どうも、ひげづら(@higedura24)です。
信用取引をやり始めた株初心者さんは「逆日歩(ぎゃくひぶ)」という言葉を聞き始めるでしょう。
これは空売りに関係する用語ですが、信用取引の状況をなんとなくでも把握することに役立ちます。
この記事では
- 逆日歩とは
- 品貸料や特別空売り料との違い
- 現物取引に関係あるものか
- 逆日歩の計算方法と税金について
- 発生条件はどんなものか
- 発生の予想はできるのか
- 実際に発生している銘柄の調べ方
- 逆日歩の関係する株の格言
などについてお話しました。
逆日歩についての基本知識を知りたい方はぜひご参考下さい。
逆日歩の意味とは
逆日歩とは信用取引における売り方(空売りをしている人達)が負担するコストのことです。
これは通常の
- 売買手数料
- 貸株料(信用金利)
とは別枠で取られるコストとなっていますが、どの銘柄でも付与されるわけではありません。
逆日歩の意味合いは
- 証券会社が空売りしたい投資家に株を貸したいが、株が不足して困っている
- 不足した株を調達するためのコストを追加で払ってくれ
といったものだからです。
発生の仕組みをわかりやすく知りたい
逆日歩が発生する仕組みをわかりやすく説明します。
例えばある銘柄Aの信用取引が何かしらの原因で活発化したとしましょう。
空売りしたい人が格段に増えたことで、証券会社が本来貸せる範囲の株数を大幅に超えてしまいそうです。
そこで証券会社はどこかから新たな空売り用の株を調達したいわけですね。
その調達先となるのが日本証券金融会社です。
しかし、その証券金融会社もいつも株のストックがあるわけではないので機関投資家にお金を払って株を調達します。
こうして出来上がった関係図が・・・
このようなものです。
調達された株は信用売り方に渡されますが、売り方は調達にかかったコストを負担する仕組みになっています。
この時に支払うお金が逆日歩で、この逆日歩は信用買いをしている投資家に支払われることがポイントです。
信用買い方は逆日歩の分だけ利益を得られますが、そもそも銘柄Aは信用売りが殺到する銘柄ですよね。
ケースバイケースですが、これは売り手が多いという状況なので差損が生じる可能性もあるでしょう。
したがって、逆日歩を受け取るためだけに信用買いをするという考え方は難しいと思います。
品貸料および特別空売り料との違い
逆日歩関連する用語に
- 品貸料
- 特別空売り料
の2つがあります。
品貸料とは先ほどの図で言うと、「証券金融が機関投資家から株を調達する際のコスト」のことです。
逆日歩が証券会社と個人投資家のやりとりなのに対し、品貸料では当事者が違いますね。
しかし、逆日歩は「品貸料を負担する」という意味合いなので同じような意味合いで用いられていることもあるでしょう。
特別空売り料は「返済期限が1日に定められた信用売りに対する特別コスト」です。
簡単に言えば逆日歩の1日信用バーションという感じでしょうか。
こちらも全銘柄に付与されるわけではなく、証券会社の判断で特定銘柄に付与されます。
ちなみに「特別空売り料」という名称は楽天証券特有のものです。
一日信用サービスを提供している証券会社は他にSBI証券や松井証券がありますが、
- SBI証券:ハイパー空売り料
- 松井証券:プレミアム空売り料
とそれぞれのサービス名にちなんだ名称となっています。
現物取引は関係あるか
逆日歩は信用取引のお話なので現物取引をメインに行っている人には直接的に関係ありません。
ただし、その銘柄がどのような状況に置かれているかを把握するためには特別空売り料や逆日歩の状況を知っておいた方が良いでしょう。
信用取引が活発化していることも予想できますし、そこから信用倍率などもチェックしてみてはいかがでしょうか。
制度信用売りと一般信用売りの違い
ところで、信用売りには
- 制度信用
- 一般信用
の2種類がありますが、どちらも逆日歩の対象になるのでしょうか。
結論的には逆日歩は制度信用売りのみ対象になります。
例えば株主優待目的で現物と一般信用売りの両方を保有するクロス取引をしていた場合、これは逆日歩の心配はありません。
しかし、一般信用売りが売り切れていて制度信用売りをしていた場合には逆日歩リスクが発生します。
人気の優待銘柄ではこういった背景から一般信用売りの取り合いになりますので覚えておきましょう。
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逆日歩の計算方法と日数の注意点について
では逆日歩の具体的な計算方法について説明します。
