこれが正解かはわかりません。
ただ、実際にこういった値動きや相場が繰り広げられたという事実はあります。そして今後も同じような兆候が見られるチャートは出てくるのだろうとは思います・・・が参考程度に読んでください。
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売り枯れ相場とは
まずは売り枯れ相場について簡単にお伝えしておきます。売り枯れとは
- 上昇要素のある銘柄の株が買い占められること
- 買い占めは機関投資家など大資金を持つ存在が行う(本尊とも言う)
- 売り枯れが完了すると急騰が始まる(暴騰の前兆側面)
- 長い期間をかけてじっくり行われることが多く、誰にも急騰時期はわからない
といった特徴があります。
要は株が買い占められて、もうこれ以上は売る人がいないよーという状況が作り出されるわけです。株式会社が発行する株式には「浮動株」という名目の株があります。
浮動株とは市場に出回っている株式のことで、「売り枯れ=浮動株の買い占め」と考えて良いでしょう。市場に出回っていた株が買い占められ、強制的に売り需要がなくなれば向かう先は暴騰です。
ちなみに、逆に言えば浮動株の買い占めは「買い需要の制限」でもありますよね。株式売買は売り注文と買い注文がぶつからないと約定できないわけですから、必然的に出来高が減るわけです。売り枯れ相場とはじっくりと時間をかけて行う「ふるい落とし」のようなものなのかもしれません。
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売り枯れチャートでは出来高が激減する
では実際に売り枯れ相場となっていたであろうチャートを見てみましょう。こちらをご覧ください。
このチャートは左側で急騰を見せていますが、右側に行くにつれて急落して出来高がしぼんでいます。MAX時の出来高は60万株や80万株を記録していましたが、最後の方は1万株程度まで激減しました。
ただし、
- 株価は急騰開始時の水準で止まっていて、一定の株価よりは下がらない状態
- 急騰時の合計出来高がまだ出きっていない?
とも言えますね。
もしかしたらこの株価位置で誰かが買い集めているのかもしれませんが、同じように急騰を待っている人もいるのかもしれません。ではもう少し先まで見てみましょう。
最初に確認した株価位置を割り込まずに、ずーーーーーっと株価は横ばい推移を続けています。しかし、注目すべきは右側の出来高はどんどんどんどん減っていて、相対的に最高値も下がってきていますよね。
ところどころぴょこっと出来高が盛り上がっていますが、この銘柄に対する市場の関心はだいぶ減っているように思いませんか?
それもそのはずで、実はあの急騰から1年経過しています。誰もが「そんなこともあったよね」というほどに期間が空いて、まさに買いも売りも枯れている状況です。
でも、所々に出来高が盛り上がっているということは・・・?
誰かが買い集めているのかもしれないわけです。では続きを見てみましょう。
どうですか?一番最初に見た急騰は、チャート左側のちょっとした上昇部分です。そこから1年以上かけて買い集められ、やがて暴騰していますね。
出来高も1万株程度しかなかったのに、数百万まで跳ね上がりました。あの売り枯れの最中に買っていた誰かが、最大出来高を記録している部分で浮動株を市場に放出し始めたのでしょうか?
真相は定かではありませんが、売り枯れ相場全体として
- 出来高推移や株価水準が一定になることによって売り枯れを感じ取る
- 出来高の増減によって買い集めを感じ取る
といったことは言えると思います。
出来高以外の売り枯れを示唆するものとは
売り枯れチャートを見てもらいましたが、ここで質問です。この売り枯れ期間の間に、一度も市場の暴落がなかったと思いますか?
そんなことはあまり考えづらいですよね。通常であれば、指数が暴落もしくは急騰すれば個別銘柄にも影響があります。それなのに先ほどの例ではそういった目立った値動きはなく、株価も一定水準を保っていました。
実はこういった「指数に関係なく株価を一定に保てる」という要素も売り枯れを示唆すると思います。指数暴落で個別株が影響を受けるのは、地合い悪化を懸念して売る人がいるからです。
そういった方がいなければ、個別チャートに影響は出ないでしょう。したがって売り枯れチャートでは日々少しずつ出てくるわずかな売りを継続的に買い集める流れにあるのかな?と思います。
売り枯れ相場では板に浮動株の激減が表れる?
見づらくて申し訳ありませんが、先ほどの暴騰中には何度もストップ高になっています。これは浮動株を買い占められていることによって生じやすくなる現象でしょうね。
ザラ場でストップ高になるのは板の買い需要が最大限に高まる状況です。板に売りが無くて、買い注文ばかり出てくるから特別買い気配が継続されるわけですよね。
このことを考えると、売り枯れ相場では板が極端に薄くなる現象が起きてもおかしくないでしょう。継続的に監視している銘柄であれば、そういった板の変化に気づきやすいので
- 日足から怪しい銘柄を見つけたら継続監視
- 怪しい銘柄は板の雰囲気だけでも掴んでおく
ということは大事です。
ちなみに浮動株を買い集められるかは時価総額にもよるところがあるでしょうね。例えば国内の個人投資家が抱えているトヨタ自動車の株式を全部買い集めようとしても、発行済み株式が多すぎて浮動株を買い集めることが難しいからです。
一般には売り枯れ相場になるほど買い集めができるのは時価総額が少ない新興株のケースだと思います。東証一部上場には株主数が一定以上いることなども条件づけられているので、そういったハード面からも言えそうですね。
売り枯れ中にストップ高が出るのはなぜ?
ところで、売り枯れ中にぴょこっと出来高が盛り上がるのはなぜでしょうか?買い集めるならずーっと安値を保てばいいはずです。
その理由として考えられるのは
- 銘柄への関心を適度に保つ
- 上げ下げの緩急を入れることで売りを絞り出す
といった効果があるからだと思います。
定期的に値上がり率ランキングに顔を出したり、やっぱり急落したり・・・と繰り返すことで買い集めを促進させているのではないでしょうか。
売り枯れ相場は誰にでも活用できるのか
ここまでのお話で
- 売り枯れは出来高や株価水準で見破れる!
- 簡単そうだから自分も売り枯れチャートを見つけよう!
と考えた人に聞きたいのですが、あなたは1年以上も株を保有しておけますか?
もしくは1年以上継続して監視を続けられますか?
おそらくこれらができるかはその人の性格によるところが大きいと思います。売り枯れ中とは言え定期的に揺さぶりはありますし、安値で拾っていても途中のストップ高で売りたくなりませんか?
売り枯れ相場はからくりがわかれば簡単そうですが、かなり根気のいる相場です。
- いつ暴騰してくれるかもわからない
- 買い集めが失敗して売り叩かれるかもわからない
そういった状況でずーっと持ち続ける必要がありますよね。
そのため誰もが簡単に参加できる相場ではありますが、難易度は高いチャートなのかもしれません。また、見向きもされないということは業績などファンダ面が弱い状況であることも多いです。
上昇要素を持っていることを知るのは本尊のみかもしれませんね。そういったボロ株に見える銘柄を持ち続けるのは難しいことでしょう。
もし売り枯れを疑って保有するのであれば、
- 現物で保有すること
- 余裕資金で適度に買うこと
が必要です。
パターン分析の中で出来高減少を考える
売り枯れ相場というわけではありませんが、カップウィズハンドルなど代表的なパターン分析の中で類似した兆候が出るケースもあります。こちらは比較的短いスパンでのお話なので、多くの方が取っかかりやすいケースではないでしょうか。例としては・・・
こんな感じですね。連続ストップ高のあとに、赤線で描いたようなカップ形状が2回発生しただけでなく、
- 出来高が激減
- ローソク足縮小
が安値付近で生じています。ちなみに中期移動平均線がサポートとして作用していそうで、エントリーの目安とできそうです。こういったケースは広義の売り枯れと呼べそうな状況で、以前書いた押し目の基本形に類似した考え方でしょう。
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強い上昇力を持った銘柄に売り枯れ兆候を感じ取ったら、勇気を出してエントリーしてみることも1つの手ですね。ただし、ひとつだけ問題があって「損切り設定がしづらい」といったことは否めません。
この例では長期線が近いので長期線割れを目安にもできそうですが、毎回別の目安があるとも限らないわけです。あらかじめ損切設定を明確に考えておく必要があるので注意が必要ですね。
まとめ
いかがでしたか?今回は売り枯れ相場をチャートで見てみました。売り枯れは出来高や株価推移で判断ができますが、長期的な相場となるケースも多いです。実際に保有してみるとわかりますが、それはそれは孤独な闘いで気が滅入ります。
その人の性格にもよりますので、長期的な対応が難しければパターン分析の中で広義の売り枯れに注目してみましょう。
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がありますのでご参考ください。それではまた!