具体的な計算式としては
- 1日あたりの逆日歩料(円)=1株あたり逆日歩料 × 売買株数
- 支払い金額(円)=1日あたり逆日歩料 × 受渡日ベースの日数
です。
順を追って説明すると、まず逆日歩の大きさが決定するためにはそもそも「証券金融が機関投資家から株を調達した際の品貸料」によります。
そこを基準に証券金融と証券会社の間で入札額が決定し、それをもとに逆日歩の大きさが決まります。
逆日歩は
- 1株あたり何銭(何円)
- 1日あたり何銭(何円)
で計算され、売買株数などによって上限値が定められています。
ちなみにこの上限値は日証金にて早見表が作成されていて・・・
外部参照リンク:日証金|最高料率早見表
このような感じです。
例えば、売買単位100株の30万円なら最高料率6.2円の3100円が最大逆日歩になりますね。
最高料率までいくと1日でも結構な逆日歩を支払うことになりそうですね。
逆日歩の計算式で注意してもらいたいのは、日数は受渡日ベースになっているということです。
例えば、2月1日水曜日に空売りを約定させて2月2日木曜日に決済したとしましょう。
2020年2月時点での株の受け渡し日数は2営業日ですから、実質的な受け渡しは2月3日金曜日になります。
同様に決済日は2月4日土曜日・・・と考えたいところですが、受け渡しは営業日でなければなりません。
したがって、週明けの2月6日月曜日に決済処理という流れです。
この時の保有日数は土日祝日も加算されるので、「金曜 ⇒ 土日月」の合計3日間となります。
逆日歩が最高料率に近いほどこれは損益状況に大きく影響しますので、逆日歩銘柄の安易な空売りは危険です。
逆日歩の計算には
- 何曜日に約定して何曜日に決済したのか
- その間に土日祝日があるか
といった点を考えなくてはなりません。
証券アプリ上の操作では水木しか保有していなくても、受渡日ベースだと3日間まで伸びてしまうので気をつけましょう。
また、ゴールデンウィークやお正月休みなど長期連休となる時期は特に注意が必要ですね。
当日決済でも発生するのか
ここで気になるのは逆日歩銘柄を当日決済した場合にも支払い責任が生じるのかということです。
例えば約定した時点の週末に3連休が控えていたと気づいた場合、やっぱり空売りはやめとこうかなと思うかもしれません。
結論的には、「当日約定の当日決済」の場合だと逆日歩は発生しませんのでご安心下さい。
例えば楽天証券の公式ホームページには・・・
外部参照リンク:楽天証券|逆日歩の計算方法
このような図式が載っています。当日決済では支払いなしとなっているので、逆日歩は発生していないです。
ただし、一日信用売りで特別空売り料が発生している場合には追加コストが必要なので、逆日歩とは別問題となります。
逆日歩を経費として税金控除の対象となるか
一般的に事業を営んでいる人は色々な費用を経費として計上し、なるべく節税できるように努めています。
株の場合、売買を事業として行うのは専業投資家と呼ばれる方達です。
ただ会社をやめて株をやっていますでは事業として認められないでしょうが、もし大きな利益を安定して得られているのであれば事業と認められるでしょう。
そういった場合であれば、売買手数料や逆日歩などのコストは経費として認められるようです。
もし専業投資家を夢見ている方がいたら覚えておいてはいかがでしょうか。
逆日歩の発生条件および満額・零銭とは
証券金融会社はその日の営業日が終わった夕方の時点で
- 信用買い
- 信用売り
の枚数を銘柄ごとに比較しています。
その時に信用売りの枚数が勝っていれば「株不足」という状態です。
これが逆日歩発生の第一段階で、そこから証券会社は
- 融資の追加申し込み:信用買いを増やす
- 貸株の返済申し込み:信用売りを減らす
- 機関投資家に入札受付を行う
という措置を翌営業日10時までに行い、株不足の「解消」と「補填」に注力するわけですね。
例えば証券会社側の措置で株不足が解消されれば「満額」と呼ばれる状態になり、この場合は逆日歩も回避されます。
同様に機関投資家への入札結果が0銭となった場合にも、無料貸し出しなので「零銭」と呼ばれる状況で逆日歩回避です。
逆日歩が発生するのは
- 証券会社の調整措置でも株不足が解消されず
- 機関投資家の入札結果が無料ではなかった
というケースですね。これが逆日歩発生条件となります。
入札が安いものから株が調達され、株不足が解消された時点の品貸料で逆日歩が算出される流れです。
発生予想はできるのか
ではこの発生条件を考えた時、逆日歩の予想はできるのでしょうか?
おそらくそれは難しいと思います。
いつ株不足が解消されるかは把握しようがないですし、入札も翌営業日なのでいつ発生するかは雰囲気としか言い様がありません。
発行済み株式数が少ない銘柄であまりに上方乖離した銘柄では逆張り売りを浴びる可能性があるので、そういった銘柄に気をつける程度なのかもしれませんね。
ただし、直近の需給状況だけ把握するのであれば「日証金残高」を見ることで確認できます。
日証金残高とは「日本証券金融会社と証券会社の間で貸株や融資をした場合の残高」のことです。
融資は信用買いで貸株は信用売りなので、要は売り買いのバランスを見ているわけですね。
例えば日証金残高は
- 19~21時頃:速報
- 翌11時~夕方頃:確定
が発表されますので、ここであまりにも貸株残高が多い場合は逆日歩リスクが高いと考えられます。
ちなみに日証金残は
- 外部参照リンク:日本証券金融会社|貸借取引情報
にて銘柄ごとの直近5日分の推移を確認可能です。
逆日歩リスクが高い例としては、人気優待銘柄がありますね。
権利確定日では「いつも逆日歩発生するから今回もそうだろうな」とは考えられるでしょう。
とは言え、発生を予想していた場合でも「逆日歩の実際の大きさ」まではわかりませんので「過去の実績から大体これくらいかな」と傾向を掴む程度ではあります。
逆日歩発表と金額はいつわかるか
ここで気になるのは逆日歩の事実がいつわかるのかですよね。
実際に
- 逆日歩が発生したかどうか
- どのくらいの金額だったか
がわかるのは取引の翌営業日12:00頃までに日本証券金融会社が発表したタイミングです。
株不足が取引日に発覚した翌日に入札が行われ、その集計結果から品貸料が決定するので当日ではなく翌営業日になります。
取引当日には逆日歩事実がわからないので注意しなくてはなりませんね。
逆日歩発生銘柄か確認する方法
逆日歩が発生している銘柄かどうかは個別銘柄ページの信用取り組み情報にてわかります。
例えば楽天証券であれば・・・
このように市況情報ページの中盤に記載されていますね。
保有株やリスト内の銘柄の逆日歩状況はここで把握可能です。
ちなみに、市場全体で逆日歩銘柄を探す場合は先ほどの日本証券金融会社の検索機能を使います。
検索機能には
- すべての銘柄
- 最高料率銘柄
- 制限措置銘柄
があるのでお好きな条件で検索して下さい。
「逆日歩に売りなし」と「逆日歩に買いなし」
逆日歩に関する格言には
- 逆日歩に売りなし
- 逆日歩に買いなし
の2つがあります。
一見すると真逆の意味合いですが、どちらも正しいことを言っているのかもしれません。
例えば「逆日歩に売りなし」の場合は
- 逆日歩という余計なコストがあると信用売りをしたいという人は減る
- 売り圧力が減って、売り方は苦しくなる
- 苦しくて投げ出せば決済買いが増える
と考えられそうですね。
逆に「逆日歩に買いなし」は
- 逆日歩が発生するほど売り方が多い状況で買いたくない
- 逆日歩が解消されても戻り売りされるかもしれない
- 需給が落ち着いた段階で買い向かいたい
と考えられそうです。
逆日歩が発生しているということは信用取り組みがすこぶる悪い可能性があるので、売りも買いも怖じ気づく状況なのかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?今回は逆日歩とはどういったものかをお話しました。
基本的な内容をまとめてみましたが、現物取引がメインの方もぜひご参考いただければと思います。
逆日歩は需給悪化の解消を市場に促す効果もあると思うので、適度に気にしておくことがおすすめです。
信用売りをすることが多い方は直接的なお話なので、しっかりと理解しておきましょう。
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